第124話 街を散策して休みを満喫
前回のあらすじ
ギルドマスターとお話し
ギルドマスターはグランドギルドマスターだった
何かあった時はギルドマスターの力を借りられることになった
冒険者ギルドを後にし、俺はこの後どうしようかなと考えながら歩いているとどこからともなく漂う良い匂いに誘われ露店の立ち並ぶ大通りにやって来た。
「どれもこれも、良い匂い。休みだし少しくらい羽目を外しても良いよな」
俺は誰が聞いているわけでもないのに声に出して自分にそう言い訳をし、良い匂いを漂わせる露店や謎な物を売っている露店を巡るために歩き出した。
「おっ良い匂い、おじさん1本下さい」
「はいよ、1本銅貨3枚だよ」
俺はポケットに手を突っ込みポケットの中で無限収納を開いて銅貨を3枚取り出し露店のおじさんに手渡した。
「丁度だな、毎度あり。アツアツだから気を付けて食えよ」
おじさんは俺から銅貨を受け取ってすぐに火にかけられていた串焼きを1本タレに浸けてからもう一度火にかけた後俺に差し出してきた。
俺はそれを受け取って焼けたタレの香ばしい匂いを堪能した後、軽くフーフーと冷ましてから一気にガブリとかぶりついた。
美味い! 肉自体はあっさりだけどこのドロッとした甘辛いタレがいいアクセントになって美味い!
「そんなふうに褒められると照れるねぇ、ニィちゃんもう1本食うか? 今ならサービスするぜ」
どうやら俺は食べた感想を思いっきり口走っていたらしく、露店のおじさんにニヤけ面でそう言われてハッと気付き、俺は恥ずかしさ堪えながらそれを誤魔化す為におじさんの言葉に乗った。
「それじゃお言葉に甘えて、おじさん追加であと10本貰おうかな」
「おいおい、買ってくれるのは嬉しいが二ィちゃんそんなに持てるか?」
「大丈夫、この通りマジックバッグ持ちなんで」
俺はおじさんの言葉にポケットの中からただの袋を取り出し、それに手を突っ込んで無限収納を開き袋のサイズに見合わない皿を取り出して見せた。
「マジでマジックバッグかよ……。はぁよし分かった10本だったな、すぐに焼いてやる」
おじさんはそう言うと串焼きを一本ずつタレに浸け、サッと火を通して俺が取り出した皿の上に盛っていった。
「ほら、お待ちどう。銀貨3枚な、それと1本おまけだ」
そう言っておじさんは10本の串焼きが乗った皿の上にもう1本串焼きを乗せた。
「はい銀貨3枚。う~ん良い匂い、それじゃおじさんまた買いに来るよ」
俺は銀貨3枚を無限収納からポケット経由で取り出しおじさんに渡しながらそう言った後、皿の上の串焼きを1本口に銜えて残りの串焼きが乗った皿を袋に入れるふりをしながら無限収納に仕舞った。
「うん美味いな。……さてと美味しいモノも食べたし、ギルドマスターには会ってお礼を言えたし、後何か忘れてる事は……。おっ、あれは面白そう」
俺は串焼きを食べ終えこの後の予定を考えながらぶらぶら歩いていると面白そうな物に目が入りよく見るために近づいた。
「やぁいらっしゃい、どれも自慢の力作たちだから買っててよ」
露店主と思われる若い男は俺が商品を買っていってくれそうだと判断したのか自信満々に商品を手に取り声をかけてきた。
俺は商品を顔に近づけて来る店主から一歩下がって距離を取った。
だって自信満々に見せてくる賞品が手のひらサイズとはいえリアルに作り込まれたゾンビの土人形だったから。
ただ無視をするのもどうかと思い、愛想笑いを浮かべながら丁寧に作り込まれた商品を見て率直に感想を伝えることにした。
「あはは、確かにどれも造り込まれてますね」
「だよねだよね、でもなぜか売れないんだよ」
店主は俺の感想を聞き嬉しそうにしたのも束の間、そう言って落ち込んだ。
確かに売れないだろう。だってこの場にあるのがアンデット系の魔物や見た目の悪いゴブリンなど不人気ランキングのトップに居るような魔物のリアルな像ばかり。
わざわざこれを買うのはよっぽどの物好きか邪教徒くらいだろ。
俺は心の中でそう突っ込みをいれつつ落ち込んでいる店主に一つ提案をした。
「ここまでリアルな物を作れるならもっと他のウルフ系の魔物とかにした方が売れると思いますよ」
「いやぁそうしたいのはやまやまなんだけどやっぱり実物を見ないと作れなくて。でも僕ってそこまで強くないし、本業の土木ギルドも忙しいからなかなか実物を見に行けなくて。なんで近場で見れる魔物ばっかりなんだよね」
俺の提案を聞いた店主は頬を掻きながらそう言って、なぜ作らないのか教えてくれた。
「そうですか、ならこれは先行投資です。全種類買います、幾らですか?」
「買ってくれるのは嬉しいけど、一つ銅貨3枚だから全種類だと銀貨1枚だよ、良いのかい?」
「はい、買います」
俺はそう言って銀貨1枚をマジックバッグと偽っている袋から取り出して店主に渡した。
代金を受け取った店主はナイフを持ったゴブリン、棍棒を持ったゴブリン、錆びた剣を持ったゴブリン、錆びた剣を持つスケルトン、襲い掛かってくるゾンビの像を一体ずつ緩衝材の入った箱に入れて手渡してきた。
俺はそれをマジックバッグとして使っている袋を経由して無限収納に仕舞った。
「買ってくれてありがとう」
「いえいえ、こっちも良い買い物でした。新作楽しみにしてます」
俺はそう言って店を後にした。
その後も俺は匂いに釣られてあっちに行ったり、面白そうな物を見かけてこっちに行ったりを繰り返し気に入った物があれば購入して無限収納に仕舞い休日を満喫していた。
買い食いや冷やかしをして歩いている時ふと思い出した。そういえばスライクさんにちゃんとお礼言ってなかったかも、と。
「よし、次の目的地はスライムの館に決定、の前にあそこの甘い匂いの正体を」
俺は次の目的地を定め、いざ出発というところで漂って来た甘い匂いに釣られて出発早々に寄り道をしつつ、スライムの館に向かった。
余談だが甘い匂いの正体はベビーカステラみたいなふわふわホカホカの焼き菓子で、甘い物好きの姫姉の為に買い占める勢いで大量に買っておいた。