第121話 受付嬢のストーカーにストーカーされた
前回のあらすじ
昼食までの間に二度寝
昼食後に街に繰り出す
冒険者ギルドでギルドマスターに会いに行くも追い返される
はぁ、ギルドマスターにお礼を言いに来ただけなのに、また面倒な事になったな。
俺はそう思いながらさっきから俺の後を尾けてくる男二人の様子を窺った。
俺を尾行している男たちは俺が冒険者ギルドを出た時から尾いてきているが周りに人が多いためか、今のところ俺に絡んでくる様子は無いのでスキル透視盗撮を使って人が居なくて、袋小路になっていて、そこに辿り着くまでに一度は曲がる必要のある枝道を探してそこに向かった。
男たちがまだ尾いてきていることを確認してから俺は枝道に入って直ぐにある木箱の裏に隠れて闇魔法のハイディングを使った。
数十秒もしない内に男たちが枝道に入って来て木箱の裏に隠れている俺に気付かずにそのまま奥に進んでいき、俺はその二人の後を足音を立てない様に気を付けながら少し離れて追いかけた。
男たちはこの道をよく知っているようで特に慌てた様子も無く曲がり角に差し掛かるとそこで一度立ち止まり、前を歩いていた男が怒鳴りながら角を曲がった。
「おいDランク! さっきはよくも俺らのミダリーちゃんに絡んd、えっ、どこ消えやがった……。おいッ居るんだろ! 隠れてねぇで出て来い!」
威勢よく怒鳴りながら角を曲がって行った男は曲がった先に俺が居ないことに気付いて一瞬言葉が途切れたが俺が隠れていると思ったのか奥に向かってに怒鳴り散らし、その言葉を聞いてもう一人の男も驚いた様子で角を曲がって行き、先にいた男と一緒に怒鳴りだした。
「隠れてねぇで出て来い! 今出てきたら有り金全部と半殺しで許してやる!」
男たちが躍起になって怒鳴りながら辺りにある木箱などを乱雑に倒し奥まで進んでいったがそもそもそこに俺は居ないわけで……。奥まで行きどこにも俺が居ないと知ると男たちは俺にまんまと逃げられたと誤解し怒り心頭で来た道を引き返して来た。
「あの野郎どこに逃げやがった! 見つけたら殺してや……は?」
引き返してきた男たちは角を曲がったところでその先に道が続いてない、否あったはずの道が金属の壁で塞がれている事に驚きその場に立ちつくしていた。
勿論この壁は俺が無限収納からミスリルゴーレムの胴体を複数取り出しスキル形状変化で造ったもので、横幅は道一杯に、高さは大人三人分の高さにして倒れない様にこちら側に階段と支えも造った。
俺はその壁に造った階段を上り、壁の上から頭を出して立ちつくしている男二人に声をかけた。
「そんなところで何してるんですかストーカーさん?」
「お前は、おいッこの壁はなんだ! いつの間にこんなもん建てやがった! こんなもんぶっ壊して、ッ痛、クソッ、硬ぇ。オイッふざけんなッテメェ! 今すぐコイツを退かせ!」
俺が軽く煽ると男たちは壁を俺を見上げながら怒鳴り、壁を壊そうと壁を殴るがそんな事で壊れるはずもなく、男たちは壁を殴った拳をもう片方の手で押さえ俺に壁を退かすように命令してきた。
「それは出来ない相談だな、そもそもなんで俺を尾けて来たんだ? もしかしてあの受付嬢とグルになって他の冒険者から金品を脅し取ってるのか?」
俺は男たちの命令には従う気が無いと一蹴して、どうして俺を尾け回していたのかと受付嬢がグルなのかを訊ねた。
「ちっ違う、ミダリーちゃんは関係ねぇ! そもそもお前がミダリーちゃんに話しかけたお前が悪いんだ!」
「そうだ! まだ新人のミダリーちゃんに絡んだお前が悪いんだ! それに俺たちにこんなことして許されるとでも思っているのか! 俺たちがギルドに訴えればお前の言い分なんか誰も信じねぇぞ! 今なら全財産で許してやる、金出して今すぐにこの壁を消せ!」
男たちは受付嬢は関係ないと言いながら受付嬢に関わったからだと矛盾した事を言いだし、あまつさえ男たちは自分たちのほうが立場が上だと思っているのか俺を脅してきた。
「そうか言いたい事はそれだけか。なら仕方ない、後はあの受付嬢から無理矢理にでも聞き出すか」
「待ちやがれ! ふざけんなッテメェ、俺らのミダリーちゃんに何する気だ! ぶっ殺されてぇのか!」
「逃げんなザコ! こんな不意打ちなんて汚い事しか出来ねぇザコが! 今すぐそっちに行ってぶっ殺してやる!」
俺はこれ以上男たちと話していても意味がないと会話を打ち切って階段を下りて行くと、男たちはやっと自分たちがしでかした事で逆に受付嬢に迷惑をかけると理解はしたようだが、それでもまだ自分たちが上の立場だと勘違いしているのか俺を下に見た発言を繰り返した。
俺はそんな男たちの言葉を聞き流し大通りにでて、ある程度離れたところでさっきよりも広めの枝道に入ってからスキル透視盗撮で男たちの道を阻む壁を視認してスティールを使った。
スティールは一発で成功し目の前にデカい壁が現れると同時に無限収納に詰め込んで出来る限り人に見られない様に片付けた。
その後俺は血眼になって俺を探している男たちをスキル透視盗撮で眺めながら冒険者ギルドまで戻って来た。
俺は冒険者ギルドに入ってまず、俺がさっき話しかけた受付嬢のミダリーが居るかどうか辺りを見渡し、さっきと同じカウンターに彼女が居て暇そうにしているのを確認してから彼女に近づき話しかけた。
「少しいいかな?」
俺が近づきそう話しかけるとミダリーはもの凄く嫌そうな顔をして対応してきた。
「どうかされましたか? ギルドマスターには会えないと言ったはずですが?」
「あぁそれは別にいいんだ、それよりもさっき冒険者に絡まれて。その冒険者が言うにはどうもミダリーちゃんだっけ、君が関係しているみたいでね。それで手っ取り早く君が彼らに俺を襲うように命令したのか聞こうかと思って」
俺が再びギルドマスターに会いに来たと思っているミダリーの勘違いを正してから冒険者に絡まれた事を伝えるとミダリーは嫌そうな顔から変人を見るような目つきに変わり口を開いた。
「一体何を言っているのか解りません。私はそんな事してませんし、ここに居る冒険者さんたちがそんな事するはずありません。そのような嘘を言って業務の妨害を行うのでしたら衛兵を呼びますよ」
ミダリーは淡々とそう言って睨んできた。
「ははは、そうかここの冒険者はそんな事をしないか。まあいいか、衛兵を呼びたいなら呼んだらいい。ついでに俺の名前も出すと良い、色んな意味でやってくる衛兵が増えそうだ」
俺はそう言った後心の中で「王女様と交わした契約の内容を聞いている兵士や俺を良く思ってない兵士がね」とそう付け加えた。
「わかりました、では本当に呼ばせていただきます。本当にいいんですね? 今すぐここで謝れば呼ばないで上げても良いですけど」
俺の挑発を虚勢とでも思ったのかミダリーは温情のつもりか謝れば許すと言ったが俺はそれを無視して鼻で笑って返すと、彼女は本当に衛兵を呼ぶように冒険者ギルド内に居る者たちに声をかけ、それを聞いた数名の冒険者が衛兵を呼びに行った。
一触即発の状態のまま俺とミダリーが睨みあっていると冒険者ギルドの扉を壊さんばかりに荒々しく誰かが開け放ち怒鳴りながら入って来た。
「どこに行きやがったあの野郎ぉ……居た! 見つけたぞこの野郎、さっきはよくもコケにしてくれたなァ!」
「テメェまたミダリーちゃんに絡んでんのか! ぶっ殺してやる!」
俺は怒鳴り声を受け振り返り、入って来たのが俺をストーカーしていた二人の男かと理解したところで「ぶっ殺す」と言った男が俺に殴りかかってきた。
俺は見え見えのパンチを余裕をもって横に移動して躱し、躱しついでに勢いのついた男の背中を軽く押してやると物の見事に受付カウンターに男は突っ込んでいった。
「テメェ相棒に何しやがるッ! 許さねぇ許さねぇぞ! そっちがその気ならこっちだってやってやる! 後悔してももう遅ぇぞこのザコォ!」
仲間がカウンターに突っ込んで動かなくったのを見ていたもうひとりの男は頭に血が上っているのか顔を真っ赤にし、口角泡を飛ばしながら逆ギレをした後、腰の剣を抜き放ち切り掛かってきた。
俺はすぐさまスティールを発動しつつ、スティールが失敗した時のために無限収納からエンチャントマシマシの真銀の妖刀を片手で中段に構えたがその必要は無く、俺の左手には男のベルトが握られていて男はずり落ちたズボンに足を取られ素っ転んだ。
そのタイミングで再び冒険者ギルドの扉が乱暴に開かれ誰かが駆け込んで来た。