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第118話 取引成立

前回のあらすじ

王女様の謝罪を断る

取引を持ち掛ける

条件をすり合わせて取引へ

「皆様、お待ちしておりました。応接室までご案内します」

 俺たちが謁見の間を出ると扉の前で待っていたメルリアさんにそう声をかけられ、俺たちはメルリアさんの案内で応接室に通された。


 応接室に入るとメルリアさんに俺たちはソファに座るように促され着席し、メルリアさんはソファの前にあるテーブルの上に俺と田中さんの前にはコーヒーを、姫姉と少女の前には紅茶を置いて行った。

「それではしばらくの間こちらでお待ちください。もし何か御用がありましたらこちらのベルを鳴らしてください。すぐに私かメイドが参ります」

 俺たちの前に飲み物を配り終えたメルリアさんはそう言い残し部屋を後にし、俺たちは王女様が来るまでの間特に何をするでもなくただ待っていた。


 俺が十数分ほどその場でボーっとしていると不意に部屋の扉を叩く音がしてそちらに意識を向けると扉の向こうから声が掛けられた。

「ユーマ様方、アウリアです。入っても宜しいですか?」

 聞いたことのある声だとは思ったがアウリアという名前に覚えが無かった俺は姫姉に知っているか視線だけで訊ねた。だが姫姉にも覚えが無い様で首を横に振られ、とりあえず顔だけでもと思いスキル透視を使って扉の前にいる人物が誰か確認をした。

 扉の前に立っていたのは王女様とウォレンさん、それに案内役であろうメイドの三人だった。

 そこでやっと俺はアウリアが王女様の名前だと気付き、外で返事を待っている王女様たちに「どうぞ」と言って室内に入って来る許可を出した。


 俺が許可を出したことで傍に控えていたメイドが扉を開けて、王女様とウォレンさんが応接室に入って来た。王女様は俺たちの向か側にあるソファに腰掛け、ウォレンさんは王女様が座るソファの斜め後ろに立った。

「お待たせしました。早速ですが取引を始めたいと思います。こちらが先ほどお見せした契約書です」

 そう言って王女様は俺たちに内容が見える様に契約書をテーブルの上に置いたので、俺も無限収納アイテムボックスからガネトリーの不正の証拠書類の一部を取り出してテーブルの上に置いた。

「ユーマ様、これで全部ですか?」

 目ざとい王女様は俺が書類を一部しか出していないことに気付き、俺にそう問い掛けて来た。


「いいえ、全部は出してません。契約前に全部出してうばわれでもしたら事ですから……。勿論もちろん契約後には全て王女様に渡しますのでそこは安心してください」

 まぁ実際のところもし書類が奪われたり破壊されたりしても姫姉にスキル創造クリエイトで書類のコピーをつくって貰っているから問題は無いんだが。わざわざこちらの手の内をさらす必要はないので俺は王女様にそう言い訳をしておいた。


「分かりました、ではユーマ様方は契約書にサインをして下さい」

 王女様は俺の言い訳に少しむっとした表情になったが俺の言い分ももっともなわけで、特に言い返しては来ず取引を進めた。

 俺たちの目の前に置かれた契約書に俺は最後の確認として一応スキル鑑定を使ったが特に偽装された痕跡こんせきなどは無く真っ当な契約書だと出た。

 俺はその鑑定結果を見てひとまずは安心をして契約内容を読み、内容をおおよそ理解して契約書にサインした。

 田中さん達もサインをし終え契約書を王女様に渡し、契約書を受け取った王女様はその契約書全てにサインをしていった。


 全ての契約書にサインを終えた王女様は全種類の契約書から一枚ずつ契約書を抜き取り、俺たちの前に置いて口を開いた。

「契約書は完成しましたのでユーマ様、ガネトリーの不正の証拠を全て出して頂けますか?」

 王女様の要求に俺は「勿論」と答え、無限収納アイテムボックスから残りのガネトリーの不正の証拠書類を取り出してテーブルの上に置いた。

「これで全部です。疑うのであれば内容を確認して貰っても構いません」

 俺は王女様に何か言われる前に先手を取って疑うなら書類を自由に調べる様に嫌味を言った。


「分かりました、確認させて貰います」

 王女様は俺の言葉が嫌味だと気付いて少し表情をゆがませたが今回は感情的にはならずに書類を手に取り確認し始めた。

 王女様が書類の確認をしている間暇になった俺は今後の障害になりそうな貴族たちの動向を探るために王城内を透視して回った。


 王城内ではさっきの俺たちの謁見で顔を出していた貴族たちが数人ごとに集まって俺たちの態度が悪い、言葉遣いがなってない、下民の分際で生意気だ、などと俺たちを侮辱ぶじょくしていた。

 その中でも一際口悪く俺たちの事を罵っている集団が居た。

 しかもその集団は俺が謁見の間で殺気を送った時に俺の殺気に気付けなかった者たちだった。

 俺はこの集団は何かやらかしそうだなと感じ、一人ずつ鑑定をしていった。

 結果はお察しの通りで全員隠蔽術いんぺいじゅつ詐称術さしょうじゅつ改竄術かいざんじゅつなどモノを隠したり書類をいじったりするような不穏ふおんなスキルを所持しており、その他にも詐欺師や殺人鬼、強姦魔などおおよそ人には見せれないようなものから盆暗ぼんくら無能むのうなどの称号を持っている者ばかりだった。

 コイツ等とは一生関わり合いたくないなと思いながら他の貴族たちに目を向けたがさっきの連中ほどの悪人はこの場には居らず、称号も悪くて愚者ぐしゃ程度の可愛いものだった。


 そうやって俺が貴族たちのあら探しをしているとガネトリーの不正の証拠書類を一通り目を通したのか王女様が声をかけて来た。

「皆様、大変長らくお待たせしました。こちらが必要な書類は全て揃っているようなので取引成立という事でこちらをお持ちください」

 王女様のその言葉を聞き俺は目の前に置かれていた自分の契約書を手に取って無限収納アイテムボックスに放り込んだ。

 姫姉も俺と同じように無限収納アイテムボックスに自分の分と少女の分の契約書を仕舞い、田中さんは契約書を大事そうにポケットに仕舞い込んだ。


「取引は無事成立という事でユーマ様方はこれからどうされますか?」

「えーっととりあえず今日はもう何もしたくないので部屋に戻ります」

 王女様の問いに俺がそう答えると姫姉たちも俺の意見に賛同した。

「分かりましたではメルリアに部屋まで案内させます」

 俺の返答を聞き王女様がそう言うと応接室の扉をノックしてメルリアさんが入って来て俺たちに一礼した後、「お部屋までご案内します」とメルリアさんに言われた俺たちはメルリアさんの案内で部屋まで戻って来た。

 それから俺たちはそれぞれの部屋に戻り、俺は疲れていたので少しベッドに横になった。


「……て、……なさい、サッサと起きろ!」

 いつの間にか眠ってしまっていたのか俺は姫姉に叩き起こされた。

「寝てたのか。それで姫姉何の用?」

「夕食の時間、メルリアさんが声をかけても返事が無いって言うから起こしに来てあげたの」

「そっか、メルリアさんには悪い事したな。姫姉ありがとう」

 俺はそう言ってベッドから降りて欠伸を噛み殺しながら部屋を出ると、そこには先に待っていた田中さん達がいた。

「すいません、寝てました」

 俺は田中さん達に頭を下げて素直に寝落ちしていたと告げると田中さん達は気にしてないと言ってくれた。


 それから俺たちはメルリアさんに連れられ食堂まで移動し、食堂内には先に来ていたウィンダムさんやソリアさんにアリシアさんが座っていた。

 俺たちもいつもの席に着席すると直ぐに王女様とウォレンさんがやって来た。

 王女様が座ったタイミングで手際よく料理が配膳されていき、直ぐに食事が始まった。

 今日の夕食はサラダにビシソワーズ、白身魚の香草蒸こうそうむしとあっさりした物が多く昼食を食べていなかった俺には少し物足りないラインナップだった。

 俺が仕方なく近くにいたメイドにお代わりを頼むと王女様やソリアさんから驚かれた。

「朝食を食べてから何も口にしてなかったんでお腹が空いてまして」

 俺がそう言うとソリアさんは成程といった納得した表情を見せたが王女様は言葉の裏に隠れたガネトリーの捕縛や金庫破りに運び屋、その後のゴタゴタでせいだという真の意味を理解したのか苦い表情をした。

 俺は王女様のその反応を横目にメイドが運んできたお代わりの白身魚の香草蒸しをぺろりと平らげた。

 俺の料理が最後だったらしく皆は既に食事を終えており、俺が食べ終わったタイミングで王女様が食後の挨拶をした後逃げる様に食堂を出て行った。

 俺たちもそれぞれ部屋に戻り、俺は風呂で汗を流してからもう一度眠りについた。


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