表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/267

第116話 貴族の邪魔が入りまた一人捕まる

前回あらすじ

王城襲撃解決の褒賞をやっと王女様から貰う

俺たちがここに来た本当の理由を王女様に伝える

王女様は礼儀知らずな行動を取る

「王女様、これでもまだ礼儀知らずではないと言うつもり?」

 姫姉は王女様をにらみつけながらそう問うと王女様は少し考えるそぶりを見せ、その後なにか思い当たるふしがあるのかだんだん顔色が悪くなっていった。

「その様子だと思い当たる節があるみたいね」

 姫姉は王女様に追い打ちをかけるかのようにそう言って王女様の反応を見た。

 王女様は姫姉の言葉に怯えている様で反論できずにうつむいてしまった。


 王女様が俯いて黙ってしまってから少し経った頃、痺れを切らした姫姉が黙り込んでいる王女様に言葉を投げかけた。

「それでいつまでそうしてるつもり? そうしていればこっちが譲歩じょうほするとか考えてるなら当てが外れたわね。こっちは最低限の事をして欲しいと言っているのにそれすらまともに出来ない人と交渉するつもりはないから。それじゃ」

 姫姉はそれだけ言い残すと王女様に背を向け謁見の間を出ていこうと歩き出した。

 それを見た田中さん達も姫姉の後に続き、俺は一応ウォレンさんだけに分かる程度に会釈をして謁見の間を後にしようとした。


「待って! 待ってください!」

 最後尾を歩いていたら俺が謁見の間から出る寸前で王女様がそう言い、俺たちを引き留めた。

 王女様のその言葉を聞いて先頭を歩いていた姫姉が振り返り俺の横まで戻って来たところで王女様を睨みつけながら言葉を発した。

「まだ何か御用ですか王女様?」

「ひっ……、ふぅ、その先ほどは失礼、しました。私がユーマ様にお礼を言いそびれていたことは改めて謝罪します。ですからどうか、その……証拠の書類を渡しては頂けませんか?」

 王女様は姫姉の鋭い眼光に小さく悲鳴を上げながらもどうにか俺達に要求を伝えて来た。


 姫姉は王女様のその言葉を聞き少し考える素振りを見せながら顔を伏せ、側にいる俺にしか分からない様に悪い顔をした。

 俺はこの顔を知っている、碌でもない事を考えている時の悪巧みをしている時の顔だ。

 俺がそんな事を考えていると姫姉は顔を上げて王女様の要求に返答するため口を開けた。


「謝罪は優君が被害者なので優君に直接言って下さい。それと書類の件も優君と交渉して下さい。書類は今、優君の無限収納アイテムボックスに仕舞われているので。言い忘れてましたがその書類、いくらの値を付けるか楽しみです」

 姫姉は不敵に笑いながらそう言い残して俺の後ろに隠れた。そのタイミングで貴族たちが並んでいる列から俺たちを怒鳴りつける声があがった。


「もう我慢ならん! おい貴様ッ、聞いていればふざけたことを抜かしおって、この金の亡者が! たとえ勲章持ちだとしてもこの国で暮らしている以上貴様らは国民なのだ、国民は黙って我らの命令に従っていろ!」

「そうだそうだ、王女様から勲章を貰っておきながら王女様に逆らうなど不敬だ! 飼い犬の分際で飼い主に歯向かうな!」

 最初の貴族の言葉を皮切りに俺たちを侮辱ぶじょくする言葉が貴族たちから投げかけられ続けた。


 俺は投げかけられる言葉に苛立ちを感じ王女様を睨みつけたが、王女様も貴族たちの反応にオロオロとしていて頼れそうもなかった。

 それならばと俺の後ろに隠れているこの貴族たちの暴言の元凶とも呼べる姫姉の方を見たが、自分は知りませんとばかりにそっぽを向かれてしまった。

 こうなれば最後の手段と王女様の横に控えているウォレンさんに「助けて」と視線で思いを送った。

 俺と目が合ったはずのウォレンさんはしかし、しっかり見ていないと分からないくらいの小さな動作で首を横に振った。


 クソッ、こうなったらどうなろうが知るか、全員まとめて相手してやる。


 そう思い至った俺は俺たちが反論してこないのをいい事にまだののしりの言葉を投げ掛けてくる貴族たちに直接この苛立ちをぶつけ黙らせる為、草食動物なら逃げ出す、肉食動物なら警戒をする程度の殺気を貴族たちに放った。

 俺の殺気に真面まともに受け、貴族たちの反応は大まかに三つに分かれた。


 一つ目は俺の殺気に当てられ恐怖を感じ怯え、顔を青ざめさせながらその場で震えるいかにもな貴族然とした人たち。

 全体の半数以上はこの反応をしている。


 二つ目は俺の殺気に気付き、逆に殺気を俺に送り返してくる見るからに鍛えてそうな武門系と立ち振る舞いに威厳を感じさせる上級貴族と思しき人たち。

 この反応をしたのは並んでいる貴族たちの全体の四割くらいだった。


 そして残った三つ目は俺の放った殺気にすら気付かず、周りの者たちの変化にも気付けずに俺たちに向かって暴言を吐き続ける警戒力の欠如した者たち。

 この反応をしているのはわかりやすく、俺たちを罵り始め未だに口を閉じない数人だった。


 俺は未だに口を閉じない者たちを黙らせる為、王女様に頼むことにした。

「王女様、話し合いがしたいならそこのうるさいのをどうにかして貰えますか?」

「貴様ッ我々に向かって煩い奴とは何だ! 王女様、こんな奴の言葉に耳を貸す必要はありません! 今すぐにコイツらを殺すべきです!」

 俺の発言に俺たちを罵っていた貴族たちがすぐさま反応し、姫姉を金の亡者と最初に罵った貴族が王女様に俺たちを殺す様に進言してきやがった。


 俺はこの貴族の俺たちを殺す発言を宣戦布告と受け取り、仕掛けてくる前に先にこっちから仕掛けるかと思い、無限収納アイテムボックスから武器を取り出そうとした。

 だが俺が武器を手に取る前に王女様が立ち上がり口を開こうとした為、俺は王女様が何を言うのか聞く為に一旦動きを止めた。


「黙りなさい! あなた方のその発言がどれほど私に迷惑をかけているか……。分をわきまえなさい! 今すぐに彼らを殺すという事は彼の無限収納アイテムボックス内にある書類が全て取り出せなくなる、それすなわちガネトリー・ダイカーンの裁判に支障をきたすという事。それを分かっていての発言ですか?」

 王女様がそう言うとさっきまで威勢の良かった貴族達は皆口をつぐみ、最初に姫姉を金の亡者と罵り、俺たちを殺すべきと王女様に進言した貴族に他の俺たちを罵ってきた貴族たちの視線が集まった。

 周りの貴族たちに見つめられた貴族は顔を青ざめさせ視線を中空に漂わせながら震える唇を開いた。


「め、滅相めっそうもありません、我々はただこの無礼者に正しい罰を与えるべきだと進言しただけです! 決して王女様に迷惑をかけるつもりなど有りません! そ、そうです、いい案があります。コイツ等に殺されたく無ければ書類を渡す様に命じるのはどうでしょうか。そうすれば書類が手に入りガネトリー卿の裁判も行えます。是非、そうするべきです!」

 俺たちを殺すと発言した貴族はその殺す発言をあたかも貴族たちの総意かの様に言い、その後名案とばかりに殺されたく無ければ書類を渡せという馬鹿な提案をして王女様にそれを実行する様に迫った。

 

 俺はそんな馬鹿な提案をする貴族に今すぐにでも殺してやりたいと苛立ちが増し、俺が今の貴族の発言で怒り心頭だと王女様にも分かる様に殺気を放ちながら睨みつけた。

 俺に殺気を放たれ睨まれた王女様はビクッと肩を震わせ顔を青褪めさせた後すぐに馬鹿な提案をした貴族に視線を合わせて口を開いた。


「あ、貴方の発言と提案は迷惑です! 貴方はこれ以上口を開かないでください! それとこれから先、私に断りなく口を開いた者は誰であろうと処罰の対象とします!」

 王女様は貴族の提案にハッキリと拒否を示し、反論をする事すら禁じた。そして他の貴族たちにも勝手な行動をつつしむ様に釘を刺した。

 だが俺たちを殺す発言をした貴族はそれを不快に感じたのか顔を真っ赤にしながら愚かにも口を開いてしまった。

「待って下さい王女様ッ、なぜこの私が黙らないといけないのですか! 私よりもそこの無礼者に罰を与える方が先のはずだ!」

 俺たちを指差しながらそう言って王女様に訴えた。


「私は先に忠告しました。恨むなら自分の愚かさを恨んで下さい。騎士の皆さんは彼を捕らえて下さい」

 王女様は貴族の訴えには応えず、騎士に貴族を捕らえるように命じた。

 王女様の命令を受けて控えていた騎士たちが勝手に口を開いた貴族の元に駆け、周りにいた貴族たちは巻き込まれまいとその貴族から我先にと離れていった。

 貴族はここまで来てやっと自分が崖っぷちに立たされていると気づいたのか、顔を青褪めさせながら王女様に土下座の姿勢をとり謝罪の言葉を口にした。

「王女様、勝手に口を開いた事は私が間違っていました。謝罪します。ですからどうかここは穏便に済ませては頂けませんか? どうか、どうかこの通りです!」

 騎士に取り囲まれた貴族はまだ諦めていないのか、どうにか捕まらないように王女様に頭を下げ泣き付いた。


 王女様は苛立っている俺の方をチラッと見た後、泣き付いてくる貴族に向かって言葉を発した。

「決定は覆りません。彼を捕らえて下さい」

 王女様は騎士にそう命じ、騎士たちは王女様の命令に従い貴族を身動きが取れないように縛り上げた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ