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第112話 また使用人と勘違いされる俺

前回のあらすじ

金庫破りをする

王女様がガネトリーに絡まれる

俺が下男に間違われる

「ユーマ様ここなら安全ですので出して貰えますか?」

 メルリアさんとメイドさん達の案内で俺と王女様とウォレンさんは人数分の椅子と大きい机しかない窓のない部屋に通された。そしてそこに着くなり王女様は俺にそう要求してきた。

 言葉足らずな王女様の発言に俺は何を出せばいいのか一瞬悩んだが、すぐに金庫の中身の事だと気付いた。

 そのことに気付いた俺は無限収納アイテムボックスを開いて金庫から盗んできた書類を取り出し机の上に三つの山を作った。

「これでいいですか?」

「これだけですか? 確か他にも引き出しごと無限収納アイテムボックスに入れていたようですが」

 王女様は首を傾げながらそう聞いてきた。

「ああ、あれはここで出すと書類に被害が出そうなんで……」

 王女様は俺が引き出しを出さなかった事を怪しんできたので出さない理由を話した。それを聞いた王女様はどこか納得したような顔をしたあと苦笑いを浮かべてた。

「そう言えば……分かりました、では別室に案内させますのでそちらで出してください」

 王女様がそう言うとメルリアさんが「こちらへ」と言って俺を誘導ゆうどうしてきた。


 俺はメルリアさんの誘導に従い一度部屋を出てすぐそばにある隣の部屋に案内された。中は机と椅子が無いだけでさっきの部屋と同じような作りだった。

「ユーマ様、ここは汚れても良い部屋ですのでどうぞお出し下さい」

 メルリアさんにそううながされ俺はインクにまみれた二つの引き出しを床に置いた。

 その後俺は汚れた手を拭こうと無限収納アイテムボックスからタオルと水を出そうとすると、メルリアさんが「こちらをお使い下さい」と言って綺麗なタオルとフィンガーボウルを差し出してきた。俺はありがたくそれを受け取り、フィンガーボウルで汚れを落とした後タオルで手を拭いた。

「それにしてもこれは……後で王女様に人を手配して貰ってその者たちに洗わせましょう。ユーマ様はこの後どうされますか?」

 メルリアさんはインク塗れの引き出しを見てそうつぶやいた後、俺がどうするか聞いて来た。

「書類の方が気になるので隣の部屋に戻ります」

 俺の返答を聞いたメルリアさんは「分かりました。ではご案内しますね」と言って隣の部屋まで俺を案内した。


 部屋に入ると王女様とウォレンさんそして眼鏡をかけた男性が椅子に座り、机の上にある書類とにらめっこをしていた。

「ユーマ様、そちらの方はどうでしたか?」

 俺が部屋に入って来たことに気が付いた王女様は手に持っていた書類から目を離し俺にそう話しかけて来た。

「置いてきましたよ。それと中の物がインク塗れなんで綺麗にするのに信用できる人を手配して欲しいとメルリアさんが言ってました」

 俺は王女様の質問に答えるついでにメルリアさんからの要望を王女様に伝えた。

「そうですか、分かりました。手配しておきます。それでユーマ様はこのあとはどうされますか?」

 王女様はあのインク塗れの引き出しを知っているのでメルリアさんの要望をすんなりと受け入れてくれた。そしてこの後俺がどうするのかをたずねて来た。

「俺も気になることがあるんでソレ見させてもらっても」

 俺は王女様の言葉に机に広がった書類を指さしながらそう答えると、今まで黙っていた眼鏡をかけた男が俺をにらみつけて怒鳴って来た。


「話を聞いていれば貴様ッ王女様に何たる態度! 貴様のような使用人風情がこの重要な書類を触って何かあったらどうするつもりだ! 使用人は使用人らしく掃除でもしてろ!」

 また使用人と呼ばれ俺が怒りに顔を歪めたところで王女様が仲裁ちゅうさいに入ろうと言葉を発した。

審議官長しんぎかんちょう待って下さい」

 王女様に審議官長と呼ばれた男は王女様の言葉を手でさえぎると、仲裁してきた王女様に苦言をていし始めた。

「王女様、貴方がそのような甘い態度だから使用人が付け上がるのです。この使用人には私から言い聞かせますので王女様は下がっていて下さい。おい貴様、話があるついて来い!」

 審議官長と呼ばれた男はそう言い終えると俺の腕を掴んで部屋の外へ連れて行こうと引っ張ってきた。俺はそれを力任せに振り解いて王女様の方を向いた。


「王女様、あれは何ですか?」

 おれは怒気を込めて王女様に眼鏡をかけた男は誰か質問した。

「は、はい、あの方は犯罪などの審議をする審議官の長です」

 王女様は俺の怒気に当てられてか、震えながらそう答えた。答え終えたタイミングで俺に振り解かれ体勢を崩していた審議官長が体勢を立て直し、怒りで顔を真っ赤に染め上げながら俺に詰め寄って来た。

「貴様! この私に暴力を振るった上に王女様に何という口の利き方だ! 不敬罪ふけいざいで処罰してくれる! 誰でもいいコイツを捕らえろ!」

 審議官長が周りにいる人達に対しそう叫んだが誰も俺を捕らえようとはしてこなかった。

 そもそもここに居るのは俺や仲裁をしようとした王女様を除けば、我関せずで行く末を眺めているウォレンさんに俺を此処まで案内してきたメルリアさん、そして目の前でわめいている審議官長だけ。誰も動くはずが無い。


「どいつもこいつも何故従わない! こうなったら私が自ら罰してくれる! 不可視の風よ、刃となって、彼の者を切り刻め、『ウィンドカッター』」

 そんな状況の中、誰も俺を捕らえようとしない事に苛立ちを覚えたのか審議官長は魔法の詠唱を始め詠唱終わりに手を大きく縦に振って攻撃を仕掛けて来た。

 俺はまさかの行動に驚きながらも飛んでくる魔法の射線だと思われる審議官長の振った手の延長線上から大きく横に飛びのいて回避した。予想通り俺に風の刃は当たらず、風の刃は射線上にあった机に当たる前に消えた。

 俺は反撃として無限収納アイテムボックスから久しぶりに魔銃デュアルガンドを取り出して審議官長に向けて発砲した。撃ち出されたエアバレットは頭を庇う姿勢を見せた審議官長の脚に当たり審議官長はその衝撃で体制を崩してその場に倒れた。

 

 俺は立ち上がろうとしている審議官長に追い打ちでエアバレットを数発撃ちながら王女様に今までの怒りや恨みを乗せて話しかけた。

「王女様、ここなら安全だと貴女が言った、それなのに俺は今襲われてるんですけどなんでなんですかね。なんでいつもいつも止めないんですか? もしかして俺に死んでほしいんですか? これも王女様の命令なんですか?」

「ち、違います! 私はそんな命令はしていません!」

 俺が王女様にそう矢継やつぎ早に質問を重ね問い詰めると王女様は顔を真っ青にしながらそう否定した。

「なら例の魔道具を使って質問しても良いですか?」

 俺は王女様も言葉が本当か試すために今度は魔道具を使ってもいいか質問した。

「そ、それは……その……」

 王女様は俺の質問に言いよどみ、顔を伏せてしまった。

 王女様が断言せずに言い淀んだその様子を見て、俺は魔道具を使うまでもなく王女様が俺の質問に嘘を吐いていると判断した。


「そうですか、それが貴女の答えですか。もう付き合いきれません、この書類は俺が苦労して手に入れた物ですので返して貰います。文句があるなら掛かって来ても良いですよ、嘘つき王女様」

 俺は王女様を蔑んだ目で見ながらそう言い放った後、俺は机の上にある書類を全て無限収納アイテムボックスに詰め込んだ。ウォレンさんはなぜか何も言わず腕を組んで眺めているだけだった。

 俺は王女様に背を向けて部屋の扉の前まで移動した。この間、誰かが何かを仕掛けてくるかと思ったが特に何もなく俺は部屋を出た。

 隣の部屋に置いて来た引き出しも回収しようかとも思ったがまた一悶着ひともんちゃくあったら面倒だと思い、引き出しは置いて行くことにした。


 そして怒りのまま部屋を飛び出して数分後、少し冷静になって来た俺は周りを見回して焦っていた。

 そう俺は怒りのまま当てもなく歩いた挙句の果て、王城内で普通に迷子になっていた。

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