第109話 騎士たちの尋問ダイジェスト
前回のあらすじ
副団長の尋問を再開する
副団長の言い訳を潰す
副団長の判決が決まる
「娘の事、ご温情頂きありがとうございます」
元第四師団副団長は憔悴しきった表情で王女様に向かってそう言いながら頭を下げ、その後騎士に連れられて部屋を出て行った。
元副団長が部屋を出て行き次の罪人について王女様が話し始めた。
「次に尋問をするのは元第四師団団長と共に王城に襲撃をしてきた者です。事前の調査で脅迫や殺人などを行っているとの情報がありますのでウォレン老師、その辺りを重点的に尋問していって下さい」
それから王女様とウォレンさんが尋問の内容を詰めていき、大方の準備が整ったところで王女様は騎士に次の罪人を連れて来るように命じた。
命じられた騎士は直ぐに部屋を出て行き、数分で罪人を連れて戻って来た。
連れて来られた罪人は部屋に入る前までは威勢よく「こんなことをしてタダで済むと思うなよ」とか「私を誰だと思っている今すぐ解放しろ」などなど騎士に向かって怒鳴り散らしていたが、部屋に入って鉄格子の向こうに王女様がいるのを見るや否や態度を急変させ、「私は無実です」「助けて下さい」と王女様にすり寄って来た。
だが王女様もこれまで多くの罪人たちを見て来ているので今回の罪人の言葉には耳を貸さずに毅然とした態度で「貴方が無実ならこの魔道具がそれを証明してくれますよ」と言うと罪人は急に大人しくなった。
「では尋問を始めます。先ほどの言った通り尋問ではこの魔道具を使いあなたの発言が嘘か真実かを判断します。それではウォレン老師お願いします」
王女様は尋問開始の決まり文句を言ってからウォレンさんに説明のため持っていた魔道具を手渡し、ウォレンさんに尋問を始めるように促した。
ウォレンさんは王女様から手渡された魔道具を使って罪人に質問を始めた。
内容は事前に決めていた通りの事を聞き、罪人は嘘を吐いたり答えるのを躊躇ったりしていたが嘘は即座に魔道具で看破され、答えるのを躊躇えば返答に時間制限を設けて答えなければ質問の内容に肯定したとして判断するとして無理矢理答えさせた。
日本でなら黙秘権などがあるだろうがこの世界ではそんなものは存在していないため質問はスムーズに終わった。
「それでは判決を言い渡します、貴方は死罪となり財産は全て没収、一族は全員犯罪奴隷とします。これで宜しいですか?」
王女様は罪人に与える罰を言い、それで問題が無いか俺とウォレンさんに確認をしてきた。俺もウォレンさんも王女様の判断は妥当だとして頷いて返した。
それからもう一人元団長と一緒に王城に攻め入った罪人を財産全没収の上死罪、一族郎党犯罪奴隷に処して今日の尋問が終わった。
夕食はカプレーゼとミネストローネとチキンソテーと食べ放題のパン、そしてデザートにプリンが出て来た。
姫姉は久しぶりのプリンに舌鼓を打ち凄く嬉しそうに食べていた。
そんな姫姉も最近は俺が疲れているのを気遣ってかあまり話しかけてこないので少し寂しいが、尋問が終われば時間も余裕が出来るだろうし、デートにでも行きたい。
そんな考えを脳裏に過らせながら俺は眠りについた。
翌日、寝坊をすることなくメルリアさんが呼びに来る前に起きた俺は素早く身支度を済ませ、それが終わったタイミングで狙いすましたかのようにメルリアさんがやって来た。
俺たちはいつも通り朝食を食べて一度部屋に戻り、俺はメルリアさんに尋問に使う部屋まで案内された。
実のところは尋問に使う部屋や食堂までだったら道順も覚えたので案内は要らないのだが、メルリアさんにそのことを伝えたら「もしものことがあったら大変ですので」とやんわり断られた。
それから俺は王女様とウォレンさんの三人で元第四師団団長と一緒に王城を襲撃してきた騎士達の尋問を始めた。
元団長と元副団長が捕まり死刑が決まった事で諦めたのか捕まった元騎士の罪人達はウォレンさんの質問に少し躊躇ったりするものの暴言を吐き続けて尋問の妨害をしたり暴れたりする事は無く、思っていたよりはスムーズに進んだ。
ただ尋問を続ければ続けるほど罪人たちの犯してきた罪の多さに、そしてそれを見過ごしてきた他の騎士団にただただ呆れ果てた。もしかしたら他の団も似たり寄ったりなのかもしれないが……。
俺は今後騎士団を名乗る者たちには近づきたくないと今回の尋問でそう感じた。
その後も尋問は続き、今日を合わせて二日使って第四師団の騎士達は全員裁かれ、あと残っているのは俺たちを殺すように命令を出したと言われているガネトリー・ダイカーンだけになった。
騎士団と協力者たちの尋問が終わり一息ついていると王女様が俺に話しかけて来た。
「ユーマ様、これで今回捕らえた騎士団と協力者たちの尋問と処罰は終わりです。明日はガネトリー・ダイカーン卿に尋問を行いたいと思います。これまでは証拠がなく監視をすることしかできませんでしたが、元第四師団団長が残していたダイカーン卿からのユーマ様達への殺害依頼とその報酬に関しての書類が見つかったので尋問行うことが出来ます」
王女様はそう言いつつもどこか不機嫌そうな表情だった。
「やっとですか、もしかしたら物的証拠がないから裁けないとでも言われるかと思いましたが良かったです。後は明日の尋問までに逃げられない事を祈るだけですね」
俺は一度捕まった元第四師団団長が逃げ出した前例があるので今回は逃げられないように警戒を怠らないで欲しいという意味で言ったつもりだった。
だが王女様は俺の言葉を挑発だと感じたのか顔を真っ赤にして今にも怒り出しそうに睨みつけて来たが元第四師団団長に逃げられたことは事実なので言い返せないでいた。
そんな王女様を見るに見兼ねたのかウォレンさんが口を開いた。
「いつまで睨んでいるつもりじゃ」
ウォレンさんに声をかけられてやっと王女様は俺を睨むのをやめた。
それから王女様はメイド呼び出し夕食までの間部屋で休むと伝えて部屋を逃げる様に出て行ってしまった。
「悪かったのぅ、王女様が睨んで」
ウォレンさんは俺にそう謝ってから出て行った王女様の後を追うように部屋を出て行った。
残された俺も部屋を出て自分の部屋に戻ろうとするとどこからともなくメルリアさんが現れ、俺に一礼した後俺を案内するように前を歩いた。
それから部屋に戻り夕食の時間まで部屋でのんびりと過ごし、夕食の時間になってメルリアさんの案内で俺たちは食堂に向かった。
食堂に入ると中にはウィンダムさん達が先に来ていた。
俺たちはいつもの席に座り王女様とウォレンさんがやってくるまでの間、ウィンダムさん達と会話をして待った。
会話の内容は主に俺が今日の尋問でどんなことがあったかを話し、ウィンダムさん達はそれを聞きながらたまに質問をしてきてそれに俺が答えた。
そうして待っていると割とすぐに王女様とウォレンさんがやって来た。
王女様は食堂に入り席着いたところで俺たちを見渡し口を開いた。
「今日は皆様にお知らせがあります。もうユーマ様から聞いているかもしれませんが王城を襲撃した第四師団と協力者の処罰が終わりました。明日は今回の騒動の主犯ともいえるガネトリー卿を尋問します。私からは以上です」
王女様がそう言って話を一旦終えると控えていたメイドたちが手早く俺たちの前に料理を運んできた。
料理が全員の前に行き渡ったところで王女様が食前の挨拶として神への祈りの言葉を唱えウォレンさん達も同じように唱え、俺と姫姉と田中さんと少女は「いただきます」と言って食事を始めた。