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第107話 王女様の反省

前回のあらすじ

第四師団副団長の尋問が始まる

副団長は娘を助けてほしいと懇願する

それに俺が待ったをかけた

「はぁ、まただんまりか。これまでの尋問ではしっかりやってたから少しは見直してたんだが……。ウォレンさん今回の尋問は一時中断にしたいんですが」

 俺は王女様の態度に多少イラつきながらウォレンさんの方に向き直りそう頼んだ。ウォレンさんは俺の言葉に頷き、元第四師団副団長を物理的に黙らせていた騎士に罪人をろうに連れて行くよう命じた。

 元副団長の男は最後まで王女様に娘を助けてほしいなどと懇願こんがんし、俺には人でなしなどと暴言を吐いて連れて行かれた。


 それからどれだけ経ったか、長い様で短かった静寂せいじゃくにウォレンさんが終止符を打った。

「王女様、今回の件は儂もユーマの意見側じゃ」

「なぜですか! 私はちゃんと法にもとづいて判断をしていました。何が間違っていたと言うんですか!」

 ウォレンさんが俺の肩を持つ発言をしたことに王女様はいきどおりを感じたのか、顔を真っ赤にしながら何も間違ったことはしていないとウォレンさんに怒鳴どなった。

 王女様のその反応を見てウォレンさんはため息を吐き、手で頭を押さえながらやれやれと頭を振っていた。

 俺は二人の様子を見てウォレンさんがまだ王女様に言いたいことがありそうな雰囲気だったので、こっちに話しが振られるまでは静観せいかんすることにした。


「はぁ、まだ分かっておらんのか……仕方ない説明するぞ。まず元副団長の娘をどうするかの判断を元副団長の判決が決まる前に決めた事じゃ。こやつも言っておったが感情論で判断がにぶる可能性がある」

「ですから私はそんな事はしません!」

 王女様はムキになっているのかウォレンさんの言葉に耳を傾けず、そんな事はしないの一点張りで強情ごうじょうな態度を取っていた。

 ウォレンさんはそんな王女様の態度を見て頭を手で押さえた後ため息を吐いた。

「はぁ、感情的になるその反応こそ判断が鈍っている証拠じゃ。現に王女様は一度誤った判断を下しておった、まぁこやつが止めに入ったがの」

「私が間違った判断なんて……そんなことしていません!」

 ウォレンさんにそう言われ王女様は考えるそぶりを見せたが、思いつくことが無かったのか、やっていないと反論した。

 俺もウォレンさんが言う間違った判断が何なのか考えたが思い当たるふしが無かった。

「まだ思い出せんのか、仕方がない。王女様は元副団長の娘を助ける判断をした時、儂らに一言の相談もなく決めたじゃろ。それ自体が判断が鈍っているという確たる証拠じゃ」

 ウォレンさんは強情な態度を取り続ける王女様にそう言い放った。


 あぁそういえばそうだったな、あの時王女様は俺たちに確認を取ってなかった。今思い返せば明らかにおかしい。元副団長の娘を助けると王女様が安請け合いしたことに気を取られていて気付けなかった。注意深く見ていたはずなのに。

 俺が一人で納得と反省をしていると、王女様もウォレンさんに言われてやっと気付けたのか顔を真っ青にしながら震えだした。

「やっと気付いたようじゃな。これに懲りたら王女様はもう少し周りの意見に耳を傾けるべきじゃ」

「……はい」

 王女様は消え入りそうな声でそう返答し、それを聞いたウォレンさんは満足そうに頷いた。


 それからしばしの沈黙の後、王女様が俺の方を向き話しかけて来た。

「ユーマ様、先ほどは申し訳ありませんでした。今後このような事が無いように努めますので、どうかお許しいただけませんか?」

 王女様はそう言いながら俺に向かって頭を下げた。

 反省を態度で示しているのだろうが、これまでの言動から今後も同じような事が起こりそうな雰囲気を感じる。

 そう思った俺は王女様に条件を付ける事にした。

「こちらから出す二つの条件を飲んで貰えるのでしたら許しても良いです」

「条件ですか?」

「はい、簡単な事です。まず一つ目ですが今後俺の質問に嘘を吐かない事。二つ目は尋問の際に何かを決めるときは俺かウォレンさんの意見を聞く事。この条件さえ守って貰えるなら今回の件は許しても良いです」


 俺が条件を言い終えると王女様は少しの間逡巡しゅんじゅんしたが考えがまとまったのか俺の方を向き直り口を開いた。

「分かりました、その条件を受け入れます。私は今後一切ユーマ様に嘘を申しません。尋問ではユーマ様とウォレン老師の意見を聞き判断します」

「そうですか、では今回の件は許しますよ王女様。ですが次はありませんよ、覚えといてくださいね」

 王女様は俺が許すと言ったタイミングであからさまにホッとした表情を見せたので、次は無いと釘を刺すとホッとした表情が一気に曇った。

「覚えておきます。それとユーマ様、ウォレン老師、色々あってお昼を過ぎていますので一度昼食を挟みたいのですが宜しいですか?」

 王女様は俺の言葉にそう返した後、昼食にしないかと俺とウォレンさんに訊ねてきた。

「もうそんな時間ですか、良いですよ」

「儂も同じことを言おうとしてたところじゃ」

 俺とウォレンさんの返答を聞いて王女様はすぐさまメイドを呼び、そのメイドに昼食の手配を命じた。

 昼食の手配を命じられたメイドは部屋を出て行き、少ししてから他のメイドたちがやって来て俺たちを食堂まで案内した。

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