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第106話 次の罪人は第四師団副団長だった男

前回のあらすじ

元第四師団団長の判決が決まる

休憩を取る

コーヒー牛乳を王女様が気に入る

「っんん、少し興奮し過ぎました。そろそろ尋問の方に戻りたいと思いますがユーマ様宜しいでしょうか?」

 コーヒー牛乳を飲み終え冷静さを取り戻した王女様がばつの悪そうな顔でそう聞いて来た。

 もともとそこまで疲れていなかった俺は王女様の意見に賛成し、俺たちは尋問に使う部屋に戻り尋問を再開することになった。


「それでは尋問を再開します。次に尋問をするのは第四師団で副団長をしていた者です。彼は元団長の腰巾着で元団長の陰に隠れて色々やっていたそうです。内容としましては…………。という訳でウォレン老師にはその辺りについて尋問をお願いします」

 尋問をする部屋に戻って来て直ぐに王女様は次の罪人の素性と犯したであろう罪を長々と羅列し、それらの犯罪を裏付ける様な質問をするようにウォレンさんに頼んだ。

 ウォレンさんは王女様の言葉に「うけたまわった」と返し、王女様はそれを聞いてから部屋の向こう側にいる騎士に罪人を連れて来るように指示した。


 少しして騎士が罪人を連れて戻って来た。

 連れて来られた罪人は騎士によって椅子に座らされた後こっちを見て驚いていた。

 そんな様子の罪人に王女様が話しかけた。

「元第四師団副団長、貴方には複数の嫌疑けんぎがかけられています。この尋問では貴方に掛けられた嫌疑が事実かどうかこの魔道具を使い判断します。嘘を吐いても分かりますので正直に話すことをおすすめします。質問はウォレン老師が行います、ではよろしくお願いします」

 王女様は尋問の手順について一通り言い終えた後、説明の際に使った魔道具をウォレンさんに手渡した。

「それじゃ尋問を始めるぞ。「待って下さい! わたしモガッ」」

 ウォレンさんが尋問の開始を宣言し質問をしようとしたタイミングで罪人である元副団長がそれに割り込みをかけ、それを尋問の妨害と判断した騎士が元副団長の口を手で無理矢理塞ぎ黙らせた。

 ウォレンさんは元副団長の行動にどうするか王女様に視線を向けた。王女様はそれに答え口を開いた。

「元副団長、何か言いたいことがあるのですか?」

 王女様の問い掛けに元副団長を何度も首を縦に振った。

「分かりました、元副団長あなたの言い分を聞きましょう」


「ありがとうございます、王女様。私が申したかった事は罪を認めるのでどうか娘だけは助けて頂けないかという事です。私にはつい先日生まれたばかり娘がおります。ですがこのまま一族郎党いちぞくろうとう死罪か奴隷落ちになれば未成年である生まれて間もない娘は生きていけません! ですからどうか、どうか娘だけは助けて下さい! お願いします!」

 元副団長はそう言い終えると椅子から降りて土下座をした。

 元副団長の話を聞いた王女様は悲しげな顔をしながら考え込んでいたが、少しした後何かを決心したかのような顔をして口を開いた。

「分かりました。貴方の娘については私がどうにか致しましょう」

「ありがとうございます! この恩は死んでも忘れません」

 王女様があまりにも馬鹿な決断を下し、俺は直ぐに言葉が出なかった。だが流石にこの判断は早すぎると思い話しに割り込んだ。


「待ってくれ、その判断は性急せいきゅうすぎる」

「ユーマ様、なぜ止めるのですか?」

「そうだ! どこのどいつか知らんが無関係な奴は黙ってろ!」

 いきなり話に割り込んできた俺に王女様は不思議そうな顔をして聞いてきて、元副団長は偉そうな態度を取ってきた。

「罪人は黙ってろ!」

 俺は偉そうにしてきた元副団長にそっくりそのまま同じことを言い返したが、それを聞いた元副団長は口汚く俺を罵りだした。俺がこっち側に居る意味をまったく理解していない元副団長を無視して、俺は王女様に向き直り話を続けた。

「それで王女様、その判断は間違ってはいないんだが間違ってもいる」

「どういう事ですか、仰っている意味が分かりません!」

 俺が少し頓珍漢とんちんかんな事を言ったせいで王女様は困惑気味になりながらそう言って来た。罰が悪くなった俺がウォレンさんの方を向くとウォレンさんはサッサと説明してやれと言わんばかりにあごを王女様の方に振った。

 それを見て俺は王女様にも分かり易く説明をすることにした。

「まぁ待て、順を追って説明する。まずそこの罪人の娘を助けるのは良いがそれをダシに感情論で罰を軽減してしまう、そんな判断する可能性がある」

「私はそんな事しません!」

 俺は誰でもやりそうだと思われる可能性の一つを挙げただけなのだが王女様は眉間みけんにしわを寄せて怒鳴り気味に否定してきた。

 俺からすれば今の王女様のそういう感情的な反応がますますやりかねないと感じさせる要因なんだが。


 俺はあえてそのことを指摘せずに次の問題について話すことにした。

「するしないのの問題ではなく可能性の話だ、誰もするなんて言ってないだろ。それよりも次だ、そいつの娘を助けるという事は被害者遺族を敵に回す可能性があるという事だが」

「なぜですか、この国の法律には親の罪は未成年の子に限り罰の対象にならないと明記されています。何も問題は無いはずです」

 俺が問題視した事柄に王女様は法律で決まっているから大丈夫だと自信満々に反論してきた。

 法律で決まっているから問題ない、か。

「法律上は問題ないだろう。だがなその法律、普通の市民が知っていると思っているのか?」

 文明が発達した日本ですらほとんどの人間が法律について知らないのに、義務教育すらないこの国の国民がそんなに詳しく法律を知っているとは思えない。

 俺はその事を王女様に問い掛けた。

「それは……、ですが説明すれば分かって頂けるはずです!」

 王女様は俺の問い掛けに傲慢ごうまんにもわかって頂ける筈などと何の解決策にもなっていないことを言い出した。

「その言葉、子供を殺された親やお腹の中の子供を流産させられた女性、その他にも多数いる被害者の前で言えるのか。この子供は法律で守られているから罰の対象にはなりません。と、法で守られなかった被害者や遺族に対し、加害者の娘は法で守られているから手出し無用だと」

 俺がそう言うと王女様はついに黙ってしまった。


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