第105話 元第四師団団長は許されない
前回のあらすじ
元第四師団団長の尋問が始まる
嘘がバレる
逆ギレする
「早く私を此処から出せッこの無能王女がァ! ウォレン貴様もだ! 第四師団団長であるこの私をあろうことか犯罪者呼ばわりしこのような仕打ちをするなど、国王様や第一王子様ならこんなことはしなかったぞ!」
元第四師団団長は王女様だけでは飽き足らず、ウォレンさんにまで噛み付いた。未だに自分が置かれている立場が分かっていないらしい。それにしても国王と第一王子か……。国王、国王、ああ俺たちを誘拐したあの豚王か。まぁ確かにあいつなら元第四師団団長とグルでもなんらおかしくは無いな。
俺がそんな事を考えている間に話が進んでいて元第四師団団長は騎士達に取り押さえられていた。
「クソッ放せ! 私は何も悪くない! 私は貴族だぞ! 何をしても許される選ばれた存在なんだぞ!」
「聞くに堪えんな……、貴様は何もわかっておらん。貴族とは民あってのもの、民が居なくなれば貴族などただの飾りにすぎん。それすらも分からんとはのぅ。王女様、奴に罰を告げて尋問を終わらせるしかないようじゃ」
ウォレンさんは元第四師団団長の発言に頭を抱えながら、王女様に尋問を終わらせるように求めた。
「分かりましたウォレン老師。では元第四師団団長に判決を言い渡します、貴方は死刑です。そしてあなたの財産は没収、一族は全員犯罪奴隷とします。刑の執行は三日後に致します。それまでの間貴方には刑の執行場所である王城前広場で待機して貰います。三日後に貴方が生きていれば刑を執行します。以上です、連れて行って下さい」
「ふざけるなッ! 放せッ! 私は選ばれた人間だぞ! なぜ私が死ななければならない! 無能王女ッ貴様だけは絶対に殺してやるッ! 絶対にダァァ!」
元第四師団団長は最後まで王女様に暴言を吐き続け、騎士たちに取り押さえられる形で連れて行かれた。
「はぁ、これでは先が思いやられます」
王女様はため息を吐きながらそう溢した。
「そうじゃのぅ、じゃがまだ奴の直属の部下とガネトリーが残っておる。ここは一度休憩を挟んだ方が良かろう」
「そうですね、ユーマ様もそれでよろしいでしょうか?」
王女様の草臥れた様子を見てウォレンさんは少し休むことを提案し、王女様はなぜか俺に確認を取ってきた。
俺はそこまで疲れてはいなかったが王女様の疲れ切った表情とその奥にある無言の圧力に押され了承した。
「それでは談話室で休憩いたしましょう」
王女様はそう言うとどこからともなく現れたメイドに何かを伝え、俺たちは王女様に連れられ今いる部屋から少し歩いたところにある部屋に入った。
部屋の中は座り心地の良さそうなソファと椅子が二脚あり、それらの間にあるテーブルにはすでにサンドイッチやクッキーなどの軽食が用意されていた。
王女様は椅子に座り、ウォレンさんは入って直ぐのソファに陣取った。
俺はウォレンさんの向かい側にあるソファに座った。因みに座り心地は見た目通り良かった。
俺たちが座ったのを見計らってメイドさんたちが手早く俺たちの前にカップを置き、王女様には紅茶とミルクをウォレンさんには黒い液体を、そして俺には「何にしますか」と質問してきた。
俺はメイドさんの問いに答える前にウォレンさんに出された物の見た目と匂いがコーヒーに似ていてすぐさま鑑定を使って調べた。結果それがコーヒーだと分かった。
「ウォレンさんと同じコーヒーをミルクありでお願いします」
俺はメイドさんにそう注文し、メイドさんは少し驚いた様子で「かしこまりました」と言った後、俺の前に置かれたカップにコーヒーを注ぎ、ミルクピッチャーとスプーンをカップの横に置いて下がった。
俺はまずコーヒーを一口飲んで味と香りを確認した後、ミルクを半分ほど注ぎスプーンで軽く混ぜて自分好みの味になったか確認のためにもう一度飲んだ。
俺がその一連の味の調整を済ませたところでなぜか驚いた表情の王女様が話しかけて来た。
「ユーマ様もそれをお飲みになるんですね」
「ええ飲みますよ。何かおかしかったですか?」
俺は王女様の質問の意図が分からず、なぜそんな事を聞くのか考えながらぶっきらぼうに返した。
「いえ、コーヒーは凄く苦いので……。飲める人はかなり限られてますので純粋に驚きました」
王女様はコーヒーと言ったタイミングで少し顔を顰めつつ俺の質問に答えた。
「そうですか、まぁ俺の場合はミルクを入れているのでそこまで苦くは無いですけど」
「そうなのですか?」
王女様は首を傾げながらそう言った。
「ええ、王女様も試しに飲んでみては」
「そうですね、では私にもコーヒーを」
王女様は俺の提案に乗りメイドさんにコーヒーを頼み、それを聞いたメイドさんは用意をしていたのか新しいカップにコーヒーを注ぎ、ミルクを付けて王女様の前に置いた。
王女様はコーヒーにミルクを全て注ぎ、スプーンで軽く混ぜたあと少し躊躇いながらゆっくりと一口飲んだ。
「うーん、確かに凄く苦いわけではありませんがまだ苦いですね」
王女様は顔を顰めながらそう言った。
「それならこういうのはどうですか?」
俺は無限収納から容器に入った角砂糖を取り出してテーブルの上に置いた。
「これは……?」
「砂糖です」
「こんな高価のものを入れるんですか?」
王女様は訝しげにそう言いつつ角砂糖をひとつコーヒーに入れてかき混ぜ、一口飲んだ。するとその味に驚いてか表情を一変させた。
「どうですか?」
「どうもこうもありません! 美味しいです! 甘いのに甘ったるくなくて、苦みが丁度いい感じで、飲んだ後の口に残る苦みがありません!」
「そうですか、それは良かった」
俺は王女様の捲し立てに若干引いた。