第99話 尋問再び
前回のあらすじ
王女様は逃げ出した
翌朝早くに目を覚ます
尋問が再び始まる
「ユーマ様、お迎えに上がりました。準備はよろしいですか?」
部屋に戻って寛いでいるところに部屋の扉がノックされそれに返事をし扉を開けると、扉の前に立っていたメルリアさんがそう声をかけてきた。
「ええ、大丈夫です。行きましょう」
俺がそう答えるとメルリアさんは「ではご案内いたします」と言って歩き出した。俺は歩き出したメルリアさんの後ろについて行き、尋問に使われている部屋に着いた。
「失礼します、王女様。ユーマ様をお連れしました」
メルリアさんはノックをした後、扉の向こうにいるであろう王女様に声をかけると部屋の中から「どうぞ」と王女様の返答が来た。
それを聞いたメルリアさんは扉を開けて中に入り、俺もそれ続いて部屋の中に入った。
部屋の中に入ると王女様とウォレンさんが居り、二人が俺に声をかけてきた。
「お待ちしておりましたユーマ様」
「待っておったぞ、今日は儂も尋問に参加するぞ」
「そうですか、ウォレンさんも参加ですか。ではよろしくお願いします」
俺は二人に向かってそう言った後、用意されていた椅子に座った。
「それでは尋問を始めたいと思います。罪人を連れて来てください」
俺が椅子に座ったのを確認してから王女様がそう言い、部屋の鉄格子の向こう側にいる騎士がそれを聞いて一度部屋を出た後、罪人を連れて戻って来た。
俺は騎士に連れられてきた罪人の顔を確認したが覚えのない顔だった。
俺に記憶にないという事は下っ端か一度も会った事のない人物だろう。
俺がそんな事を考えている間に罪人は鉄格子の前にある椅子に座らせられて、罪人が座ったタイミングで王女様が口を開いた。
「これから罪人である貴方には私たちの質問に答えて貰います。嘘を吐いても良いですがこの魔道具が反応しますので、嘘は通用しないと思って下さい。それでは尋問を始めたいと思います」
尋問が始まってから罪人は「命令されて仕方がなかった」や「本当はやりたくなかった」などと訴えてきたが魔道具がそれは嘘だと判定した。それを見て罪人は他の罪人達と同じように魔道具が壊れていると騒ぎ、王女様は前の時と同じように俺とウォレンさんに性別を聞き、魔道具が壊れていない事を実証して見せた。
それからも罪人は何とか罪を逃れようと嘘を吐いたり、曖昧な答え方をしたりしていたが王女様が「このまま嘘を吐き続ければ死罪です」と言うと罪人は手の平を返して本当の事を自白した。
罪人の自白を聞けば聞くほど元第四師団団長の悪事が出て来た。
罪人が言うには元第四師団団長は平民で気に入った女性が居れば無理矢理攫ったり、冤罪で捕らえたりして自分の物にするのは当たり前の事。他にも気に入らない人間が居れば冤罪で処分するか、事故に見せかけて部下に殺させる。それが無理なら暗殺者を雇って殺す。それ以外にも悪い噂が絶えない豪商からの賄賂やその豪商から密輸された商品の購入など叩けば幾らでも埃が出て来た。
それを聞いていた王女様は顔を真っ青に染めて震えだし、ウォレンさんは顔を真っ赤に染め拳を握り締め肩を震わせていた。
二人の様子を見て俺は罪人に「もういい、死にたくなかったら黙れ」と怒鳴った。だが罪人は「これで俺は死罪にはならないよな」「俺は助かるんだよな」と叫び続けたので鉄格子の向こう側で控えていた騎士に罪人を黙らせるように頼み、騎士は罪人の口を塞ぎ黙らせた。
「大丈夫ですかウォレンさん?」
罪人を黙らせた後、俺はウォレンさんに声をかけた。
「ああ、大丈夫、大丈夫じゃ。だがまさか、奴があそこまで悪行を重ねていたとは……。今すぐにでも奴を殺してやりたい気分じゃ」
ウォレンさんは椅子から立ち上がり俺にそう言いながら壁際に移動し、握り締めていた拳で壁を殴りつけた。
「さて、王女様も大丈夫ですか?」
俺は先ほどまでは震えて会話にもならなさそうだった王女様にそろそろ会話が出来るか確認の意味も込めて話しかけた。
「はい、大丈夫です。ですがまさか、このような事が行われていたとは……。彼には色々聞かなくてはいけなくなりました」
王女様はまだ顔が真っ青だったが会話は出来るようで俺の問い掛けに返事をし、罪人から聞いた話について本人に問いただそうと決心した様子だった。
「そうですか王女様。ではそのためにもそろそろ判決を出したらどうですか?」
罪人を取り押さえている騎士から早くどうにかしてくれと目で訴えられ、俺は王女様に罪人の判決を出すように促した。
「そうですね、それでは判決を言い渡します。国家反逆と元第四師団団長の下での悪行、本来ならば一族郎党死罪ですが自白をしたことですし、一族郎党犯罪奴隷落ちを言い渡します」
俺に言われて王女様は目の前で騎士に取り押さえられている罪人とそれを取り押さえている騎士の無言の訴えに気付き、これまでの尋問で分かった真実から罪人の罰を算出して言い渡した。
「そんな俺は本当の事を言ったじゃないか! これじゃ死罪と何も変わらないじゃないか!」
判決を言い渡された罪人は騎士に取り押さえられた状態にもかかわらず王女様に異議を申し立てた。
「黙りなさい! 貴方がやって来たことを考えればこれでも優しいくらいです! 連れて行ってください」
異議を唱えた罪人に王女様は椅子から勢いよく立ち上がり罪人を睨みながら怒鳴りつけ、騎士に罪人を連れて行くように命じた。
そう命じられた騎士はまだ叫び続けている罪人を殴って黙らせ、無理矢理連れて行った。