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第98話 田中さんには悪いと思うが抑えられない

前回のあらすじ

夕食の席で食べる前に王女様と言い争い

ウィンダムさんが強制的に夕食を持ってこさせる

最悪の空気で食事をする羽目に


「それでは私はお先に失礼します」

 見るからにイライラした態度を隠さない王女様はそう言って、俺たちの返事も待たず逃げる様に食堂を出て行った。

 凍えそうな位冷え切っていた空気がその原因の一端である王女様が居なくなったことで本来の温度を取り戻していった。

「まったく……、儂も失礼させて貰うぞ」

 王女様が出て行って直ぐにウォレンさんがそう言って立ち上がり、王女様を追いかける様に食堂を出て行った。

 それに続くようにウィンダムさんたちも食堂を出て行き、俺たちもメルリアさんに促されて食堂を出て部屋に戻った。

 部屋に戻った俺は手早く風呂に入り、寝る前に透視で元第四師団団長だいよんしだんだんちょうがちゃんと牢屋ろうやに入っていることを確認してから眠りについた。


 翌日、あまり深く眠ることが出来なかった俺は朝早くに目を覚ました。窓から差し込む太陽の光を見て二度寝をしようかベッドの中で悩んでいたが、悩んでいる間にだんだん目がえ、最終的に二度寝を諦める事にした。

 そう決めた俺はベッドから出て普段着に着替えた後、透視で元第四師団団長が牢屋に入っている事を眺めながら散歩に出かけた。

 昨日あんな騒動があったとは思えないくらい静かな城内を、たまにすれ違う人と挨拶を交わしながら部屋から見える位置にある庭にやって来た。

 庭は早朝という事もありまだ肌寒く、散歩をするにはあまり向いていなかった。

 俺は肌寒さを感じつつも朝食までの間、この場で軽く体を動かして時間を潰した。


 庭で体を動かし始めて肌寒さを感じ無くなった頃、メルリアさんがやって来た。

「ユーマ様、こちらをお使いください」

 メルリアさんはタオルを俺に手渡してきた。

「ありがとうございます。もしかして朝食の時間ですか?」

 俺はメルリアさんにタオルのお礼を言いつつ、メルリアさんが何故ここに来たか予想をしながら聞いた。

「はい、もう少ししたら朝食の時間ですので、汗を流す時間も考慮こうりょして声をお掛けしました」

「そうですか、わざわざありがとうございます。それじゃ部屋に戻って風呂に入って来ます」

 俺はメルリアさんに一言お礼を告げてから部屋に戻って、風呂で手早く汗を流した。風呂から出た後、少し待っていると再びメルリアさんがやって来て、朝食の時間だと伝えて来た。

 俺は部屋を出て他に皆と一緒にメルリアさんの案内で食堂に向かった。


 食堂に着くと先に来ていたウィンダムさんたちが席に着いており、俺たちが席に着いたタイミングでウィンダムさんが俺に声を掛けてきた。

「やぁ皆おはよう、昨日は災難さいなんだったな。それと今日も王女様と喧嘩けんかをするのか?」

「それは王女様次第ですかね」

 ウィンダムさんは冗談めかしながら俺にそう質問してきたので、俺はあえて肯定も否定もせず相手の出方次第だと言葉をにごした。

 それからウィンダムさんたちと他愛もない話で時間を潰しているとウォレンさんと王女様が連れ立ってやって来た。

「お待たせいたしました」

「待たせたの」

 王女様とウォレンさんは席に着いてからそう言った。そして二人の言葉を合図にメイドたちが動き回り、皆の前に朝食が配膳はいぜんされた。


 朝食には小さな器に盛られたサラダと大きめのソーセージ二本とスクランブルエッグが盛られた丸皿と籠に盛られたロールパンが出された。

 サラダにはレタスとキュウリとトマトが彩りよく盛られており、その上にクルトンと粉チーズが軽くまぶされ、さらにその上からシーザードレッシングが掛かっていた。

 大きめのソーセージとスクランブルエッグにはトマトを煮詰めて塩胡椒で味付けをしたソースが掛けられていた。


 俺はロールパンを縦に割ってソーセージを挟んだホットドッグと、スクランブルエッグを挟んだタマゴサンドと、スクランブルエッグとソーセージ両方を挟んだタマゴ入りのホットドッグを作ってサラダと一緒に食べ始めた。

 俺の食べ方を見た姫姉は同じようにロールパンにソーセージを挟んでホットドッグして食べ、それに釣られる様にウィンダムさんやウォレンさんや田中さん、そして暗殺者の少女が真似をして食べ始めた。

 王女様やソリアさん、アリシアさんは俺たちの食べ方を横目にちらちらと見ながらも真似はせず普通に食べ進め、全ての料理を食べ終えた。


 全員が朝食を食べ終えたところで王女様が俺に向かって話しかけて来た。

「ユーマ様、この後昨日捕まえた者たちの尋問を行いたいのですが……」

 昨日、あれだけの事があってウォレンさんに助言をされたにも関わらず、王女様は昨日捕まえた者たちの尋問を行いたいと言い出した。

 一瞬あまりの言葉に俺は呆れ、ウォレンさんの方にどういうことか視線で語り掛けたがウォレンさんは気まずそうに視線をらした。ウォレンさんのその行動で王女様の暴走だと察した。

「はぁ、またですか。まあ良いですよ、付き合います。部屋にいるんで準備が出来たら呼んでください」

 俺は王女様に対して苛ついている事を分かり易く態度に出しつつ、尋問には参加すると答えた。

 またしても一触即発の空気になった食堂で誰かがため息をこぼした。

 それを合図にしてか王女様は立ち上がり、全員に向けて「お先に失礼します」と言った後、俺に「後程迎えを行かせます」と言って食堂を後にした。

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