表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/268

第97話 田中さんに可哀想な事をした

前回のあらすじ

メルリアさんが仲間を連れて来た

応接室で待つことに

覗き魔扱いされる

「ユーマ様方、メルリアです。夕食の準備が整いましたのでお呼びに参りました」

 陽が沈み切る少し前にメルリアさんがこの部屋の扉をノックしてから扉を開けて、俺たちに夕食の時間だと伝えに来た。

 椅子にもたれながら透視で場内を見回していた俺は一旦それを打ち切り、夕食を食べる事をメルリアさんに伝えた。他の皆も同じようにメルリアさんに伝えてそれを聞いたメルリアさんを先頭に俺たちはいつも通り食堂に向かった。


 食堂に至るまでの廊下で俺たちは兵士と何度もすれ違いつつ目的地に着いた。

 食堂に入ると俺達以外にはまだ誰も来ておらず俺たちはいつもと同じ席に案内され、そこに座って他の人たちがやって来るのを待った。

 数分もしない内に食堂の扉がノックされ、ウィンダムさんとソリアさんとアリシアさんが入って来た。席についたウィンダムさんたちと挨拶を交わしていると再び食堂の扉がノックされ、ウォレンさんと王女様が入って来た。

「皆様お集まり頂きありがとうございます。まずはユーマ様方、この度はご迷惑を、そしてご助力して頂きありがとうございます」

 王女様は席に着くと同時に挨拶をし、その後俺たちに頭を下げながら礼の言葉を言った。


「それだけか?」

 俺はお礼を言うだけで第四師団団長たちの処遇や俺達への謝罪と感謝を言葉だけで済まそうとしたので、王女様に怒りを少し言葉に乗せて他に言う事は無いのかと質問した。

「えーと、その……あの、えっと」

 王女様は俺の質問にオロオロとしながら必死に考えを巡らせているみたいだったが、考えがまとまらずただただ時間だけが過ぎて行った。そんな状況を見かねたのかウォレンさんが言葉を発した。

「王女様、少しよろしいですかな?」

「はい、良いですよ老師」

 王女様はウォレンさんに声を掛けられて少しだけホッとした様子でウォレンさんの発言を許可した。

「儂の創造じゃがユーマは信賞必罰について聞きたい、んじゃろ」

 ウォレンさんは言葉の最後に俺の方を向いて話しかけてきたので俺はそれに頷いて返した。


「信賞必罰ですか?」

 俺の返答に王女様はまだピンと来ていないらしく、俺ではなくウォレンさんに聞き返した。

「そうじゃ。ユーマは第四師団団長たちの処遇について聞きたいんじゃろ。第四師団団長等は現行犯じゃし尋問をするまでもなく王女様の判断で死罪にしても問題なかろう。それとユーマ達への謝罪や感謝じゃが言葉だけで済ますのはどうかと」

「第四師団団長についてはしっかりと尋問します。それにユーマ様方に言葉だけで済ますつもりもありません」

 王女様はウォレンさんの第四師団団長の説明を聞いて顔をしかめた後、俺達に対する謝罪と感謝を言葉だけで済ませたことについて言われると反論した。

「じゃが先ほどの王女様の言葉では謝罪と感謝を伝えただけで何一つ報酬について話しておらんし、このままなら無報酬で終わらせることも可能じゃな」

 王女様の反論にウォレンさんはやろうと思えば無報酬にすることもできるような言い方を王女様がしているとさとした。

「それはそうですが、私はそんな事はしません!」

 王女様は感情的になりウォレンさんに言い返した。

「じゃがユーマと王女様は言葉が無くても伝わるほどの関係でもないし、言葉にしなければ伝わらんこともある。それを怠れば誤解を生んで敵を増やしかねんぞ」

 それでもウォレンさんは感情的になる王女様に何とか理解して貰おうときびしめに言った。


「そ、それはその通り……ですね。それは私の落ち度です。ユーマ様方、今回の件に関する報酬については協議のうえ後程お渡ししますのでお待ちいただけますか?」

 ウォレンさんの言っている事をやっと理解したのか王女様は落ち着きを取り戻し、一拍置いてから俺の方に向き報酬について少し待ってほしいと伝えて来た。

「ええ、いくらでも待ちますし、俺個人は心のこもった謝罪と感謝の言葉が貰えるなら報酬が無くても構いませんよ」

「そんな恥知らずな事はしません! ちゃんと相場通り払いますしちゃんと感謝もしています!」

 俺は謝意さえ籠っていれば報酬の額については特に興味が無かったのでそのままそう伝えると、王女様は顔を真っ赤に染めて怒鳴るように報酬は絶対に出すと宣言した。

「まあまあ、一旦話し合いはこの位にして夕食にしましょう。そこの君、食事の準備をするように言ってきてもらえるかな」

 王女様が再びヒートアップしてきたタイミングでウィンダムさんが俺たちの会話に割り込み、夕食の準備をするようにメイド伝えて準備させた。


 ウィンダムさんに夕食の準備をするように言われたメイドは脱兎のごとく食堂を出て行き、その直ぐ後に他のメイドたちがやって来て俺たちの食事の準備を整えていった。

 それから俺たちは夕食として出されたチキンソテーとクリームシチュー、それとスライスされたフランスパンを食べ始めた。

 食事の間、俺と王女様に板挟みにされた田中さんが終始手を震えさせ、冷や汗を掻きながらもどうにか何事もなく食事が終わった。





次回は28日に更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ