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序章
学校史上初の快挙だ。
全中ベスト8。犬村市立第三中学。
その代の主将は、涙もなく、こう晴れ晴れと言った。
このチームは、日本で一番、堅い絆で結ばれたチームです!
小澤優太郎。158cm、38kg。ポジションはCMF。
誰がどのような状態かを常に見回す。そして、彼にボールが渡れば、得点を意味する。
ついた二つ名は、「ピッチ上の灯台」だ。
「ほっほぉ、ようやく見つけたか。まさしく日本サッカー界史上最高の中央を」
ほとんど情報が回らない中学サッカーの選手を発掘するのは、地元でも非常に苦労する。
今季は|Jリーグディビジョン3(J3)で戦う「ビッグウェーブ魚原」のユース監督、福原政一郎は口元のニヤけを抑えきれない。
福さん、16期生はホントに豊作ですよ⁉︎も〜泣けてきますよぉ!
と叫ぶスカウト担当。
まあ、問題はここからである。この才能に溢れた一癖も二癖もある連中を、どう使うか。
楽しみで仕方ねえ…
高笑いと同時に、海風に煽られたオーシャンブルーの横断幕がたなびく。
「潮騒と共に頂点へ 魚原魂」