3章-1話
「ただいま」
「ただいまー」
武器屋から本部に戻ってきた私とガイは本部に入ってすぐに別れた。
ガイは酒を飲むため、私は武器をミントに渡すためだ。
「お帰りなさい、リオ」
「ただいま、ミント。これ、頼まれていたやつ」
と手にもっていた剣三本と弓矢のセットを渡す。
「ありがとう。あぁ、そうだ。ガイと人さらい、捕まえたんでしょう?」
「!!なっ…なんで知ってるの!?」
私が驚くとミントがふっと笑う。
「ミシェルが教えてくれたのよ。珍しいわね、ミシェルが人と話すなんて」
「本当ですわ。ですが愚行な行いをしている輩を捕まえてくださったことには感謝していますわ、リオ」
ミントの言葉に続けて上から…階段から下りてくる金髪の少女、マリアが口を挟む。
「マリア!来てたんだ」
と私はいい、マリアを見る。髪は綺麗な金髪、瞳の色は青。
本名はマリア・L・S・ライザスと言う。
そしてこの国、王都シュトレー・ライザス王国を治める一国の姫君でもある。
マリアは一年程前からここのエクソシスト本部で仕事をしているらしい。
もちろん国王はこのことを知らない。そもそも知っていたら一国の姫君をこんな戦いの前線におくようなマネはさせないだろう。
マリアは本部一の弓の名手で魔術の使い手でもある。魔術といってもこの国のみんなが自由に使えるワケじゃない。
世界各地にある、『魔導書』と呼ばれているものを使い、そして魔術の素質をもつ、魔力をもっている人間にしか魔術は使えない。
この本部でも、魔力を持っているのはマリアとミシェルしかいない。
私にも魔力とは別の霊力というものがあるが、私の場合は東洋の国に伝わる霊力を込めた霊符というものを使う。
だから私は魔術は使えない。
「えぇ、是非お礼に伺おうと思いまして。ガイはいらっしゃる?」
「あぁ…うん。ガイならあそこで酒飲んでる。ジャマしない方がいいんじゃない?」
お礼なら後で私が伝えておくし、と続けるとマリアは困ったように笑い
「あの酒癖がなければいいのですけれど。それではリオ、よろしくお願いしますわ」
「うん、わかった。それと、マリアその口調直せとは言わないけど、もっとここにいる時はゆるめたら?」
私が言うとマリアは口を抑える。
「いけませんわ…。ここでは姫であるということを忘れなくてはなりませんのに…」
「まだ国王様に許しをいただいてないの?マリア」
ミントがマリアに訊くとマリアは顔をくもらせ、「えぇ…」と呟く。
「実は最近お父様が本部に行くことさえなかなか許してくれなくなりまして…。困りましたわ……。もしかすると近いうち…」
ここに来ることが出来なくなるかもしれない。言わなくても、そう言うと私は確信していた。
マリアは口を止め小さくかぶりを振る。
「いけませんわ。…それでは、今日は帰りますわ、リオ、ミント。…それでは」
「うん、また、明日ね。マリア」
「えぇ。…ばいばい、リオ」
「!!…うん、ばいばい」
軽く手を振りマリアを見送るとミントがため息をつく。
「もし、そうなれば。また人手が減るわね」
そうだ。今この本部の他んも各地に支部があるが、本部にはエクソシストが私を含めて12人しかいない。
その中でここにいるのは私とミントとガイ。そして今出ていったマリア。
あぁ、あとガイの隣で酒を飲んでいるガイと同じ歳のジル。本名はジル・ウォーカー。
あとはミシェルとミシェルが唯一毎日一緒にいるレイ,リン姉弟。
双子で姉のレイ・スパイラーと弟のリン・スパイラー。そして三階にいるであろうマスターだけ。
後の二人は今日はまだ帰ってきてないらしい。
「リオ、カウンターに座って。何か淹れるわ」
そう言ってミントは武器を武器をかけてある壁に剣と弓矢をおいてカウンターにまわる。
「ありがとう」
私はカウンターの椅子に座り、カウンターに手を置く。
「おう、リオ。帰ってたのか」
「ルッツ。ただいま」
「ははっ、おかえり」
笑いながらそう言ってくれたルッツは私の隣の椅子に腰掛ける。
「ミント、リオに言ったか?あのコト」
「?…あぁ!ごめん言ってなかったわ。リオ、明日から二日間隣街のカトナスに行ってくれる?ルッツとマリア、あと、ガイも連れて行って。どうせヒマだろうし」
「ヒマじゃねぇ!!」
だん!!と音をたてガイがカウンターを叩く。…話を聞いてたのか。
「ヒマでしょう?何なら、別件の仕事、やってもらってもいいのよ?」
「う……はぁぁぁぁ…わぁーったよ。ったく…しゃぁねぇなぁ…」
深くため息をつきながらカウンターの席(ルッツの隣)に座る。
「足引っ張んなよオッサン」
「誰がオッサンだクソガキ!」
「オッサンだろーがっ」
「俺はまだ23歳だっつの!!」
あーあぁ…また始まった。
ルッツとガイは顔をあわせるとこうやってすぐに口喧嘩を始める。
この三週間でいい加減なれたけど……。
「二人共いい加減に」
「はい、二人共~ケガしたくなかったら、今すぐやめてね?」
チャキリとミントが両手に銃を持ち、二人の眉間に銃口押し付ける。
中身はないと思う。…たぶん。
「「ハイッスミマセンデシタ」」
異口同音に二人がそういうとミントはにこりと笑って「よろしい」と銃をしまう。
本部ではミントが怒らせると一番怖いと思う・
「少し早いけど…夕食にしましょうか。リオ、手伝ってくれる?」
「あ…うんっ!」
時計を見ると早くも夕刻……一日が過ぎるのは本当に早いと思う。
時間が流れる早さがどんなに早いか、あの日から私は知ることになったんだろう。
父とそして母を亡くしてから――――――――――――。
あの…忌々しい出来事さえなければ。何度そう思ったことか。
嗚呼…本当に私は―――――――――――――――……。