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王妃な王妃とツンドラ王と  作者: 神田 明理
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第7話

園遊会の会場に一歩足を踏み出すと、招待客の皆様から拍手で迎えられた。結婚する前まで、たいていの催し物は一人で訪れていたからだろうか、隣に誰かがいるというのは慣れない、けれども決して嫌いではない。


母国の話になるが、私には兄弟、姉妹が8人いてそのうち男は3人。彼らはゆくゆく国を支える者として学業、武道などに専念するために大学または大学院を卒業するまで公務はほとんどないが、女はそれと違って公務に追われる日々を送る。王族として生まれた女性の仕事=公務と考えられているからだ。学業は家庭教師だけか中等学校まで、全力で頼んでも高等学校までしか通わせてもらえない。(私が全力で頼んだ張本人なのでよく分かる)なんにせよ公務は15歳くらいからバンバン依頼が入り、さらにいわゆる『嫁入り修行』も本格化するので王女というのは皆が思っている以上に大変な日々を送っている。


女兄弟は5人いたが私が嫁ぐまでに公務に携わっていたのは姉、私、すぐ下の妹の3人で姉は主にお祝いの席や、社交パーティーに来賓として出席。私は災害が起きた場所や福祉施設の視察。妹は皇太子が公務に当たる時のパートナーや国を訪れた要人のおもてなし。と、姉妹間でだいたいこなす公務の種類は決まっていたので一緒に出かけるのは年に2、3回だけだった。


そして、その年に2、3回一緒に出かけると言うのはたいてい帝国主催のパーティーだ。あの忌まわしき、くるくる回ったり、大勢の男から気持ちの悪い笑みを向けられるパーティーだ。パーティーで『お姫様社交辞令モード』を全力で長時間続けた幼い頃の私は次の日必ずと言ってもいい程高熱で倒れた。だから専属の世話係や侍女達はこのイベントを極端に避けたがっていたけれど、王室の威信と存在を示す大切なイベントに欠席することはプライドが許さなかったので皆勤賞だ。


それからパーティーは幼いうちなら母と共に出席するが、12歳くらいになるとパートナーと入場するという暗黙の了解があった。そのときパートナーとなったのが幼馴染みで同じ学校に通っていたエスターニャ公国次期公爵アルフレッド・エスターニャことアルだった。


私もアルがいいと思っていたし、彼になるだろうと思っていたから特に抵抗は無かった。通常、パートナー決めの際は一応本人に『この人でいいですか?』的な確認が入るのだが、私にはそれもなかった。するまでも無いと思われていたのだろう。


それには理由がある。ユリアス帝国では王室への関心が非情に高く、新聞にもその日の王室の面々の予定を知らせる『今日の行幸』というコーナーが一面にあったり、週末には『ひとつのこころー王室からの頼りー』というコーナーが2面にわたって掲載される。(しかも人気コーナーランキング上位の常連)


そこへの私の写真や記事の掲載率が非情に高く、そして私の写真や記事にアルが共にのっている確率も高かった。それ故、私の一番の仲良し=アルフレッドというのが国民共通の認識だったらしい。あながち間違ってはいないが、ちゃんと他にも友達はいたのよ!!


彼がパートナーとなってから、私は熱を出さなくなった。要因は一重に彼のエスコートが上手だった事だ。挨拶に行ったり、挨拶を受けたり、子ども達と会話をして過ごして空いた時間にアルと踊ったり、話したり。アルといれば殿方達に無駄に話しかけられたり、ダンスに誘われたりしなかったから楽だった。おそらくかなり気遣ってくれていたのだろう。


学校でもよく会話して、パーティーでもパートナーで。そんな彼とはいわゆる『お年頃』になると『相思相愛』とか『理想のカップル』とか騒がれるようになったし、


「ティーナ様はいつご結婚なさるのかな?」


「そりゃアルフレッド殿下がお仕事をまかされるようになったらだろう。」


「まあ、さすがに学生でご結婚はないだろうなあ。」


なんていう会話が普通にあったらしい。(当時の侍女達がキャッキャウフフしながら熱く語ってくれたのよね〜。)でも、私とアルがそういう関係になった事は無い。私たちの会話の内容と言ったらもっぱらどうしたら『発展した国』ではなく『美しい国』を作る事ができるか?という物だった。色気もへったくれもない清すぎる友人関係だったのだ。


それにアルは・・なんというか・・当代随一のプレイボーイとしてその名をとどろかせていたのだ。オトした女は数知れず、女達も一夜の安らぎを求めて彼にすがる。・・なんて趣味の悪い事だろう。


『いつまでそんなくだらない事やってるの?』ときくと彼は決まってこう答えた『彼女たちにとって俺は一種の薬さ。退屈な毎日に変化をもたらす劇薬。そして華やかな世界の中で夢から目覚めさせて現実を見させる精神安定剤。いや、成長促進剤かな?』・・下らなすぎる。せいぜい麻薬かなんかの間違えだろう。


でも、私はそんな彼が実は誰よりも真面目で努力家である事を知っているから長い間気のあう友人でいる事が出来たのだ。


そんな彼が今、かつて王女ティーナに見せていた顔でなく、エスターニャ公国からの使者としての顔をみせエルグランデ国王夫妻の前に姿を現した。





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