第2話
「おはようございます。王妃様。」
「おはよう。あら、もう陽が高いわ。」
「王妃様がこんな時間までお休みされるのは珍しいので心配しましたわ。」
絶対嘘でしょ。顔がにやけてんのよ。
「ありがとう。でも平気よ。」
完璧な余裕スマイルでお返しだ。
昨晩王様は当然のように私を抱いて行ったわけだが、どういうわけかいつもより力は強いし、長い。でも、激しさの中にも、ものすごく大事にされていると錯覚するような…なんだったんだ?
そして私はもう一つ、もの申したい。この体中の斑点はなんですか!?いや、いいんですけどね別に。けど!けど!位置は考えて欲しい。それともなにか?わざとなのか?そうなのか。自分でつっこんで妙に納得してしまった。いつも冷静な彼のことだ、おそらくわざとなのだろう。理由は知らないが。
「今日は一日部屋にいるしかないわね。」
「そうですね。」
なんて退屈なんだ・・思わずため息が出る。
「王妃様は王様に愛されておいでですわ。」
「どうしてため息なんてつかれるのですか?」
私の世話をしている2人の侍女、ユーリ、ミランダは純粋で無垢だ。
「退屈だと思っただけよ。それに、あなたたち、もっと殿方を見る目を養いなさい。私は決して愛されているわけではないのよ。」
「そんなことありませんわ!」
「王様はいつも王妃様にお優しいのに、どうしてそうお感じになるのでしょう?」
この1年、そばにいた彼女達は一途に私を慕って来る。王妃専属の侍女になる、という事はそれなりの家柄出身であったり、極めて優秀であったりと相当なエリートで、2人とも性格はバラバラだが、大切に育てられた事はすぐに分かる程純粋でかわいらしい。
「優しい事は必ずしも愛ではない。表面上の優しさなんて誰にでも注げるわ。あなた達が生涯のパートナーを選ぶ時は『私に優しい』なんて理由ではだめよ。欠点が見えているくらいの方がいいの。『優しくされている』という事が重要ではなく『大事にされている』という事が重要なのだから。陛下が私になさる事は『愛』ではなく『王妃への慈悲』なのよ。」
「そんな…」
「私は!私はそんな事は無いと思います。愛の形は人それぞれですよね?王妃様との関係には王様なりの愛が込められていると思います。」
なるほど。なかなかいい切り返しだわ。でも、私は…
「そうね。ありがとう。」
こんな風に私の事を思ってくれる彼女達がいれば私は『優秀な王妃』でいられる。
「さてと、今日は手紙の返事でも書きましょうか、子供達に。」
「はい。王妃様」
「あ、それとユーリ。」
「はい。」
「あなたはレイアについての情報を集めてきてちょうだい。もしかしたら彼女、寵妃になるかもしれないから。チャンスよ。」
「はい。」
こうして私の一日はまた動き出す。






