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王妃な王妃とツンドラ王と  作者: 神田 明理
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第1話

王妃とはどんな時代も、どこの国でも理不尽な存在であることが多々有ると私は考えている。


実際王妃であった母は王である父と『仲睦まじい夫婦』ではなかった。王妃は上流階級の家から選ばれ、後宮の管理を一手ににない、政治にも影響力を出して行く。その立場は女性達の憧れであるとともに悪の根源と成る事もあるのだ。しかしそれだけでは『女性一の権力者』という役職にすぎない。


多くの王は『側室』というものを多く抱え込む。その数がその王の力を誇示する物にもなるからだ。だがそれらは正妻からすればただの心労の数にすぎないと言える。寵妃が多ければ多い程もめごとも多くなるし、そして、やはり気分は良くないのだ。どんなに割り切っていても、どんなに贅沢が許されていても、やはり一抹の寂しさが残るのだ。


その辺の事を分かっているのだろうか、この男は。


「おい。王妃の番だぞ。」


…絶対にわかっていない。


「申し訳有りません。」


ちょっと物思いにふけってたんだから邪魔しないでよ。少し悩んでなさい。


「・・狙いどおりだ。お前なら必ずそこに置くと思った。」


「そうおっしゃると思ってました。」


くやしいからプランBに変更だ。


「そう来たか…」


目の前に座って私とボードゲームで対戦しているこの男はこのエルグランデ王国の若き王、私の夫だ。王位について5年で小国ながら国土を3倍に広げ、国力を高めた。エルグランデ王が歩いた場所は夏でも凍り、永遠に溶けることがない。と揶揄され、その功績と戦法から軍神やらツンドラ王などと呼ばれている。そしてそんな彼には今53の側室がいる。53だよ?53!私の苦労も一入である。


「ところで王様。」


「なんだ?」


「本日はどのようなご用件で?」


「なんだ?王が王妃の部屋に来るのに用件が必要なのか?」


なにかたくらんでいるのか?彼は若くして王に成っただけあって有能だ。その王が面白い拾い物をしたとでもいうような目を向けてきている。


「いいえ。ただ、私は王様に個人的な『お願い』をしておりますよね?」


「ああ。そうだな。」


「私を抱いていただくのは一向にかまいません。それは私の仕事でもありますから。ですが基本私を妻としてでなく・・・」


「『王妃という女性最高の権力者であり、直属の部下として見て下さい』だろう?百も承知だ。耳にタコが出来そうだよ。しかしよくも『私を抱いていただくのは一向にかまいません』とか素面で言えるな。他の女はもう少し恥じらいを見せるぞ?」


もっともらしい理由をつけてこの『お願い』したが、正直な所私は弱いから傷つきたくなかった。王妃であるからにはその職務を全うし、王を支えていかなくてはいけない。私の弱い心が何かに負けてしまうことを完全に防がなくてはならない。それが『お願い』の本当の理由である。余分に傷つかないために私は『優秀な王妃』として生きる。そう決めたのだ。そのことにこの王は気づいているのだろうか?


「それくらい当然です。仕事ですし、『私を抱いて』と上目使いで男にすり寄るのはテクニックのひとつでしてよ。」


「・・お前の『私を抱いて』も演技なのにそそるね。いつか本気でやらせて見たい。」


「ありがとうございます。」


ここは笑顔で感謝しておこう。絶対にやらないけど。


「で?」


「ちっ、忘れていなかったか。」


「当然です。」


「あー、あれだ、うん、」


「もしかしなくても53人目の側室のことですか?昨晩が初夜でしたね?お気に召しませんでしたか?」


「…ほんとによくやるよな、お前は」


また素面で秘め事に付いてざっくり聞いたことで王に笑われる。


「王様への配慮です。」


しかたないじゃないか。優秀な王妃に恥ずかしがる暇なんてないのだ。


「うーん。なんていうか、怒らせたのだ。で、どう謝るべきか相談にきた。」


「…なんで初日から怒らせるようなことに…って!王様が謝罪ですって!?」


この自尊心の高い自信家が?軍神非道冷酷ツンドラ王が?…ありえない…でも、ありえない事を起こさせる程その子に関心を持っているって事よね。これは…もしかしたら…


「なんだ?俺が謝罪するのが変か。」


「いいえ、王様、素晴らしいです。」


王妃的思考で行けばこれはチャンスだ。跡継ぎの予感だ。そもそもこの男、52人もの側室を持っていたくせに彼女達と夜を過ごしたのは各々初夜の一度のみという飽きっぽい。忌々しい、そしてめんどくさい王なのだ。


「お前ならどう謝って欲しい?」


「なんで私なのです?たしかレイアでしたね?何をしたのですか、王様?」


「うん…王妃はどんな人か?とか側室達はどんなかんじなのか?とか聞かれたから話して王妃の言う事には従っておくようにとか後宮の基本を話してやっていたら泣きだしてな…」


なるほど。色気もへったくれも無いわね。可哀想に、きまずかっただろう。でも手の早い王様がそんな色気の無い夜を送られるなんて…


「王様。原因はお分かりですか?」


「まあなんとなく。」


そうだ。この男は女の扱いに関してはプロ中のプロ。なにしろ王という権力者であり、頭の出来も良い。それになによりこの甘いマスクですよ、皆さん。端正なお顔立ちを突きつけて、嘘でも愛を囁けば大抵の女性はイチコロというわけなのです。そんなこんなで多くの側室、並びに後宮でお暮らしになっている女官の多くの方々が彼に夢中というわけです。


「まあ多分彼女は気まずかったんですよ。で、でも勇気を出して王様に語りかけられたのです。しかし、それで王様は生真面目に答えられて色気もへったくれも無くなってしまった。彼女は王様にロマンチックに抱かれたかったわけです。側室になれたんですしね。こんなところでしょう。あ、それから非道冷酷王と名高い王様に基本を丁寧に話されたりしたら逆に怒らせたと思うかもしれませんよ。お分かりだとは思いますが。」


「そんなところだろう。」


「問題は謝罪方法ですね。宴を開きます?『歓迎』ということで。私名義にして『実は王様のご配慮よ』と言う手もありますが・・かえって困らせるかもしれませんね。」


「…あれは宴とかを好むタイプじゃない。」


さすがだ。なんということでしょう。女性の性質を一晩で分析してきている。ここは信頼に値しますね。


「そうですか・・じゃあ行ってお花でも差し上げたらどうです?王様のお顔は右に出る者はいない程整っていらっしゃいます。自覚ありますでしょう?いい武器です。一番気持ちが伝わるのはこの方法じゃないですか?昨晩が初夜の新参者ですし。」


「…そうだな。そうしよう。」


彼は一瞬何か考えてからそう答えた。


そして私も考えた。…あれ?確かレイアって、11歳じゃなかったか!?あれ!?この男、まさかのロリコン!?


だとすると、本当にロリコンなのか、それとも子供にしか見えなかったのか?…微妙だ。









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