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勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている  作者: まる
【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている⑤ ~破滅の三大魔獣神~】

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94/342

【第十六章】 399年

9/22 誤字修正

12/10 台詞部分以外の「」を『』に統一

   ~another point of view~



 ラミアス・レイヴァースがグランフェルト王国に到着したのは国を出て数日が経ってからのことだった。

 背に負った長く太い重量感のある大剣、四肢と胸部に纏った深紫色の鎧、そして背まで伸びた長い髪と鋭い目付きが特徴的な女戦士である。

 二十一歳の若さで帝国騎士団二番隊隊長を務め、その非情なまでの戦いぶりから付いた【紅霖染華(クリムゾン・カローラ)】という異名を知らぬ者は国内にはまずいない。

 そんなレイヴァースがサントゥアリオ共和国を離れた理由はただ一つ。

 団長エリオット・クリストフより言い渡されたとある指令だ。

 それは帝国騎士団にとって魔王軍との協定における最後の任務であり、問うまでもなく最重要の指令であった。

 それにも関わらず予定より大幅に遅れての到着となったことにレイヴァースは大層苛立ちながらグランフェルトへと足を踏み入れることとなる。

 サントゥアリオ共和国では移動系のマジック・アイテムの入手が困難であるがゆえに航路を進む以外に手段がないことに加え、脅して乗っ取った異国の商船の操舵手がグランフェルトへの航路に精通しておらず、途中時化に見舞われた不運もあって必要以上に時間を浪費してしまっていた。

 誰よりも団長クリストフを崇拝しているレイヴァースにとって、例えやむを得ない事情があったとしても自身が無能であると評される可能性がある結果を残してしまうことは何よりも受け入れがたいことなのだ。

 船が国土に近付くなり唯一生かしていた操舵手も斬り捨て、不審船とでも思われたのかすぐに駆けつけてきたグランフェルトの警備兵をも皆殺しにして目的地へ向かって奪い取った馬を走らせる。

 その道中、レイヴァースに冷静さを取り戻させたのは予期せぬ来訪者の存在だった。

 海沿いをしばらく走ることしばらく。

 極力不要な戦闘は避けなければ違法入国が発覚しかねないと大きな港を正面から通過することをやめて迂回しようとした時、目に入ったのは帆にシルクレア王国の国章がでかでかと描かれた巨大帆船の列だった。

 その数は六。

 それが敵の連合軍が合流したことを意味していることに気付かぬはずもなかった。

 まず間違いなくラブロック・クロンヴァールをはじめとする主戦力達がこの国に来ているだろう。

 あの規模と数ではまた数千人単位の兵力を抱えていることは間違いない。

 だとすれば出会してしまえば任務どころの話ではなくなる。

 それらの推測の下、レイヴァースは任務遂行のために万全を期さなければとようやく頭を切り換える。

 慎重に、出来る限り人目を避けることの出来るペースと経路を維持しながら着実に目的地へと進んでいった結果、ようやく目的地に到着した頃には昼時を大きく回っていた。

 とある町のすぐそばにある森の中。

 レイヴァースの目的はその先にある。

 到底見通しが良いとは言えない風景を前に襲撃の可能性を考慮し騎乗での戦闘が不得意なレイヴァースは馬から降り、己の足で森の奥へと進んでいった。

「…………」

 気配を押さえつつ、その鋭い目を彷徨わせてみるが人影も魔物の姿もない。

 どこかに小屋があるという情報こそ持っていたが、道中手に入れた地図には小屋はどころかこの森そのものが載っていないためこの先は役に立たない。

 だだっ広いというわけではないが、少し時間が掛かりそうだ。

 そんな風にレイヴァースが自身の状況を把握し、ひとまず真っ直ぐと進むことを決めてすぐのことだった。

 突如襲った嫌な感覚が足を止める。

 理解出来たのはまるで警告であるかの様な正体不明の殺気と威圧感が自身に向けられていることだけだ。

 ほとんど魔法力を持っていないレイヴァースはこの地域一帯に張られている結界に気付いていない。

 同様に、その結界によって魔族が侵入することが出来ず、それゆえに魔王軍が帝国騎士団の手を借りようとしていることもまた、レイヴァースはおろかエリオット・クリストフすらも知らない事実であった。

 しかし、一瞬の躊躇こそあったもののレイヴァースは先に進むことを選択する。

 例え如何なる理由であろうとも、どれだけ危険であっても、このまま引き返すという選択肢だけはあり得ないのだ。

 より慎重に、より警戒しながら、ゆっくりと、静かに奥へ奥へと歩くことしばらく、前方に小さな小屋が見えた。

 未だ実態の見えぬ謎の警告じみた殺意が直ちに乗り込むことを自重させ、レイヴァースは近くの木を壁代わりに小屋のある方向から姿が見えないように体を隠すと懐から取り出した遠眼鏡で小屋の様子を探った。

 小さな窓の向こうに複数の人影が見える。

 距離があるせいで顔をはっきりと判別するには至らなかったが、その風貌からラブロック・クロンヴァールとセミリア・クルイードが含まれていることが確かであると把握した。

 考え無しに突入しようとしていれば不味い事態を引き起こしていたらしい。

 と、レイヴァースは安堵の息を漏らしたが、ひとまず連中が居なくなるまで動くことは出来なさそうだと方針を決めると同時に当然の様に浮かんだ疑問の答えを探した。

 なぜ奴等がここに居るというのか。

 シルクレアの一団がこの国に来ていることは分かっていたが、この場所に何の用があるというのか。

 まさかこちらの動きまで漏れているとは考えにくいが……であればこそ不可解極まりない。

 どうにも納得のいく答えを得ることのないまま、万が一にも察知されない様に気配を殺し、ただただ息を潜めて敵が去る時を待った。

 やがて小屋から出てきたラブロック・クロンヴァールを始めとする戦士の一団を確認すると、確実に勘付かれることのない距離まで遠ざかったところでようやく目的地へと再び足を進める。

 視線を送ればそれだけで気付かれる可能性が高いため直接目を向けることは出来なかったが、視界の端に捉えた後ろ姿からあのロスキー・セラムだと思しき人物が居ることが分かった。

 ラブロック・クロンヴァールが何を企んでいるかは知らぬが、こちらものんびりしている暇は無さそうだ。

 予想以上に待つ時間が長かったことに苛立つ気持ちを再燃させつつ、そんなことを考えながら小さな小屋の前に到達するなりレイヴァースは躊躇いなく扉を開いて押し入っていく。

 強い気配を感じなかったその予想通り、中に居たのはたった一人の老人だけだった。

 いかにも魔法使いといったローブと帽子を身に付けた白髪白髭の小柄な老人だ。


「ほっほっほ。よく来たのうお嬢さん。茶でも振る舞いたいところじゃが、いかがかの」


 独りでに扉が閉まると老人は小さな椅子に座ったまま、にこやかにそんなことを言った。

 警戒心どころか驚きの感情を抱いている様子すら微塵もない。

 その姿と言葉に不快感を抱いたレイヴァースは挑発的に言葉を返した。

「フン、茶を持てなしてもらうために来たとでも思っているのか? ボケた振りの下手な老人なことだ」

「長らく待たせてしまったお詫びのつもりじゃったが、お気に召さぬというなら無理に勧めはせんよ」

「待たせた、だと? 貴様、私がここに来ていることを知っていたのか」

「この辺りにはわしが張った結界がある、侵入者に気付かぬ道理はない。先程までここに居た者達と出会してしまうと余計な血が流れかねぬと思うて警告してやったのじゃが、余計なお世話じゃったかの」

「あれは貴様の仕業だったのか……だが、その様なことはどうでもいい。エルワーズ・ノスルクで間違いないな。ならば私が誰で、何をしに来たかも分かっているだろう」

「誰かと問われたならば、帝国騎士団の誰かであることぐらいしか知らぬよ。目を見て分かるという話ではなく、今この場に居ることから推測したに過ぎぬがの。そして、何をしに来たのかという問いについては間違いなくわしの命を奪いに来たのじゃろう」

「それが分かっていて奴等を帰したというつもりか。酔狂な老いぼれめ」

「言うたじゃろう、わしは余計な血が流れることを望まぬ。出来るならばあの子にはせめて今回だけでも戦いから外れて欲しかったが、どうにも本人達がそれを望んでおらぬ様なのでの」

「……あの子?」

 レイヴァースは理解不能な説明に顔を顰める。

 しかし、ノスルクは構わず話を続けた。

「ガイアが殺された時点でわしの命を奪いに来る者が現れることは分かっておった。この結界は魔族を通さぬ、ゆえに人間であるお主等に託したのじゃろう。魔王軍の誰かはの」

「大層事情通らしいが、自慢げにひけらかす程のことでもない。我々にとって奴等の目論みなど考えるに値しない」

「ならば、目的通りわしの命を奪っていくがよかろう」

「言われずともそうさせてもらう」

 レイヴァースは背中から剣を抜くと、ノスルクの体へと向けた。

 冷酷無比な目でその小さな全身を見下ろす。

「一時代を築いた英雄なのだろう。言い残すことがあるならば、聞く気はないが勝手に吐き捨てる時間ぐらいはくれてやる」

「お主が心を痛める必要は無い。随分と前からわしも身の引き際じゃと思うておった。死を受け入れる時が来たと感じておった。わしの命を奪いに来る誰かが現れた時、わしはそれを受け入れるつもりでいた。あまりにも長く生きたが、後悔はない。託せるものは全て託した。意志を、信念を、技術を、知識を、そしてこの世界の未来を。天鳳とは時代の変わり目に現れる魔獣神じゃ。その言葉の通り、今まさに君達のしている戦争がそれをもたらそうとしておる。あらゆる戦いに身を興じ、様々な冒険をしてきた自負はある。それなりに名声も得てきたじゃろう。しかし、麒麟も老いては駑馬に劣るというもの。老兵は去るのみ、じゃ。新たな時代にわしの居場所など必要ない。今という時代は今を生きる若人達のものじゃよ。とまあ、それらしい言い訳を重ねてしまったが、本音を言うとただ疲れたのかもしれぬのう。傍観者であり続けることに、わしよりも後に生まれ落ちた知人友人達がわしよりも先に逝ってしまうのを見送ることに。この先も同じ様に生きていくには、わしはあまりにも衰えてしまった。精神的にも肉体的にもじゃ。亡き盟友の元に行けるのならば、それもいいじゃろう。あの子達の戦いを見届けてやれぬことが唯一の心残りじゃが、それもまた巡り合わせというものじゃ。願わくば、君が誰かの命を奪うのはこれで最後にして欲しいとは思っておるがの」

 命乞いをするでもなく、恐れるでも、取り乱すでもなく、ただにこやかなままそう言ったノスルクにレイヴァースは一瞬言葉を失ったものの、その言葉に慈悲を抱く程の思慮深さを持ち合わせてはいなかった。

 最後の最後まで何をわけの分からないことを言っているのか。

 老人というのはどの国の者でもご高説を語りたがるものらしい。

 頭に浮かぶのはその程度の感想だけだった。

 そしてそのまま、その小さな空間は最後の刻を迎える。


「言いたいことはそれだけか? ならば、安心して死んでゆけ」


 レイヴァースは殺意剥き出しの目で言うと、今度こそ一片の躊躇いもなく切っ先をノスルクへ向けたまま制止していた剣を勢いよく突き出した。

 太く、長いその剣は胸部に真っ直ぐと突き刺さり、その体を貫通する。

 腕に伝わる確かな手応えと心臓を貫いた感触を得て、レイヴァースは乱暴に剣を抜き去った。

「死に行く者に誰かや何かを憂う資格などありはしない。貴様が望み、託した未来も実現などせぬ。我等が野望のために散りゆく多くの命の中のたかだか一つとして、無意味に死んでいろ」

 吐き捨てる様に言うと、剣を収めたレイヴァースは背を向ける。

 その言葉は既にノスルクには届いていない。

 心臓を貫かれ、衣服と床を血で染めながらピクリとも動くことはなかった。

 こうしてレイヴァースが中に入って来たときと同じく椅子に座り、にこやかな表情のまま、眠るように目を閉じ、長きに渡って一国家と世界を支えた稀代の魔道師は絶命した。

 この世に生を受けて三百九十九年。

 数日後に控えた四百回目の生誕の日を待つことなく、不老の肉体を持つ男エルワーズ・ノスルクはこの世を去った。


          ○


 グランフェルト王国を離れたレイヴァースは真っ直ぐに根城であるサントゥアリオ共和国最北部にあるグリーナへと戻った。

 商人を襲ってエレマージ・リングを入手したことで帰国に時間を要することもなく、拠点に戻るとすぐに直属の部下に自身の不在の間の報告をさせる。

 スラス襲撃に関する報告がほとんどであったが、そのうちの一つがレイヴァースを激怒させた。


「すぐにあの役立たず共を晩餐室に集めろ!」


 激高のあまり拳で壁を殴りつけながら怒鳴り声を響かせる。

 部下の女戦士は慌てて敬礼の体勢を取り、すぐに駆け出していった。

 その後ろ姿が見えなくなるとレイヴァース自身も早足で晩餐室へと向かう。

 騎士団本部の最深部にある晩餐室は食事に使われるものではなく、主に幹部会や作戦会議、報告事の際に招集場所として利用されている。

 建物全体が石造りの寂れた砦であることもあり大きな長テーブルと左右に並ぶ椅子、そして使われていない暖炉があるだけの殺風景なスペースだった。

 十分な発光石が確保出来ないせいで薄暗い室内がよりその印象を強めているが、個人的なスペースでもない部屋の内装を気にする者など誰一人として居ないこともあって長らくそんな状態のまま放置されている。

 晩餐室に最初に到着したレイヴァースは上座に立ち、他の幹部達の到着を待った。

 本来その席は団長のものだ。

 間違ってもレイヴァースが断りもなくその椅子に座ることはない。

 少しして、まず現れたのは五番隊隊長デバイン・ゲルトラウトだった。

 呼び出された理由を知らされていないゲルトラウトは開口一番それを問うたが、見るからに苛立っているレイヴァースはただ『話は揃った後だ。さっさと座れ』と辛辣に言い放つだけだったこともあり、やれやれと呆れながらも黙って席に着くことを選ぶ。

 無言の空間のまま少し時間を置いて、残る二人がようやく到着した。

 三番隊隊長フレデリック・ユリウス。そして同じく三番隊の副隊長ルイーザ・アリフレートの男女二人組だ。


「緊急の招集だと言ったはずだ。何をのんびりしている、この馬鹿共が」


 レイヴァースはギロリと二人を睨み付ける。

 対して、相変わらず顔の上半分が鉄仮面で覆われているユリウスの表情は他者からは推し量れないものがあったが、毎度の事ながら不必要に突っ掛かってくるレイヴァースの相手ほど鬱陶しいものはないと思う気持ちが無いわけがなかった。

「元よりお前の裁量で呼び出される筋合いなどない。いつ戻ったのかも知らないが、一体何の用だ」

 特に感情的になるでもなく、ユリウスは至極冷静に言葉を返す。

 普段であればレイヴァースの指示や命令に耳を傾けるような男ではない。

 暇だ暇だと纏わり付いて離れないアリフレートの相手から逃れる方法として呼び出しに応じることを口実としただけに過ぎなかった。

 しかし、そんな事情など知らないレイヴァースは当然の如くユリウスの態度に一層苛立ちを覚える。

 それでも逐一反応して罵声を浴びせていては話が進まないとそれを無視し、全体を見渡した。

 この場に居る幹部は四人。

 本来加わって然るべき五番隊副隊長であるハイアント・ブラックの姿は無い。

 僅かにもピオネロ民族の血を引いていないブラックをレイヴァースが団員として認めることは決してないと部下の隊員も知っているからだ。

「ここ数日の報告を聞いた。スラスの奇襲作戦以降団長が疲弊し寝たきりになっているそうだな……一体どういうことだ! 貴様等は一体何のためについて行った、このたわけ共が!」

 静かに語り出したはずのその言葉は、最終的に声を荒げ拳をテーブルに叩き付けるに至っていた。

 スラス攻防から数日が経過しているにも関わらずクリストフが行動不能状態にあることを知らなかったゲルトラウトも、アリフレートから聞いてはいたものの他人の体調になど微塵の興味もないユリウスも黙ったまま反応を示さない。

 結果的に日頃の個人的な感情もあって怒りの矛先はユリウスへと向けられる。

「何を黙っているのだ! 無意味な言い訳の一つも出ないかユリウス!」

「俺の知ったことではないな。そもそも俺は襲撃作戦に参加していない。ゆえに文句を言われる理由もない」

「なんだと?」

 その事実を知らなかったレイヴァースは訝しげな顔をしたが、ならばと視線の先をアリフレートへと変えた。

「役立たずは貴様か……アリフレート」

「ちょ、ちょっと待ってくださいッスよ! 確かにあたしは参加したッスけど、ちゃんと団長の指示通り撤退したんスから。むしろあたしが一番命令に忠実に行動したぐらいッスよ」

 その唸るような低い声にびびりながらもアリフレートは必死に弁明する。

 そこで口を挟んだのはゲルトラウトだった。

「レイヴァース、ちょいと落ち着け。わしにゃあ状況が全然分からんぞ。なんじゃ団長が寝たきりっちゅうのは、一体何があった」

「あたしらは先に撤退した以上直接見ることは出来なかったッスけど……その後の報告ではあの城塞が半分吹き飛んでたらしいッス」

「吹き飛んでたじゃと? 大爆殺(カルネージ)を使ったんか! なんじゃってそんな無茶をした。あれは体に負担が掛かり過ぎるけえ余程の事がない限り使えんちゅう話じゃろう」

「あたしに言われても分からないッスけど、エレナール・キアラが援軍に来たわけッスから……苦戦の末か、そうじゃなけりゃ」

「テンション上がって思わずっちゅうところか。理屈は分からんでもないが、どのみち足止め引き受ける言うたんは団長本人じゃ。わし等にゃどうしようもなかったじゃろう。今までのことを思い返しても体使わずに静養しちょれば数日で戻ってきとった。心配せんでも今日明日には戻ってきよるわい」

「楽観的な愚か者の意見など聞いてはおらん。私が指令を遂行次第魔王軍から対価を受け取る手筈なのだぞ。団長不在でどうするつもりだ」

「代わりを立てる他ないじゃろう。奴等に()うて、冥王龍を封印しちょるっちゅう何かしらを受け取るだけのことじゃ。団長にしか出来んちゅうもんでもなかろう」

「ならば私が行く。貴様等になど任せておけぬ」

「そりゃ却下じゃ。レイヴァース、わりゃ適任じゃないわい」

「なんだと!? ならば誰が適任だと言うのだ!」

「ユリウス、お前が行くべきじゃろう」

「ふざけるな。なぜ俺がそんな雑用を押し付けられねばならん」

「わし等隊長の中じゃお前が一番感情的にならんタイプじゃ。取引がある以上は無駄なゴタゴタは不味いじゃろう。アリフレート、念のためお前も同行せい」

「了解ッス! フレッド先輩と一緒なら例え火の中海の中ッスよ」

 一人で乗り気なアリフレートだったが、ユリウスのみならずレイヴァースまでもが納得出来ずに舌打ちを揃える。

 それでも、ゲルトラウトは反対意見は受け付けないと言わんばかりに言葉を続けた。

「襲撃作戦に参加せんかったんじゃ、それぐらいは引き受けるのが筋じゃろう。団長がおらんと何も出来んような集団が戦争に勝てるはずもない。違うか?」

 決して攻撃的な口調ではなかったが、ユリウスは例え拒否したところで引き下がらないだろうことを理解した。

 冥王龍を倒せばその後は好きにする。

 今となってはその約束だけが目指すところであり、そうなって初めて真の復讐劇が始まるのだと信じて疑わないユリウスは渋々それに従い魔王軍との密会の地に向かうことにした。

 受け取って、復活させて、始末する。

 それが誰かに従って行動する最後の行程だと、強く心に言い聞かせながら。


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