【第十三章】 残された時の中で
11/7 台詞部分以外の「」を『』に統一
すっかり日も落ちた。
雲一つ無い晴れた星空の下、当然の如く外灯など無いため僕達は焚き火の明かりのみが辺りを照らす木々に囲まれた自然の中でようやく夕食の時間を迎えていた。
久々の瞬間移動によってこれから数日を過ごす山に移動した僕達は三十分程道なき道を登り、目的地へと到着した。
なんでもここはジャックが大昔に修行のために使っていた場所らしく、寝泊まりするための小さな小屋があったり近くに川があったりと山籠もりにするのに困らない様な環境が多少なりとも整っているということだった。
残念ながら最後に使ったのが百年以上も前ということもあって小屋は風化と劣化でボロボロだったのだが、どうせ寝る時ぐらいしか使わないんだからと目を瞑ることにしたものの内部も埃だらけ蜘蛛の巣だらけという有様だったため今日は持参したハンモックを使って外で寝る流れになり、明日みんなが修行に精を出している間に僕が掃除しておくと申し出ておいた。
その他で言えば食事の用意や洗濯などは僕の担当ということに決まっている。
一緒に剣を振り回したりするわけでもないので当然といえば当然というべきか。
ついでに言えば食料の調達係はジャックに決まった。
僕に野生動物を捕獲する技術はないし、セミリアさんとサミュエルさんはそんな暇があったら修行に費やせというジャックのご指摘もあってそうなったわけだ。
せっかく持ってきた肉の塊は今まさに目の前で火に掛かっているので明日以降に残っている希望はゼロという、だったら食べてから来ることにしていれば荷物も減ったのでは? と思うこと山の如しな展開ではあるが『小動物や魚ぐらいなら捕るのに苦労はしないさ』と言われてしまえば文句の言葉も出ない。
色々と事情や背景はあれど、女三人と男一人という四人組なのに唯一の男である僕がただの身の回りの世話係に落ち着くあたり情けないやら悲しいやらという感じである。
まあ……そんな話をし始めてしまうと初めてこの世界に来た時からずっとそんな感じなんだけども。
「そろそろイケそうだな」
そんな僕の心の溜息など知らないジャックは網で焼いている肉オンリーのバーベキューみたいな状態の鉄製の串を一つ手に取ると、そのまま口に運んだ。
ちなみにジャックは僕が肉を切ったりしている内から一人で勝手に酒盛りを始めていたためテンションも高いし無駄に声も大きくなっている。
サミュエルさんが露骨にウザそうにしているし、主に下ネタ中心に全力で絡んでくるので非常に面倒くさいのだが、本人が全く気にしていないのでそれが人間版ジャックなのだと受け入れる他ない。
「こりゃうめえ! 料理も出来て気も効くとくりゃ相棒は良い嫁になるぜきっと」
「またベタなネタを……」
この世界でもそうなのかは知らないけども。
というか、肉を切って塩胡椒で味付けして焼いただけなので料理の腕なんて大して関係無い気しかしない。
美味しいのは単に素材の問題であり、奮発して(というよりも店に着いて数秒で選ぶのが面倒になったらしいジャックの『もうこれでいいか』という一言によるものだが)高い肉を買ったがゆえの結果と言えるだろう。
そんな自由極まりないジャックに釣られる様に僕達もそれぞれ串に手を伸ばし、椅子も机も無い状態で地べたに座り火を囲んでいるという、なんともアウトドアな食事が始まった。
豪快に酒と肉を交互に口に運ぶジャックや言葉を発せず黙々と食べているサミュエルさんを見ていると、ただ一人僕に対してお礼やいただきますといった言葉をくれるセミリアさんが唯一の良心という感じである。
完全に余談ではあるが、合間合間に食べつつ肉を追加したり水を注いで回ったりということをしていると日頃の母親の大変さがよく分かる。
鍋物だったり鉄板を使うメニューの時はいつも母さんが全部やっているけど、黙って火が通るのを待って食べているだけの僕は楽させてもらってたんだなぁ、としみじみ思った。今思うべきことなのかどうかは悩ましいところだけども……。
「はい、ジャック」
と、ササッと用意した皿に盛った野菜をジャックに手渡した。
肉だけではバランスが悪いだろうと買ってきたソプラというこの世界の葉物の野菜で、僕の認識でいうところの小松菜とか青梗菜に近い食物である。
水で洗って、ざっくり大雑把に千切って買ってきたタレをかけただけのものだけど、食べないよりは健康的にもいくらかいいだろう。
他の二人にも配って元の位置に戻ると、ジャックだけがフォークを手に取らずにその皿を冷めた目で見つめていた。
一目で野菜が好きではないことが分かる、がっかりした様な顔だった。
「一人一皿はノルマだからね」
「おいおい相棒よ、アタシは何も言ってねえぜ」
「いや、あからさまにテンション下がってたし」
「どうにも野菜ってのは好きになれねえんだよ。ガキの頃、食いもんが取れなくて師匠に無理矢理雑草食わされたのを思い出しちまう」
「それは雑草じゃないし、ちゃんと味付けもしてるから大丈夫だって」
というか、どんな師匠だ。
「よしセリムス、アタシの分もやる。おめえは胸も小さいからもっと食うべきだ」
「ウザい、死ね」
ジャックは皿ごと差し出たものの、サミュエルさんは辛辣な言葉と共に体を反らして受け取りを拒否した。
ならばとセミリアさんの方へ視線を向けるジャックだったが、
「アネット様、せっかくコウヘイが用意してくれたのです。口にせずに処理しようというのは関心出来ません」
と、きっぱり先制でお断りされるのだった。
すかさず今度は僕に助けを求める視線を送ってくるジャックの要望を丁重にお断りし、かといって嫌いな物を無理矢理食べさせるのも気の毒なので『肉と一緒に食べればいくらか食べやすくなるから』という子供の好き嫌い対策みたいな提案をし、それでも駄目なら残していいからと言う条件でようやく、渋々ながらとはいえ野菜に手を付ける現在二十四歳の大人っぽいのか子供っぽいのか分からない相棒の姿は微笑ましいやら呆れてしまうやらといった感じだ。
結局、ブツブツと文句を言いつつ、加えて『勿体ない肉の使い方だぜ』とか『口移しで食べさせてくれたら全部食う』などと謎の理論を口にしながらも完食したジャックを無理矢理褒めさせられたところで夕食の時間も終了。
その後はこれから食後は毎回行う段取りらしい瞑想を四人揃ってすることに。
横一列に並んで座り、座禅(という言葉はこの世界には無いだろうが)を組み、目を瞑ってひたすら無言の空間で時間が過ぎるのを待つ。そんなプログラムだ。
ジャック曰く、
「余計なことは考えずに集中しろ。目以外から得ることが出来る情報は何か。音でも気配でも匂いでも何でもいい、より明確に把握しようとするんだ」
ということで、例の『気』を操るためには重要なプロセスのようだ。
食後ということもあったり、静かな空間で目を瞑っているせいで何度もウトウトしてしまった僕だったが『相棒はともかく、二人は寝たらブン殴って起こすからな』と、最初にジャックが言っていたこともあって途中からは眠気と戦っていたことは内緒の話としておこう。
気を操るようになどなれるわけもない僕はついでに付き合っているだけとはいえ、二人の邪魔をするわけにはいかないのである意味では激闘だったと言える。
そんな瞑想タイムも小一時間程で終わり、僕がすぐそばにある川で食器の洗い物をしている間にセミリアさんとジャックが今日の寝床であるハンモックの設置を済ませ、順番に入浴をして就寝タイムという流れに。
入浴といってもその川で頭や体を洗うというだけなのでのんびり出来るわけでもなければ疲れを癒せる感じでもなく、むしろ夜の山奥で水を浴びる行為は寒くて仕方がなかったが、他三人にそんな様子がないので泣き言を口にするわけにもいかず。
半ば凍えながらさっさと上がってきた僕とは違い、先に行ったセミリアさんやサミュエルさんが平気そうにしていたのは肉体の強さが関係しているのだろうか。
そんなことを考えつつ、自分用のハンモックに身を預けてしばし他愛もない話をし、やがて焚き火は灯したまま、明日からの過酷な修行に備えてサッサと寝るぞというジャックの言葉を最後に会話がなくなる。
木に吊したハンモックで眠るということもまた、僕にとっては初めての体験だ。
この世界ならではの理由も含め危険は無いのだろうかと心配になる気持ちは勿論あったが、
「魔物だろうが猪だろうが襲ってくる前にアタシがどうにかしてやっから安心して寝な」
というジャックの言葉を信じ、眠気の次は寒さと戦いながら一枚の毛布にくるまって意識が遠のく時を待つのだった。
○
翌日からの三日間はまさに特訓の日々と化した。
ほとんど参加していない僕から見ても過酷極まりないジャックのスパルタ具合とそれをこなしていく二人の姿は近い未来に待ち受ける戦いの厳しさと、それに対する時間の無さ、そしてこの世界で名を馳せる戦士たる所以を改めて認識させられたと言っても過言ではないだろう。
それ程に一見無茶な修行の数々を二人は文句一つ言わずにやり遂げた。
そんな二人と、ついでに僕の山籠もりの日々を今ここに語ろうと思う。
まず朝は霧掛かってか辺りがうっすら白い状態の早朝にジャックに起こされるところから始まる。
前夜にあれだけお酒を飲んでおいて一番に目を覚ますあたり不思議なものだと思ったりしたのだが、曰く『師匠を言われた通りの時間帯に起こさないとなげえ説教から一日が始まった上に二倍の修行をさせられてたからな。自然と起きようと思った時間に目が覚めるようになった』とのことだった。
そんな理由でそんな習性を身に付けたことにも驚きだが、至るところでジャックの人間形成を左右しすぎだろうその師匠……という感じである。
それはさておき、起きて顔を洗った後は朝食など後回しでさっそく修行に入る。
まずは体力向上のためのメニューからということで、少し山を下り麓から大体五百メートル程の位置まで誘導されると、ジャックは小さなビー玉のようなガラス玉を取り出し僕達に見せた。
その数は三。
赤、黄色、緑とそれぞれが異なった色をしている。
「ここから真っ直ぐ下りていった所にこの玉をグラスに入れた状態で置いてある。一色につき三十個ずつだ。ここから山を下りて、自分の色の玉を一個取ってまた登ってくる。三十個全ての玉をここまで運べば終わりだ。勿論走ってな」
というジャックの説明には愕然とする他ないが、自分も参加すると言った本人も含め誰一人無茶だと思っている様子がないことも驚きである。
片道約五百メートル、つまりは往復一キロということだ。
それすなわち、今から三十キロ山道を走れと言われているのになぜ平気そうどころか『そうでなくては修行の甲斐もない』とでも思っていそうな表情を浮かべることが出来るというのか。
それが二人、いや、三人の意志の強さであり覚悟の強さなのだろうけど、僕の様な何の変哲もない人間には既にその超人具合について行けそうにもないという気持ちは卑屈さによるものではなく事実に基づいた感想と言って然るべきだろう。
なぜなら、三人と一緒に僕も山道の往復に参加させてもらったのだが、限界まで頑張ってなお六往復目であえなく体力の限界を迎えてギブアップすることになったからだ。
陸上部長距離経験者の僕でそのざまだというのに、僕がヘバって休憩している間も三人は黙々と走り続けているどころか先頭を走るジャックには途中で周回遅れにされているのだから立つ瀬もない。
今更この人達と張り合おうとすること自体が烏滸がましいと思うあまり情けないとか悔しいなんて感情も湧かない自分の性格には若干悲しいものがあるが、ならばせめて本来の役割を果たさなければとジャックの許可を得て僕は朝食の準備をすることに。
一人で大丈夫かと心配されたりもしたんだけど、さすがに怖いから待っているとは言いたくなかったので少しの不安を胸に一人小屋まで戻った次第である。
といっても、その不安は主に野生動物などに対してのものであり、魔物が襲い来ることはそうそう無いだろうという言葉の信憑性は定かではないが僕の心配ばかりするジャックが『大丈夫だとは思うが』と前置きしていたので運が悪くなければ大丈夫だろう。
怖くないとは言わなけど、足を引っ張ったり邪魔をするわけにはいかないという気持ちの方が強い今となっては泣き言など口にしたくない。
盾もあるし、警戒していれば逃げるぐらいのことは出来るだろうしジャック達に頼るのはそうなってからでも遅くはない。
よく考えると体力を使い果たしたばかりの人間の言い分ではない気もするが、そんな僕なりの見栄というか意地というかといった行動が裏目に出ることもなく、一人寂しく四人分のパンを焼いてジャムやチョコレートクリームを塗ったりして待つこと三十分程で最初に三十往復を終えたジャックが帰ってきた。
同時にスタートしてから一時間も経っていないというのにもう三十キロを走りきったのかと再びドン引きしたのは言うまでもない。
「やっぱ病み上がりの体にゃ堪えるな」
と、肩で息をしていたとはいえ六往復後の僕程ヘバっている感じでもないのがよりその気持ちを加速させた。
終わった人からご飯を食べられるというスパルタシステムも中々に過酷なものがあるが、そんな気持ちすらも結局遅れること十五分そこらで帰ってきた二人を見てあっさりと消え去る羽目に。
そんな塩梅で順々に朝食を済ませ(勿論僕は二人が戻ってくるまで待ってから食べた)、その後は休憩時間を挟むこともなくすぐさま次なるメニューへと移行する。
二つめのプログラムは筋力強化だ。
これもまたどこの格闘漫画だと言いたくなる様な内容で、ジャックは風呂桶の巨大版とでも言うのか、持ち手の付いた木製の大きな桶を四つ持ってきたかと思うと、そこにたっぷりの水を二人に汲みに行かせた。
桶自体は小屋の中に合った物で、昨日見た時には何故こんな物があるんだろうと疑問に思ってはいたのだけど、聞けば僕達のサントゥアリオから帰るという連絡をノスルクさんが受け取った時点で先に用意して運んでいたのだとか。
その準備の良さには感心すべきなのだろうが、だったらその際に中の掃除もしておけば外で寝ることにはならなかったんじゃないの? という二つ目の疑問は『アタシが掃除とか出来そうな女に見えるか?』という言葉に納得せざるを得ないので何も言うまい。
そして、その水を汲んだ桶で何をするのかについてだけど、何のことはない。ただ両手に水の入った桶を持ち、腕を水平に保ったまま体勢を維持し続けるだけだ。
その『だけ』というのが異常なんだけどね……ほとんどポリバケツみたいな大きさだよ。一個五十キロぐらいあるよこれ。僕なんて一個ですら両手を使って少し浮かせるだけで精一杯だったよ。
それを片手で、それも二つを同時に持った状態で腕を平行にしたままの体勢を維持し続けるって、女の子らしいあの細い腕のどこにそんな筋肉があるのやらって感じだ。
いささか心配になる僕の不安も半分的中しているのか、さすがの二人も平気そうな顔をしてはいない。
ただでさえ山道を走り続けた後なのだ、腕力のみならず体力的にキツい部分もあるだろう。
それでも、端正な顔立ちを真剣かつ踏ん張り、耐える様な顔へと変えて二人はただ無言で体勢を維持し続けている。
揃って『平気だ』『問題ない』と言われてしまっては邪魔をしているみたいになるのも嫌なので口を挟むことも憚られ、それとなくジャックに視線を送ってみたところで、
「このぐれえでへこたれるようじゃ勇者なんざ返上だ。心配しなくてもこいつらだってそこまでヤワじゃねえさ」
と、鬼教官モードで妥協や甘えは一切許す気がないことが窺える返答をもらっては引き下がるほかなく。
こうなっては僕にこのメニューに付き合う腕力も体力も無いので少し二人の元を離れて朝食に使った食器の洗い物と洗濯をすることに。
川が小屋から五十メートル程の位置にあるということもあって身の危険に対する心配は多少なり軽減されていると言ってもいいだろう。
そんな中一人ゴシゴシと食器を洗ったりバシャバシャとみんなの衣服を洗ったりしていたのだが、食器はともかくとして、女性陣三人の下着をも素手で洗う僕というのは果たして絵的にどうなのだろうかという葛藤が半端ない。
変なことを考えるんじゃないぞと自分に言い聞かせ、煩悩退散を心で唱えながら何も気にしていない風を装ってどうにか洗い物を終わらせ、小屋に戻って木と木に結んだ紐に洗濯物を干したところでそれも完了。
その後もセミリアさんとサミュエルさんはしばらく拷問レベルの筋力トレーニングを続けていたが、トータルで三十分を超えたあたりでようやくジャックの終了の合図が出た。
少しの休憩を挟み、その間サミュエルさんの命によって腕や腰をマッサージさせられ、なぜか筋力トレーニングに参加していないジャックにもマッサージをねだられ、何の知識も無い僕のほぐす様に揉むだけのそれにどの程度の効果があるのかは定かではないが、二人にだけというのも変な感じなのでセミリアさんにもマッサージを施したところで二人の勇者強化プログラムは次なる段階へと進む。
昼までの数時間はひたすら瞑想だ。
音、匂い、気配、全てを感じろ。感じようとしろ。感じれるようになれ。
そんな目的の下、ひたすら目を閉じたまま座禅を組んで神経を研ぎ澄ますことだけを考える時間を過ごし、昼を迎えたところでご飯(主に昼ご飯は洗濯や洗い物をしている間にジャックが捕っていた魚だった)を食べ、当然昼休みなど無いままに修行は続く。
午後からは実戦的な特訓で、もういい加減愕然とすることにも慣れてきそうな勢いだけど、やっぱりその光景は普通の、所謂一般的な修行のイメージとは大きく異なっていた。
出発前にジャックがそうして見せたように、目隠しをさせられたまま件の木の棒でジャックに攻撃されたり、小石を投げられてそれを避ける訓練だったりと無茶し過ぎだろうと言いたくなること山の如しな特訓のオンパレードだ。
勿論のことジャックが大事に至らない程度の力加減でやっていることは僕にも分かるし、ジャックの教えようとしていることを三日で少しでも身に付けようと思うのなら致し方ないのかもしれないけど、二日目以降は目隠しをしたまま組み手をさせられたり木の棒で打ち合いをさせられたりしながら生傷や打ち身を増やしていく二人を見ているとどうにも心配になってしまう。
あれだけの強さを持つ二人がより強くなるためにやっていることだし、そもそもジャックだって心を鬼にして臨んでいるわけだから『させられている』という表現自体がおかしな話であり間違った言い回しなんだろうけど……。
とまあ、色々と筋違いな心配や感想を抱きつつ、二人を見守ったり僕も稽古を付けてもらったりという時間は日が暮れてるまで続き、実戦稽古終了後は再び瞑想タイムとなる。
二時間程度の精神統一が終わると夕食を食べ(晩ご飯は昼同様ジャックが狩ってきた鴨だったり猪だったりを捌いて食べた。普通にグロかった)、二人に傷薬を飲ませたり体を冷やしてあげたりという処置を施し、その後はまた瞑想の時間を取り、それが終わってようやく入浴(といっても川だけど)、就寝というサイクルで一日が終わる。
先述の通り僕も見ているだけでは駄目だと柄にもなく発憤し、二人が組み手などをしていて手が空いている時間にジャックに稽古を付けてもらったりもした。
主に相手の攻撃を盾を使って防ぐ練習で、ジャックは真剣に僕に付き合ってくれたしアドバイスもしてもらえたのできっと今後の僕にとっても少しは意味のある時間となったと思う。
反射神経と動体視力を鍛えるためにジャックの攻撃を受け続けるという訓練は、真剣で同じ事をされるのがこの世界なのだと思うと改めて末恐ろしくもあったけど、
「攻撃する側になりうるなら予測や経験則でより効果的に防ぐことも出来るが、そうじゃねえ以上は同じ事をしろと言っても難しいだろう。が、相棒にゃ人より秀でた脳みそがある。考えたり対策することでどうにか経験不足や身体能力の差ぐれえはカバー出来ると信じてるぜ、アタシはよ」
なんて言われりゃ僕だって頑張るしかないというものだ。
ほんの三日頑張ったところで三人と肩を並べられる状態になったなんて都合の良い展開にはならなかったけど、僕を心配したり守ったりしながらでなければならない状態から少しでも離れられる様にという気持ちで残された猶予の中で出来ることはそれなりに出来たと思う。
そして。
そんな時間を三日間繰り返し、四日目の昼には僕達は山を離れることとなる。
前日の夜、シルクレア王国の面々が到着するという知らせを受け取ったことが理由だった。




