表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている  作者: まる
【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている③ ~ただ一人の反逆者~】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/342

【第四章】 冤罪

※3/21 誤字修正 僕→ボク


「なぜこうなった……」

 狭い部屋の中で、僕は一人呟いていた。

 知り合い一人おらず、心細い状況に今尚変化はない。

 いや、むしろ知らない人とはいえ目の前に誰かが居るようになっただけ大きな前進と言えるのかもしれない……間に鉄柵がなければ、の話だけど。

 城門に到着した僕はどうにかレコーダーによって知ってしまったことをクロンヴァールさんに伝えて貰おうとしたのだが、その最中に本当に城が爆発が起きてしまった。

 兵士の人達の様子からクロンヴァールさんは無事で済んだことは分かったが、そんなタイミングで爆弾がどうだなんて話をしていた僕はその場で犯人扱いされ取り押さえられてしまったのだった。

 どれだけ誤解だと主張しようとしても聞く耳を持ってもらえず、抵抗する腕力もない僕は有無を言わさず城の敷地内の地下にある牢屋に放り込まれてしまったというわけだ。


「陛下暗殺などとふざけた企みをしよって、その首が飛ぶ時に後悔するんだな」


 僕を連行してきた兵士は牢の出入り口に大きな錠をガチっと閉めると、吐き捨てる様に言って僕を睨み付けた。

 どこか、いや全てにおいてその発言がおかしいと感じるのは僕だけなのだろうか。それすらも分からず、僕は慌てて異議を申し立てる。

「ちょ、ちょっと待って下さい。首が飛ぶってどういうことですか? 僕は死刑になるとでも言うんですか?」

「そんなことも知らんのか、大逆罪を犯した者は斬首刑と決まっている。国と陛下に楯突こうとしたお前が招いたことだ、恥知らずの反逆者め」

「だから、それは誤解だとずっと言ってるじゃないですか」

「それを判断するのは俺ではない。じき陛下もやってくるだろう、せいぜい無意味な言い逃れをしているがいい」

 取り付く島もなく軽蔑と嫌悪の冷たい眼差しを向けると、僕の反応を待たずして兵士は出て行ってしまった。

 事情聴取どころか、話を聞く気すらないあの態度……容疑者とか、重要参考人とか、少なくともそういう扱いであると思っていたのにどうして有無を言わさず死刑になるというのか。

 取り調べをされるわけでもなく、何か証拠があるわけでもなく、問答無用で荷物を没収され、暴言を投げつけられた上に死刑になるってどういう法制度なんだ……日本ならむしろ向こうが罪に問われるような状況じゃないか。

『こうも不運が続くとは、お前さんの波瀾万丈もいい加減留まることをしらねえな』

 兵士がこの牢の並ぶ地下室から出て行くと、僕の持ち物の中で唯一手元に残った(装飾品という括りで言えば指輪もだが)ジャックようやく呆れた口ぶりで声を発した。

 数時間前からずっと同じことを言っている気がするけど、ジャックまで取り上げられていたら僕はもっと心細い思いをしていただろう。

 横暴な部分と緩慢な部分の線引きがよく分からないが、本当に助かる。

「今回ばかりはなるようになる、ではいられないっていうのは今までと全然違うけどね……死刑だなんてどう考えてもおかしいよ。僕はやってないし、そう言われるような証拠もないのに」

『確かにお前さんはやってねえ、それは俺だって分かってるさ。だが、不運にも疑われるだけの出来事があったのは確かだろうぜ。あのタイミングで爆発が起こりゃどの国だったところで相棒に疑いの目が向く』

「向くことに関しては仕方がないと思うけど、疑惑じゃなくて断定してるのがおかしいっていう話だよ。あの王様が来るって言ってたし、とにかく話を聞いて貰わないことにはどうにもならないって感じか」

『そうなるだろうな。しかし相棒よ、お前さんの無実が証明されなきゃ最終的には首が飛ぶぜ? そうなったらどうする』

「どうにかして逃げる」

『ほう、相棒らしからぬ大胆な思想だなそりゃ。俺は安心したぜ』

「……どこに安心出来る要素があったの? 無実の罪で言われるがままに殺されるなんて絶対無理だし、仕方ないでしょ。お尋ね者になったって死ぬよりはいいし、元居た世界に帰れば捕まることもないと思うしさ」

 暗殺未遂なんて汚名を着たままでいることにだって強い憤りがあるけど、どう思われようと死ぬよりはましだ。

 化け物と対峙した時とは違って死んじゃっても仕方がないかなぁなんて気持ちで受け入れる理由が一つもない。

 そんな、表だって取り乱すことがないだけで内心は相当切羽詰まっている僕だったが、ジャックは思いの外冷静らしく、それが僕の焦燥感を薄れさせた。

『もし、こうなってしまったからにはどうしようもないだなんて言いやがったら俺が喝を入れてやるところだったって話さ。実際に罪を犯していたとしても平然とどうやって切り抜けるかを考えている様な奴だぜ、俺の知る俺の相棒はよ』

「簡単に言ってくれるよ。でも、口で言って駄目ならそうするしかないってことはよく分かったよ。おかげでさ」

 取り敢えず焦っても何も解決しない。それは理解した。

 クロンヴァールさんが来て、直接話をすることが出来たならそれが弁明する唯一のチャンス。

 それでも強行に出るというならば、例え本当に法を犯すことになろうとも逃げ出す覚悟が今出来た。

「問題はその方法、か」

 この牢に窓は無い。

 四、五畳ほどの狭い部屋にベッドが一つあるだけだ。というか……トイレとかどうしたらいいんだろう、これ。

 いやいや、今はそんな心配はどうでもいいとして、一番望ましいのはセミリアさんかリュドヴィック王に手紙を送るなりして今の状況を伝えることだが、果たしてそれが許されるかどうか。

 日本に限らず僕達の世界なら囚人でも手紙を送ることは出来ると思うが、この扱いを見るにそれもどうかというところ。

 となると、勝手に逃げ出すという選択肢もいよいよ現実味を帯びてきそうではあるけど、その場合考えられる方法は三つ。

 一つ目、鍵を奪って出て行く。

 鍵は先程の兵士が腰にジャラジャラとぶら下げていたが、それを奪うのは当たり前のことながら簡単ではない。

 こっそりと盗むか力尽くで奪うかで成功率は変わってきそうだけど、どちらも相当な確実性のある方法を考えなければならないあたり一番難しい方法といっていだろう。

 二つ目、鍵を使わずに脱出する。

 これもこれで出来れば苦労しない話だし、それを言ってしまえば全部そうなんだけどそんなことを言っている暇はない。

 そんな無謀な方法にも種類があって、一つは知られないうちに鍵を使わずにここから脱出するというものだ。

 穴を掘るなり鍵を使わずに錠を開けるという映画さながらの方法がそれにあたる。

 もう一つはトイレなり、護送なりでここから出ることが出来た時に隙を突いて逃げるというもの。

 確実に一人以上が付き添いで傍に居るだろうことや、今はそうじゃないが出る時には手錠とかこの世界のイメージからすると足枷とか、それと同じ用途の物を身に着けさせられる可能性があることが懸念材料だし、成功したとしても武器を持った人間に追い掛けられるとうい途方も無い脱走劇になってしまうこと必至という残念な末路が待っている気しかしない作戦だ。

 それらの選択肢は出来るだけ見送りたいところであり、ならばどうするかというところで出てくるのが最後の方法。

 これも色々とリスクは伴うが、成功率というか現実味の話をすれば一番まともなパターンだろう。

 それは、第三者の協力によって逃がして貰うという方法だ。

 僕の話を信じてくれる誰か、或いは買収や取引、駆け引きの出来る相手を探し、秘密裏に交渉する。

 僕の事を知る人間の居ない状況な上に行動に制限がある以上やはり簡単でないが、壁や床に穴を掘るとか鍵を盗むよりはいくらか望みもある。

「さて……どうするか」

 それらの選択の中からそれぞれ実行するならどう段取るかをひたすらに思考する。

 周囲の牢にも外の廊下にも人は居ない静かな空間で、ジャックと二人思い付く限りの可能性を考慮し、ただただ議論を続けた。

 ジャックの使える魔法に何か役立つものは無いかと考えたりもしたが、ジャックが使えるのは低レベルの回復魔法と眠っている人間を起こすという用途不明な呪文ぐらいのものなのだそうだ。

 ジャックが人間の頃どこで何をしていたのかは勇者一行であったことぐらいしか聞いたことがないけど、覚えようとしてもセンスが無かったと自分で言っているのだからそういうことなのだろう。

 そして何よりも痛手なのはレコーダーが無罪の証明にならないということだった。

 ジャック曰く、あれを証拠として差し出したところで何の意味も為さないだろうということで、この世界に存在しないレコーダーを使って記録された音声を聞かせたり音を録音するところを見せてみたところで怪しい道具を持っているとしか認識されず、いくら僕の世界では説明すれば誰もが理解出来ることであっても、この世界では存在するはずのない道具は闇のアイテムだとか暗黒魔術だとかという風に思われてしまうだけに終わる確率がほぼ百に近いらしく、この世界でのそれは人を殺すことと同じぐらいの罪に問われるのだそうだ。

 最初からほぼ八方塞がりな状態でああすればこうなる、こうすればどうなると、話をすること十分か二十分か。

 ガチャリと、そんな音を立てて僕以外に人の居ない地下室の扉が開いた。

 入って来た人影は確かに見覚えのある、白と黒を基調とした騎士のような格好と真っ黒なマントを身に着け真っ赤な髪とセミリアさんと同じぐらいの恐ろしいほどに綺麗な顔をしている腰に剣を刺した凛々しい雰囲気が全身から出ている女性だった。

 フルネームは覚えていないが、あの人こそが二十六歳だかにしてこの国の王であるクロンヴァールさんだ。

 カツカツカツとブーツが地面を叩く音と共に僕の居る牢の前まで来て立ち止まると、クロンヴァールさんは地面に座る僕を見下ろした。

「お前か? 私に喧嘩を売ったのは」

 恐ろしい程に殺気に満ちた、射抜くような眼が僕を捕らえる。

 何よりも先に話を聞いてくださいと訴えるつもりだった僕は言葉を発することが出来ず、目を反らすことも出来ずにただ固まってしまっていた。

 一つ返す言葉を間違えばこの場で殺される。そう思わされるだけのゾクゾクとする恐怖が僕を包んでいたからだ。

 だが幸いなことに、蛇に睨まれた蛙とはこういう状況を指すのだと、生まれて初めて体感させられている状態の中で先に表情を変えたのはあちらの方だった。クロンヴァールさんは何かに思い至ったかのように目を細める。

「お前……どこかで見た顔だな。私と会った事があったか?」

「は、はい……一度だけ、サミットの時に」

 辛うじて答えると、クロンヴァールさんは合点がいったように顎に手を当てた。ようやくのこと恐ろしい顔も形を変えていく。

「あの時リュドヴィック王の傍に居た小僧か。だが、そのお前が何故こんなことをする。誰かの差し金か?」

「そうじゃないんです、全部誤解で……とにかく話を聞いてもらえないでしょうか」

「随分と必死じゃないか。己の首が懸かっているのだから当然といえば当然か。しかしまあ、そういうだけの理由もあるのだろう。あの時の詭弁に免じて話ぐらいは聞いてやる」

「き、詭弁?」

「あの時お前が私に向かって言った言葉のことだ。思い付きにしては随分と堂々としていたという印象だったことはよく覚えている」

「気付いて……いたんですか」

「私を舐めるな。お前一人ならまだしも、後ろであれだけ面食らった顔が並べば気付かぬわけがない」

「でも、だったら何故あの場で指摘しなかったんですか? そうすれば……」

「お前のクソ度胸に免じて、といったところだったような気がするが正直そのような小事などよく覚えてはいないな。例えそうだったとしても、それもその時の私のただの気まぐれだろう。私は優秀な人間が好きでな。詭弁とはいえ主を守ろうと咄嗟に、それでいてこの私に向かって平気で嘘を吐ける人間を私は初めて見た。というのも理由の一つだったと思うが、ハッキリ言えばそんな理由も元より必要のないことだ」

「必要が……ない」

「グランフェルトに支援をするかしないかなど、我が国にとっては大した問題ではないということだ。義理を欠いて我等を都合良く扱おうなどという態度を見せようものなら黙ってはおらんぞと牽制しただけのことでしかない」

 本当に大したことではなさそうにクロンヴァールさんは言う。

 まさかそんな背景があった上に、僕の作り話も見抜かれていたとは……器量や才覚もその肩書きに比例して相当に優れている人のようだ。

 そうでなければ世界一と言われる様々な物を背負う王になんてなれやしないということなんだろうか。

 なんて結論に愚直にも達してしまいそうになったが、もしかすると今から僕がしようとしている自己弁護に対して釘を刺しているのではなかろうかとすぐに考え直した。

 下らない嘘を吐けばどうなるか分かっているだろうな、なんて遠回しに言われたぐらいのことなら今の僕は気にも留めなかっただろう。

 天狗の化け物と向かい合った時と同じく、自分が死ぬことと何かを天秤に掛ければ怖いという意識なんて別の感情に押し出されてなくなる。

 その理屈を貫くと決めたばかりなのに、先程向けられた目が脳裏に過ぎるだけで天秤が釣り合ってしまっている自分がいた。

 ただ睨まれただけのことで秤に乗っているものが刑罰によって死することとこの人の機嫌を損ねることへと成り代わり、それらが等しい意味となってしまっている。そんな感じだ。

 もっとも、僕は無実である以上嘘を吐く意味も理由も無いし、話すべきではないことはあっても話せないことはない。

 出来る限りの事実を伝え、納得してもらう他ないのだが今僕が置かれている状況なのだ。

「えっと……僕の話を聞いてもらえるということでいいんでしょうか」

 三角座りのままだと失礼だと気付いて立ち上がると、鉄格子を挟んでクロンヴァールさんの正面に立つ。

 ここで拒否されようものなら僕の今後は早くも暗雲立ち込めそうだけど、先程の口振りからするに話ぐらいは聞いてもらえそうだ。

 そんな予想の通りクロンヴァールさんは、

「聞くだけは聞いてやる。その価値が無いと判断するまでに限ってだがな」

 不敵な笑みを浮かべて、そんな事を言った。

 ようやく事の次第を説明する機会を得た僕は一つ安堵の息を吐いて、小細工を捨てる。

「まず分かっていただきたいのはですね、僕がここに入っている理由は聞いたと思いますけどそれは誤解なんです。僕はその件をクロンヴァールさんに伝えようとしただけで……」

「お前の言うその件とは具体的に何を指す」

「店で食事をしていたら偶然別の席の会話を聞いてしまったんです。クロンヴァールさんを暗殺するだとか、鍛錬室? だか訓練室だかに爆弾を仕掛けたというような話を。それで、放っておくわけにはいかないと思って城に来たんです。だけど門番の人達に取り合ってもらえなくて、そんな事を言い合っている場合じゃないと思ってその話をしました。彼等が僕をどう思おうとも話を聞けば形はどうあれ貴女に伝わると思ったからです」

「なるほど。その話をしていた奴らの顔を見たのか?」

「いえ、残念ながら二人組の男であったということぐらいしか把握してないです」

「ふむ……お前が犯人であれば城に戻ってくる理由もないであろうことも含め、言い分として筋は通ってはいるとも思うが我々に取ってお前が不審人物であることに違いはないことも事実。そもそもお前はグランフェルトの人間だろう、いつからこの国にいた」

「来たのは今日の昼前です。本当はグランフェルト城に行かないといけなかったんですけど、なにぶんエレマージリングという物を初めて使ったもので……到着したのがどういうわけかこの町の一つ隣の町だったんです」

「報告にあった移動具による不法入国者というのもお前のことだったのか。この国に来た経験は?」

「一度もありません。自分がシルクレア王国にいると知ったのもその町でお城のある場所を聞いて、この町に来てお城を見てからだったぐらいで」

「いくら誤作動とはいえ知らない土地に移動したなどという話は聞いたことがない。が、お前の言いたいことは大体理解した。全てを鵜呑みにするわけにもいかないが、こちらにもまだ調べなければならないことがあるのだということもな」

「そ、それじゃあ……」

「勘違いはするなよ。間違ってもお前に囚われる理由が無いということにはならん。お前の言葉の真偽、責任問題を含めて一人加えた上で改めて話をするとしよう」

「一人……加える?」

「もう少し頭の切れる奴かと思っていたが、買い被りだったようだな。聖剣以外に誰がいるのだうつけ者が」

「聖剣……って、セミリアさんがここに来るんですか?」

「午後に到着する予定だと聞いているが、それを知らないということはさして関係性もなかったか? サミットの報告には共に遠征したとあったはずだが」

「リュドヴィック王の遣いで出掛けるとは聞いていたんですけど、どこに行くかまでは聞いていなかったもので……まさかこの国のことだとは」

「お前と聖剣の関係になど興味はないが、その時までは大人しくそこに居るんだな。飯ぐらいは届けさせてやる」

 そう言い残すとクロンヴァールさんは一方的に会話を打ち切り、地下室を出て行った。

 バタンと扉が閉まる音がすると同時に、再び静寂が訪れる。

『ちったー好転の兆しも見えたか?』

「そうだね、少なくとも話も聞いて貰えない状況を脱しただけでもマシにはなったのかな。あとはセミリアさんの件も」

 セミリアさんが来る。それは間違いなく僕にとっては朗報だ。

 しかしあの様子ではそれで全てが解決するというわけでもなさそうなのに加え、僕に誤解じゃない罪状が追加されてしまったのも懸念材料といえる。

 不法入国。

 そんな言葉が頭に浮かぶ。

 意図したものではないとはいえ、そればかりは事実だし既に自分で罪を認めたような発言さえしてしまっている以上、仮に僕の無実が証明されたとしてもそれに関しての罰は受けなければいけないのだろうか……。

 死刑より重いということはないだろうし、それを逃れるためには説明の必要があったのだから仕方ないけど、予てより疑問だった瞬間移動に関しての取り締まりを身を持って体験してしまうことになろうとは思いも寄らない。

 グランフェルト王国でも城下への移動は禁止と言われていたが、見られなければバレようがないんじゃないの? なんてことを密かに思っていた僕の考えが大甘だったらしく、しっかり察知されてしまっているあたりまだまだ僕の知らないことだらけなのだと再認識させられてしまった感じだ。

 そのことも含めて、セミリアさんが来るからといって余談を許さない状況であることに違いはない。

 そんなわけなので改めて、今度はベッドの上に腰を下ろして最終手段である脱走劇に向けての作戦会議をするべくジャックに話し掛けようとしたのだが、その声は再び聞こえた扉が開く音によって遮られた。

 ほとんど反射的に下ろそうとしていた腰を上げ、鉄格子の方に近寄っていた。

 クロンヴァールさんが戻ってきたのか、それともセミリアさんが到着したのか、そんな願望混じりの期待を抱きつつ出入口の方に視線を向けてみるが、こちらに向かって歩いてくる人影はそのどちらでもない。

 僕よりも少し年上ぐらいの、髪の短い若い男だ。

 口に煙草を咥え、一様に同じ鎧を身に纏っている兵士達とは違った格好をしているこの男性のことを僕は一瞬見知らぬ誰かだと思ったのだが、腰に着いているいくつものブーメランを見て思い出した。

 名前までは覚えていないが、この人もサミットの会場で会った人だ。

「どこの誰かと思って見に来てみりゃ随分と若い爆弾魔がいたもんだな。てめえにどんな理由があったのかは知らねえが、こっちは囚人絡みの別件でピリピリしてんだ。反省や後悔をする時間はそう長く与えられねえとだけ言っておく」

 僕の前までやって来るなりフゥ~と長い息で煙を吐くと怒っている風でもなく、呆れている風でもなく、ただの業務連絡の如く平坦な口調でそんなことを言った。

 この人も漏れなく僕を犯人だと決めつけているみたいだけど、少なくとも話の通じそうな具合で言えばここで会った人の誰よりも勝っている印象を受ける。

 一人でも事情を知っている人が多いことで何かが得られるのならと、僕はこの人にも事情を聞いてもらおうと決めた。

「あのですね、さっきクロンヴァールさんにも説明したばかりですけど、僕がここに居る理由は無いというか、あるといえばあるんですけど誤解の方が多いんです」

「誤解だぁ? つーか、姉御の方が先に来てたのかよ」

 男はもう一度煙を吐いて、壁際に置いてあったバケツに煙草を放り投げる。

 確かに今この人はクロンヴァールさんのことを姉御と、そう呼んだ。

 それが続柄としての意味なのか敬称としての意味なのかは分からないが、少なくともクロンヴァールさんと近しい関係であることは間違いないと見ていいだろう。

 つまりはこの人の理解を得ることが出来ればクロンヴァールさんを説得出来る可能性が少なからずあるということだ。

 クロンヴァールさんが周囲の説得によって意志を曲げる人物であるかどうかは僕に知る術もないが、今の僕に可能性の高低を追っている余裕などない。

 その判断の下、僕は先程クロンヴァールさんにした弁明を繰り返した。

 この国に来た経緯、食事の際に聞いた話、城門で起こったこと、それらの話を僕がしている最中、男は時折質問を挟みながらも黙って話を聞いてくれたし、概ね納得がいったようなリアクションも見せている。

 そんな男の様子に僅かに光明が見えた気さえしていた僕だったのだが、

「てめえの言いたいことはよく分かった。手間取らせたな」

 やはり平坦な口調で告げ、懐から取り出した煙草に火を着けると男はそのまま立ち去ろうとする。それで終わりというのはおかしいのではないかと、僕は慌てて呼び止めていた。

「ちょ、ちょっと……」

「あん? まだ何かあるのか?」

「いや、手間を取らせたって……それだけですか?」

「それ以外に何があるってんだ。今の話で説得すりゃすぐにでも出してもらえると思ったか? 逆に問うが、お前が俺の立場だったらそうするのか? お前の言葉が事実なら同情ぐらいはしてやるが、そう単純な問題でもねえだろう。俺は怪我をした兵士達の見舞いに良い報告をしてやれるようにするだけだ。心配しなくても飯ぐらいは届けさせてやるよ、じゃあな」

 今度こそ男は出入り口に向かっていく。

 クロンヴァールさんにしてもそうだが、この人達は今この状況の僕が最も心配しているのは食事のことだとでも思っているのだろうか。

 そんなわけがないだろうと声を大にして言いたいところではあるが、しかし男の言うことももっともだ。

 僕の証言だけではどれだけ信憑性が高くとも、じゃあ出てもいいよということになるはずもない。

 かといって他に僕が僕の立場を変えるために言えることなんて……いや、ちょっと待てよ?

 確かにレコーダーの会話にあった通り鍛錬室とやらが爆発した。だが、そこにあった爆破予告はそれだけじゃなかったはず。

「ちょっと待ってください!」

 それに気付くなり柄でもない大きな声で男の背中に呼び掛ける。

 扉に手を掛けた瞬間だった男の動きが止まり、その顔がこちらを向いた。

 面倒臭そうに声の届く距離まで戻ってくると、苛立ったような声が飛んでくる。

「なんだってんだ。俺ぁ忙しいっつってんだろ、てめえがどうなるかなんざ俺が今この場で答えられるわけがねえんだ。命乞いなら神にしてろ、恨むなら間抜けなてめえを恨め」

「いや、そういうことじゃなくて……もしかしてクロンヴァールさんはこの後馬車に乗る用事があるんじゃないですか?」

「ああ? あるにはあるが、なぜてめえがそれを知っている」

「その聞いた話の中にあったのを思い出したんです。爆弾を仕掛けたのは鍛錬室と馬車だって、クロンヴァールさんは確実に馬車に乗るはずだって、それを伝えたくて……」

「オイオイ、そりゃ洒落になってねえぞガキ。俺が戻り次第馬車でてめえんとこの勇者を迎えに行くって話になってんだ」

「だったら早く中止して安全を確保しないと……」

「ったく、なんでこう次から次へと……俺はすぐに戻って馬車を調べさせる。全部終わるまで礼は言わねえぞ」

 先程と同じ様に煙草をバケツに投げ入れ、男は早足で去っていく。

 しかし、一度聞いただけの他人の会話をよくこのタイミングで思い出したものだ。

 いや、内容の衝撃度からすれば忘れられる話でもないのだろうけど、少なからず僕が落ち着きを取り戻してきたということなのかもしれない。

「ジャック、この世界では爆弾とかってどうやって処理するものなの?」

『そりゃ吹雪や氷系の魔法で凍結させるなり、鉄製の箱に入れて被害が出ない様に爆発させるしかないだろうよ』

「ないだろうよって言われても初耳だけど、とにかく伝えれてよかった。セミリアさんを迎えに行く馬車だなんて下手をしたらセミリアさんまで巻き添えになるところだ」

『むしろ俺はなんでそれを伝えねえのかと思ってたが、お前さんでも余裕を失うとそうなるってなもんか』

「表だって取り乱さないってだけで死刑なんて言われたら誰でもそうなると思うけど……でも、やっと焦りみたいなものはなくなってきたと思う。ていうか、気付いてたならジャックが教えてくれればよかったじゃない」

『正直に言って俺は俺が相棒より賢い人間だとは思ってねえからな。お前さんが言わないなら何か理由があるんじゃねえかと思っても無理はあるめえ』

「ジャックの方がよっぽど頭は良いよ。どれだけ僕がジャックにあれこれと教えてもらってきたと思ってるのさ」

『そりゃ知識を持っているかどうかの差であって頭の良さの差ではねえだろうよ』

「そうだといいけどね、他所の国で犯罪者扱いだなんていい加減僕の存在意義も薄れっぱなしな気がするしさ。それで、他に何か忘れてる情報とかってないかな」

 手元にレコーダーがあれば他の人に聞かせられないまでも僕にとっての情報源になるのだが、生憎とバッグごと取り上げられてる。

 どうにかあの会話を思い出そうと記憶を辿りながらあの会話を脳内再生をしていると、もう一つ捨て置けないキーワードがその中にあることに気が付いた。そしてそれはジャックも同じらしかった。

『もう一つ、恐らく聞いた会話の中じゃ一番重要な情報が残っているな』

「……ハンバル」

『それだ。まず人名で間違いねえだろう、問題はそれが誰かってことだな』

「そうだね。逃げてなければこの町にいることは確かだろうけど、可能性は半々ってところか。とにかくそれを誰かに伝えないと」

『ああ、出来れば赤いのかさっきのブーメラン小僧に話すべきなんだろうが……』

「どうしたの? 急に黙って」

『丁度良いかどうかは定かじゃねえが、誰かが来たみてえだ。俺は少し黙るぜ』

「誰だろう……さっきの人かな」

 ブーメラン小僧とはまたいつにも増して失礼な認識であること甚だしいが、確かにあの人が僕にとっても望ましいだろう。

 あるいは今度こそセミリアさんならいいなとも思ったが、この後馬車に乗って迎えに行こうとしていると言っていたぐらいだ。今馬車の調査をしているならそれは望み薄か。

 そんなことを考えながら鉄格子の傍に寄り、通路の方を見ながらその誰かを待っているとすぐに扉が開いた。

 入ってきたのはその内の誰でもなく、若い少年だ。

 僕と同じ歳ぐらいの、温厚そうで人当たりの良い顔をした男の子が真っ直ぐにこちらに歩いてくる。

 やがて牢の前まで来ると、僕を見るなりなぜか不思議そうに顔を傾げた。

「君……誰?」

 本当に心当たりがない。

 そんな顔と態度で、僕の顔をまじまじと見つめる。

「誰と言われましても……というか、あなたは?」

「ああ、ごめんごめん。ボクはアッシュ・ジェイン、クロンヴァール陛下に仕えている諜報員だ」

「諜報員……」

 諜報員で、名前がアッシュ・ジェイン?

「間違っていたらすいません。もしかして……あなたがAJ?」

「あれ? どうしてボクのことを知ってるのかな、どこかで会ったことがあったっけ」

「いえ、会ったことはないんですけど諜報員でAJと呼ばれている子がいるという話をアルバートさんから聞いたことがありまして」

「アルバートさんと知り合いなのかい?」

「知り合いという程の関係ではないです。サミットの時に会って少し話をした程度で……なので僕が気軽にアルバートさんと呼んでいいものかどうかも分からないんですけど」

「会話をしたのなら名前を呼ぶぐらいのことに気軽も何もないと思うけどねぇ」

 アッシュ・ジェインと名乗る少年は、よく分からないことを言う奴だとでも言いたげに呆れた笑みを浮かべた。

 僕と大して変わらないだろう年齢の割に落ち着き払った、どこか底の知れない雰囲気を持った人のように写る。

「そういうことではなく、フルネームを知らないので失礼じゃないかなと思いまして」

「ああ、そういうこと。君が知らないのも無理はないんだろうけど、気にする必要はないよ。あの人はただのアルバートだ」

「はあ……」

 ただのアルバートってどういう意味だろう。

 もしかして仲が良くないのだろうか。でも二人は地味キャラ同盟だとか言っていたはずなんだけど……。

「話を戻すけど、君はどうしてここに居るのかな? というか君も名乗ってくれると嬉しいんだけど」

「あ、すいません。僕は樋口康平といいます。ここに居るのは不運が重なったからとしか言い様がないんですけど……」

「君がコウヘイ? こりゃ驚いた、こんなところで会うことになるとはね」

「僕のことを知っているんですか?」

「同じ答えを返すようだけど、知っているというほどでもないよ。ボクも人伝に君の話を聞いたってぐらいだ。あとはサミットの報告書を読めるぐらいの地位にはいるからね、そんなところさ」

「そう……ですか」

「で、どうしてここに居るかを聞かせてもらえるかな」

「それは、とにかく誤解なんです」

「誤解、か。まあ誤解だろうねぇ。君には借りもあるし、事情さえ聞かせてもらえればボクが助けてあげられるかもしれないよ?」

「本当ですか? でも、借りというのは?」

「それはこっちの都合だから気にすることはないさ」

 どこか有耶無耶な答えを口にして、これ以上話が逸れるのを阻止しようとしているのかジェインさんは黙ってしまった。

 なんだか意味深な言葉を残された気がしてならないが、ここに来て初めて誤解であることを聞き入れ、僕を助けると言ってくれている相手だ。

 僕の感覚としてはあまり信用していいと思えるタイプの人間ではないが、何度も言っている通り相手や手段を選んでいる場合ではない。

 考えるまでもなく、僕は三度目の同じ説明をジェインさんにすることにした。最初と違って馬車の件も含めた説明だ。

 さっきのブーメランの人と同じく話が終わるまでしっかりと聞いてくれてはいたが、ブーメランの人とは違って相槌を打つぐらいで特に質問をされるようなこともなく。

 やがて全ての話が終わると、ジェインさんは少し難しい顔をしてようやく最初の疑問を口にする。

「なるほどねぇ。確認するけど、本当にその会話をしていた人達の顔は見ていないのかい?」

「残念ながら姿形は全く分からないんです。自分の席から見える位置でもありませんでしたし、そんな会話をしている人達に視線を向けるわけにもいかずという感じでして」

 本当はその声すらもレコーダーで録音したものを聞いただけなんだけど。

「手掛かりは二人組の男だけってことだね。まあ、最低限というかギリギリの情報ってところか」

「それが、さっき思い出したんですけど恐らくその内の一人の名前が分かったんです」

「名前が?」

「その会話の中にそれらしき言葉があったことに気付きまして、それがハンバルという名前なんですけど……」

 ほぼ間違いなく人名であるはずのそのワード。

 この世界に住民登録や戸籍のようなものが存在するのかどうかは分からないけど、犯人を捜す上で名前が分かっているか否かの違いは相当大きな差があるはずだ。

 しかし、そんな期待とは裏腹になぜかジェインさんの表情は険しさが増していた。

「君……その話を他の誰かにした?」

「いえ……さっきも言いましたけどジェインさんがここに来る前に思い出したもので、クロンヴァールさんやブーメランを持っている人には伝えれていないです、けど」

「そう。ならよかった。一つ約束してくれないかな」

「な、何をでしょう……」

「僕がその人の調査をして、結果どうあれ君を解放してあげられるように動いてあげる。だから今の話を他の人には明かさないで欲しいんだ」

「そう仰る理由を聞かせていただかないことには何とも言えないですよね、それは。ジェインさんが僕を助けてくれると言ってくれるのはありがたいんですけど、僕も人に任せっきりで胡座を掻いているわけにもいかないですし」

 自分の命が懸かっているのだ。おかしな取引に応じて立場を悪くするなど言語道断。

 僕の把握している情報の中では一番貴重なものであるはずなのにそれを他言するなと言われる意味も分からなければ、それが僕にとってメリットがあることだとも思えない。

「理由は二つ、どちらも君をそこから出すために必要なことだからだよ。確かに理由も言わずにその通りにしろというのも君にとっては聞き入れられることじゃないだろうから説明してあげるけど、一つは今現在犯人だと思われている君が他の誰かの名前を出したところで君の立場が好転する確率は低いとうことだ」

「まぁ……その理屈は分からないわけではないですけど」

 カメラも無ければ指紋採取なんて技術もなさそうなこの世界。

 名前しか分からない状態で今の僕がこういう名前の人が本当の犯人です、なんて言ってところで僕の立場が変わるかというと難しいものがあるだろう。

 それでもこれだけ大きな町、大きな城に多くの人間がいるのであればどこかに心当たりのある人がいる可能性だってないわけではないはず。

 それら両方を考慮してみても、どうにも説得力に欠ける理由に思える。

 しかし、二つ目の理由を聞くと同時にジェインさんがそのどちらをも考慮した上でそう言っているのだということを理解した。

「二つ目だけど、むしろこっちが重要でね。真犯人であるかどうかは別として、そのハンバルさんという人物をボクは知っている」

「え……心当たりがあるんですか?」

「あるんだよ、それが。しかも事態は最悪でね、そのハンバルさんというのはこの城に仕える大臣の名前だ」

「……それってつまり」

「そう、君の話が事実なら内部犯ということになる可能性が高い上に主を暗殺しようとしているということだ。これは大問題だってことは君にも分かるよね? だからこそ下手にその情報が出回っていない状態で極秘裏に調査をしたいということ、そしてその前にハンバルさんに疑惑の目が向けられた場合、君とハンバル大臣がそれぞれの主張をした時にどちらに有利に働くかは問うまでもないということ。それが理由だよ」

「なるほど……」

 それは確かにもっともな指摘だ。

 まさかあの会話が、クロンヴァールさんを殺そうとしている犯人がクロンヴァールさんの家臣であるとは思いもよらず。

 人望も厚く、側近の人間との絆も固いとセミリアさんに聞いたことがあったのだけど……信長公然り足利義輝然り坂本龍馬然り、後世に名を残すだけの大人物ほど凶刃に倒れる危険も増していくということなのか。

 それが戦乱の世だといえばそれまでなのかもしれないが、いざ自分がその一部となってみると愚かしくもあり残酷で悲しくなる現実だと思えてならない。

 だからこそ僕は暗殺計画を聞いた時に阻止しなければと思ったし、我が身可愛さを差し引いても無実の僕が捕まることで真犯人をのさばらせておくなんてことがあっていいはずがないのだ。

 となれば、僕は何をすべきか。

 今はこの人を信用し、そのハンバルという人物が犯人である証拠を掴んでもらう。

 それが僕がここから出て、なおかつこれ以降の事件が起こらないようにするにはベターな選択だと納得しておくほかないというところか。

 諜報員というからには色々と耳や鼻も効くだろう。

 クロンヴァールさんの側の人間である以上全てを託すことはしないし、僕が最も信用し頼りにするのはセミリアさんであることは揺るぎないが、セミリアさんに出来ないことをこの人が出来るということも事実。

 その動向に合わせて立ち回ることが僕にとっても当初の目的を果たすためには一番いいと言える。

「分かりました、取り敢えずはジェインさんの言う通りにします。自分の身が本当に危ないと思った時にどういう判断をするかは分からないですけど」

 熟考の末、僕は受け入れることにした。

 ジェインさんはそこでようやく表情を緩める。

「信用ないなぁ。今この話をした以上君がそのまま裁きを受けるような状況にするわけがないのにさ。ま、その慎重さがあるから国王代理を任されるだけの信頼に繋がっているのかな? 今の姿を見ると、今日はあまり発揮出来ていないみたいだけど」

 嫌味を一つ挟んだのち、ジェインさんは身体の向きを変えた。

 余計なお世話だ。と、言いたいところだが実際その通りなのが虚しいところだな……。

「じゃあボクはすぐに取り掛かるとするよ。じき君の国の勇者もやってくるだろうけど、それまでに成果を上げられるかは微妙なラインかな。どちらにせよ、進展があればまた会いに来るよ」

「分かりました。どうかよろしくお願いします、ジェインさん」

「これでも情報収集は得意だし、クロンヴァール陛下に進言するぐらいの立ち位置にはいるからね。どうにか頑張ってみるさ。それから、最後に一つ」

「なんでしょうか。もうご飯の心配はいらないですよ?」

「ご飯? 何の話か分からないけど、君もボクのことはAJと呼ぶといい」

 どこか爽やかな微笑を見せるとジェインさんはそのまま去っていった。

 なんといか、歳の差なんてあってないようなぐらいだろうに随分と高い位置から物を言う人だ。

「ジャック……あの人、どう思う?」

『何を考えているか分からないタイプのいけ好かねえガキだが、あんなでも相棒の唯一の味方かもしれねえからな。今は使えるモンは使っておいていいんじゃねえかってぐらいの感想だ』

「僕も同じ感想だし、同じ考えだったから安心したよ」

『年齢から頭脳明晰な立ち位置までお前さんと似たり寄ったりなくせに、どうにも捻くれてるっつーか可愛げがねえっつーか。俺は相棒の方が百倍可愛いと思うね』

「……そんな感想は聞きたくなかったんだけど」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ