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誰かを殺そうとする彼女に恋をした  作者: さつき


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決闘

 ルイを殺そうとしたのは、実の父親であるルシウス・ハージェンティだった。


「何だ。死ぬ前に、気がついてしまったのか」


 ルイはショックで頭がおかしくなりそうだったが、ルシウスは天気の話題でも話すかのように、平然としたながらそう呟いた。


「どうして……父さんが……」


 父さんから逃げるように距離を取るが、ここは個室だ。逃げ場なんてない。すぐに背中が壁にぶつかる。


「ずっとお前が目障りだったからだ」


 ルシウスは、もう隠す気がないようにそう吐き捨てた。


「え……」

「お前がいけないんだ。お前が。お前さえいなければ、俺がベヒモスに認められていた。息子のくせに、俺が持つはずだった能力を奪ったんだ!お前ばっかりベヒモスに認められて、褒められて……ふざけんな!」


 ルシウスは、壊れてしまったように叫び出す。ルイは、どうしてこんな風に言われるのかちっともわからなかった。


「お、俺は……好きで黒魔術を使えるようになったんじゃない。たまたま黒魔術が使えただけだ」


 もつれる口で何とかそう言うが、父親の心には響かない。


「そうかもな。だけど、お前なんて生まれて来なければよかった。俺は、お前が憎くてたまらない」


 父さんの言葉は、ガラスの欠片みたいだ。言葉でルイを傷つけるように、攻撃的で冷たい。

そんな身勝手な父の言葉に、ルイも火山が噴火するように、怒りが爆発した。


「道具として生きろって言ったのは、父さんじゃないか!僕は、感情を捨て続けたのに、何で父さんだけ感情に支配されているんだ。ふざけるな!僕がなんて呼ばれているか知っているか。最悪の魔術師、虐殺者ルイ・ハージェンティだよ。殺して、殺して、殺して、殺して、殺しまくってきた。いい人も、子供も、殺してきた」


 初めて殺した人間をまだ覚えている。覚えているだけだ。罪悪感なんて、とっくの昔に捨てた。それを持ち続けると、頭がおかしくなると思ったから。


「俺がどんな気持ちで今まで生きてきたと思っている?僕を地獄に突き落としておいて、一人だけ感情のある人間として生きるだなんてずるいんだよ。それに、もうバハムートも、ハルバードも、マイアーも死んだんだ。僕を殺せば、ディアボロン帝国は亡びる。父さん1人でどうやって、ファビアンを守るつもりだ」


 この戦争で負ければ、ベヒモスの息子であるファビアンは殺される。まだ赤ん坊である彼のことを守らなくてはいけない。それは、父の能力ではできないことだ。


「何だ?お前も俺が落ちこぼれだって言いたいのかよ」


 ルシウスの口元は、歪んだ笑みが浮かんでいた。


「違う。だけど、ディアボロン帝国を守れるのは、僕だけだ。これは、僕にしかできないことだ‼」


 熱っぽい口調で、ルイはそう断言する。それほど、自分の力を信じていた。

 けれども、ルシウスは、天井を見て諦めたようにため息をついた。


「……もういいんだ。こんな帝国滅んでもどうでもいい。俺は、お前さえ殺せればそれでいい。ずっと、こんなチャンスが来るのを待っていたんだ。お前が憎くてたまらなかった」


 自分と同じような濃青色の瞳が、何かに取りつかれたようにこっちを見てくる。


「僕が死んだら、母さんはどうなると思う?」

「そうだな。ディアボロン帝国は崩壊し、母さんだって殺されるだろう」


 その口調は、驚くほど冷静で淡々としていた。


「母さんがどうなってもいいの?」

「……ずっと目障りだと思っていたんだ。俺よりも評価されて」


 政略結婚で結婚した父さんが母さんを嫌っていることは、知っていた。だけど、死んでもいいだなんて思っているとは、想像していなかった。


(くそ。くそ、くそ、くそ。何もかも嫌になる。もう全部、めちゃくちゃにしたい)


「父さん。これが最後の忠告だ。僕を殺すのを辞めないのなら、僕は父さんを殺さないといけない」

「お前、まだ自分が勝つとでも思っているのか?お前の魔術は、確かに強い。だけど、俺の魔術だって、1対1なら誰にも負けたことはない」

「僕も誰にも負けたことなんてない」


 自分は、まだ10歳だ。大人である父とは、経験値が違う。


(けれども、ベヒモスに認められたのも、世界一の魔術師と言われているのもこの僕だ‼)


「はっ。まだガキのくせに。でも、お前の能力がもっと開花する前に殺せてよかったよ」

「僕が子供だから、なめているのか」

「そうだよ」


 ルシウスが短剣を構える。ルシウスの短剣には、すでに血が付着していた。おそらく一緒にいた衛兵を全員、殺したのだろう。

ルイは、左手をギュッと握りしめ右足を少し前に出した。


「お前は、天才、天才と言われてきたけれど、本当はどっちの方が優秀か、今、証明してやるよ‼」


 ルシウスは、何かに酔いしれるようにそう叫んだ後、ルイ飛び掛かった。

 それは、光のような速さだった。


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