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誰かを殺そうとする彼女に恋をした  作者: さつき


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マイアー戦

 フィオリが赤い煙弾が見えたところに行くと、数人の騎士団員が倒れている様子が見えた。周りにいる騎士団員は、奥の方にいるスキンヘッドの男から距離をとっている。


「あー。どいつもこいつも、戦う気がねぇのかよ。つまんねぇーな」


 男は、二つの短剣を両手で弄びながら、そう吐き捨てた。


「下がっていろ!こいつの相手は、俺がする」


 そう言って、男の前に出ようとするが、後ろから怒鳴り声が聞こえた。


「フィオリ‼そいつは、やっかいな相手だ。まだ近づくな」


 フィオリがその言葉で足を止めるが、スキンヘッドの男は、ニヤリと笑った。


「はい、終了~♪」


 凄まじい殺気を感じて、頭の位置をずらす。次の瞬間、フィオリの頬を短剣がビュンとかすめていた。


「あれ?とどめそこなったな」


 スキンヘッドの男は、不思議そうに頭を抱えていた。


「どういうことだ⁉」


 後ろにいた団員に問いかけると「そいつは、物体収納の魔術が使えるマイアー・ルカージュだ!」と叫ぶように返事をしてきた。


(マイアー……。確かディアボロン帝国の兵長か……。厄介そうな奴だな。どこから攻撃が来るかわからないなんて、相当厄介だぞ)


 だけど、自分がここで引き下がるわけには行かない。


「こいつは、俺が相手をする。お前たちは、どこかに行っていろ」

「はい!」


 そう返事をすると、周囲の団員は違う場所へと走っていった。

 どこから攻撃が来るかわからないのか。だったら、早めに決着をつけなくてはいけない。


「土の魔術、ゴーレム‼」


 そう地面に剣先を向けて叫ぶと、2体の土でできたゴーレムが生まれた。身長は、2メートルくらいの巨大な土の塊である。

 それを見たマイアーは、イライラしだした。


「はああああ!?お前のようなガキがなぜ魔剣を持っているんだよ?」

「選ばれたからに決まっているからだよ、ボケが」


 フィオリは、自分のことを平凡で才能のない人間だと思っているが、決して弱かったわけではない。天才ナベリウスと小さい頃から、共に戦っていたのである。天才ナベリウスばかり脚光を浴びていたが、フィオリの実力も彼といるうちにグングンと伸びていったのだ。そして、若くして騎士団に所属すら決まった。

 そもそも学生のうちから、騎士団に所属できるのは、超優秀な生徒だけだ。騎士団が保有する魔剣は、全部で7本である。フィオリは、実力により今回の戦いで魔剣保有者に選ばれた。つまり、実は、ルートピアで上位7人になるほどの強さであったのである。


「行け‼」


 フィオリの言葉で、2体のゴーレムがマイアーの方へ向かっていくが、マイアーはまるで透明にでもなったかのように姿を消した。


「ちっ……。自分を収納したか」


 こうなるとどこから現れるかわからないから、厄介だ。

 剣を握りしめ、感覚を研ぎ澄ます。

 こんな時ナベリウスなら、どうする?

 頭の中のナベリウスに問いかける?おい、お前どうするんだよ。


『そんなの気合でどうにかするに決まっているだろう』


 そうだ。ナベリウスは、脳筋だ。問いかけても意味がない。ナベリウスは、ダメだ。

 リュシオンだったら、どうするか?


『敵は、一番嫌な場所から現れると思え』


 そんなことを言いそうだ。

 だったら、背後しかねぇだろう。


 強い殺気を感じた瞬間、剣を背後に振り上げる。


「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」


 背後から、断末魔のような悲鳴が聞こえた。

 すぐに気配が消えたと思ったら、5メートルほど離れた正面から、怒り狂って今にも爆発しそうなマイアーが現れた。マイアーは、肩口を怪我していた。しまった。ちょっと浅かったか……。次は、もっと深く刺さないと……。


「てめぇ‼このクソ野郎が!何でわかった?」


 低く太いすごみのある声で、マイアーが叫ぶ。


「バレバレの殺気がしたからだ」

「ちっ。これなら、どうだ」


 次の瞬間、フィオリの前後左右から大量の短剣が襲ってくる。

 右、左、前……。フィオリは、踊るように回りながら短剣を次々と剣で落としていく。そして、軽やかに飛びあがりマイアーに切りかかる。

 マイアーも手に持っている短剣や、異空間から出す短剣で対抗するが、フィオリのスピードに追い付けない。


「え……」


 マイアーの短剣をフィオリの剣が、軽々と止めていた。マイアーの顔面は、化け物でも見るかのように青ざめていた。


「何で俺の短剣をそんなに易々と止められるんだ?背後からだって来るんだぞ!!!」

「それは、お前の短剣が軽くて遅いからだ」


 そうだ。ナベリウスの攻撃とは、比べ物にならない。


「ああん?何だと?」

「俺がナベリウスと何年戦ってきたと思う?あいつの剣の方が、もっと重くて速えよ!」


 これは、事実である。フィオリは、ナベリウスの木刀を受けて骨折したことすらある。


「ここが、お前の最後(はかば)だ」


 フィオリの剣が流れるような動きで、マイアーの心臓を突き刺す。


「はぎゃ……」


 マイアーは、深紅の血を噴水みたいにプシューと吹き出しながらその場に崩れ落ちた。


 くそっ。思っていたよりも、時間がかかってしまった。

 剣を抜き取ったフィオリは、辺りを見回した後、ナベリウスの方へと歩き出した。



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