ディアボロン帝国
エリザベスが城に到着すると、出迎えたのは、3人の侍女であった。その中央にいた緑色の髪の女が、エリザベスに向って、お辞儀をした。
「ディアボロン帝国へようこそ、エリザベス様。私は、リリスです。これから、あなたの身の回りのことを担当します」
リリスは、笑顔が魅力的なかわいい女性だった。
「よろしく」
「ところで、もうお腹は減っているかしら。うちのシェフが、エリュオン様を歓迎してフルコースを用意したんです」
「ありがとう。お腹はペコペコだわ」
(今夜、私はベヒモスを殺す。しっかり食べて体力をつけておかなければいけない)
エリザベスは、笑顔の裏でそう考えていた。
リリスに連れていかれた食堂では、テーブルにおさまりきれないほど多くの料理が出された。他国から資源を奪っているディアボロン帝国の食事は、ルートピアにいた頃よりも豪華なものだった。味は美味しかったが、その材料が植民地化された他国から来ていると想像すると少し気分が悪くなった。
その後、お風呂場に連れていかれて念入りに洗われた後、寝間着にさせられた。それから、髪をかわかして、丁寧に梳かれた。
髪を梳かれながら、リリスがエリザベスに脅すように話しかけてきた。
「いいですか。ベヒモス様には、できるだけ抵抗しないでください。抵抗したら、殴られてしまいます。二番目の妻でありナタリア様は、抵抗して一晩中殴られました。できる限り大人しくして彼の言いなりになってください」
「わかったわ」
「大丈夫。お人形のように言いなりになっていれば、すぐに飽きてくれるわ」
リリスの声は、日だまりみたいに優しかった。これから、酷い目にあうだろうエリザベスに同情しているのかもしれない。
「ええ」
口では、そう返事をするけれども、言いなりになるつもりはなかった。今夜、自分は彼を殺すのだ。
「髪はどうしますか?このままおろしておきますか?」
「髪を結んで欲しいの。最初に来た時のような髪型にして欲しいわ。そして、その髪飾りもつけて欲しいわ。お気に入りのものなの」
「わかったわ」
リリスは、かわいそうなエリザベスを労わるように、優しい手つきで髪を結び始めた。
髪型を整え終わると、エリザベスは、ベヒモスの部屋に案内された。彼の部屋には、薔薇の香りが漂ってくる。
短剣を隠すのは、ベッドの上がいい。エリザベスは、ベヒモスの寝室でベッドに腰かけて、この部屋の主が来るのを待つことにした。
コチ、コチ、コチ……。
時計の音がやけに大きく感じられる。
(彼に会いたくない。怖くてたまらない。だけど、私がやらないと……)
エリザベスは、ベッドの上で初めてベヒモスに会った時のことを思い出していた。




