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第1話 目覚めと出会い

__今から約1000年前。

魔界からの襲撃により、各国は破滅状態

地は割れ、森は枯れ果てた。

全人類の力をもってしても魔族に攻撃は通らなかった。世界の終焉が近い刻、割れた地にたった一人の少女が立っていた。


その少女の名は、エルミネ。

少女が片手を振り下ろすと、瞬時に魔族は消え、地に光が戻った。

少女は力を使うと、どこかへフラフラと消えてしまった


少女はその見た目から、月の精と呼ばれるようになった__




「いいお話だね。でもこれだと、少女の今後が分からないよね。それなのに人間は少女を今でも探し続けてるの?」


まだ眠たい目を擦って、ボクは周りの精霊たちに問いかける。

さっきのお話の中の少女エルミネが何を隠そうこのボクだ。

世界に光をもたらした後、森の中で約1000年も眠り続け、ついさっき目覚めたばかり。


「そもそも!ボクは元々ただのなんの力もない人間だったじゃないか。君たち精霊が力を貸して!なんて言って瀕死のボクの体に魔力を注入しただけでしょ?」


それなのに今や月の精として人間に伝わっているらしい。不本意だ。目が覚めたらゆったりのんびり過ごそうと思っていたのに、これじゃ無理そうだ。


いつの間にか膝まで伸びていた白い髪をまとめて、木の上から飛び降りる。


「精霊になってしまったとはいえ、元は人間だから人間界でそれっぽく生きたいんだけど…この見た目じゃなぁ…」


白く長い髪に魔力たっぷりの蒼い目。

これじゃ街に行ったとて騒ぎになるだけだ。


「…とりあえず髪と目は魔法で変えられるとして。伝承が少しでも薄れてそうな小さな町にお邪魔しようかな…」


本当はそんなことに魔力を消費し続けたくはないのだが、仕方ない。そもそもボクの魔力はこの世界が消えるまで尽きることはないから、何の心配もないのだが。ただただ面倒なだけ。


そんなことを考えながら森から出ようとフラフラと歩いていると、遠くの方から叫び声が聞こえる


「うへぇ…人間…?でも叫んでる内容からしてただ事じゃないよなぁ」


声のする方向に少し小走りで向かってみる。

辿り着いた先にいたのは、魔界の獣。それと、重傷を負った人間2人。傷を負いながらも戦う人間1人。

そしてその先には黒い靄。

あの靄には見覚えがある。


「あれは…魔界と繋がる空間…まぁ1000年も経てば祝福は薄れてくるか…仕方ない」


靄は浄化はするとして、あの人間。

ボクのことを見られると厄介だが今はそんなことを気にしている場合ではない。


「おや…?あの人間…精霊使いだったか」


どおりで魔界の獣相手に長らく1人で戦っていられるわけだ。ただの人間だと、後ろの2人のようにすぐに "オシマイ" になる。ボクもそうだった。

ボクの場合、精霊との相性が良かったから力をもらって精霊として生まれ変わっただけ。


まぁそんなことはどうでもいい。あの子もそろそろ限界だろう。


「おーい。そこの精霊使いの騎士さーん。」

「?!誰かいるのか…?今すぐここから離れるんだ!!ここは危険だ!!」

「ふむ…大丈夫だよ、ボクに任せて。」


そう言ってボクは精霊使いの騎士さんの前に飛び出す。騎士さんはかなり驚いていた。そりゃそうか。突然目の前に例の月の精エルミネと同じ見た目の子が現れたんだから。


「女の子…?白い髪に蒼い瞳…まさか…?!」

「えぁあ…ボクのことは気にしないで、先にこっちの問題を解決しよう。お話はそれからだ。」


ボクは精霊使いの騎士さんから視線を逸らして、改めて魔界の獣と向かい合う。


「ふむ…魔力量はそこそこ。これは精霊使いの騎士さんでも厳しい戦いになるはずだ。」


騎士さんの精霊は魔法特化っていうより、あくまで剣術サポート、自己回復のためみたいだね。特性に合わせて契約してるのか。賢い。


「まぁとりあえず。キミたち魔界の生き物はこの世界にはいてはいけない。自分たちの世界へ還るんだな」


そう言ってボクは右手を振り下ろす。

瞬間、目の前にいた獣たちが溶けていく。相手に動く隙も与えぬ間に。


「さて、残りはこの靄か」


なんでボクが眠っていたこの森にできたのかは分からないけれども。この靄はこの世界に存在してはいけないものだ。

靄に手を当てると少しずつ小さくなっていく。そして次第に消えてなくなる。


「ふぅ…起きてからの仕事としてはなかなかに良い成果なのでは?」

「あの…貴方はもしかして…」

「あぁ…えっと…とりあえずその子たちを起こそうか。」


ボクが獣と靄を消している間に、騎士さんが回復魔法で重症だった人間2人の応急処置をしていたらしい。

呼吸は安定している。だが魔法に特化した精霊じゃないから傷口は完全に治せなかったらしい。


「…まぁいいか、この子たちが起きたらゆっくりお話をしよう。ボクも聞きたいことがたくさんある。」


そう言ってボクは手に魔力を込めた。

そのまま彼らに範囲回復魔法をかける。彼らを囲むようにドームが形成される。そのドームが回復範囲になる。この調子だと2、3分あれば完治するかな。


「さて、この子たちが起きるまで少しの時間がある。こちらから少し聞きたいことがあるのだが、いいかな?」

「あ、あぁ…もちろん。」

「とりあえず名前を聞いてもいい?騎士さん呼びだと、あの眠っている2人と被ってしまう。」

「俺はアルデルト。そっちの2人は俺の側近で、ジルダとダルリア。王都ラズドレスから先程の獣と靄の調査に来ていたんだ。」

「ふむ……」


少し話を聞いてわかったことがある。

魔界の靄は各地で確認されていて、魔界からの獣や魔物によって沢山の被害が出ていること。

アルデルトは精霊使いというだけで靄の消滅を任された第2王子であるということ。

そしてこのボク、エルミネの存在は世界中に知れ渡っているということ。

そして……


「月の精エルミネ様。どうか我々と一緒に王都ラズドレスへ同行願いたいのですが、よろしいでしょうか?」


話を聞く相手を間違えたということ。

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