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自由時間


「今日はもう自由だ。好きにしろ」


食堂での昼食を終えると、レイラが伸びをしながら言った。


「正式な初任務も終えたし、今日はもう自由だ。好きに過ごせ」


「おぉ! いいんですか!?」


「そのかわり、変な騒ぎを起こすなよ。特にお前はな?」


「そんなに信用ないですかね……」


「あると思うか?」


フィオナは頬をかきながら苦笑する。


「まあ、せっかくの自由時間だし、ちょっとローベルクを探索してみようかな!」


「おう、迷子になるなよ」


「そんな子どもじゃないですよ!」


「どうだかね」


レイラは鼻で笑いながら席を立った。


「じゃ、また夕方な。何かあったらギルドに戻ってこい」


「はーい!」


こうして、フィオナのローベルク散策が始まった。



「迷った」


ローベルクの街を歩きながら、フィオナは改めて町の広さを実感していた。


「……あれ? こっちってさっきも通った気がする」


大通りから少し離れた路地に入り込んだせいで、道がよくわからなくなっていた。


「はぁ……やっぱり地図くらい持ってくるべきでしたかねぇ」


それでも、せっかくの探索なので適当に歩いてみることにする。


すると――


「ようこそ! ローベルク名物・大食いチャレンジへ!」


突然、活気のある掛け声が耳に入った。


「大食いチャレンジ?」


目を向けると、屋台の前に大きなテーブルが用意されており、そこには山のように積まれた肉の皿が並んでいた。


「優勝者には豪華賞品! さらに、一時間以内に完食できたらタダ!!」


「おぉ~~~!!」


観客たちの歓声が飛ぶ中、すでに何人かの挑戦者が肉と格闘していた。


(……おもしろそう!!)


「すみませーん! これ、私も参加できます?」


「おうおう! 勇気のある嬢ちゃんだな! 参加費は銀貨一枚! 完食したら返すぜ!」


「やりますやります!!」


こうして、フィオナの大食いチャレンジが始まった。



「うぉぉぉぉ!!! まだ食える!!」


フィオナは勢いよく肉を頬張る。


「ま、まだ行くのか!?」「こいつ、どこに入ってるんだ……!!」


周囲の観客が驚愕する中、フィオナはさらにスピードを上げ、皿を次々と空にしていく。


そして――


「……ごちそうさまでした!!」


「……」


「完食――!!!」


「「「うおおおおお!!!」」」


観客の歓声が湧き上がる中、店主は呆然とした顔で賞品の袋を差し出した。


「ま、まさか本当に食い切るとは……優勝者だ……!!」


「やったー! ありがとうございます!」


「お、お嬢ちゃん……よかったら、また来てくれ……」


「もちろんです! ごちそうさまでした!」


こうして、フィオナは街の人たちに"爆食嬢ちゃん"として覚えられることになった。



ギルドに戻ってくると、受付の方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。


「なぁ、お嬢ちゃん、ちょっといいだろ?」


「申し訳ありません。業務中ですので、個人的なお話は……」


「いいじゃねぇか、ちょっと付き合えよ」


「……困ります」


そこには、明らかに面倒くさいチンピラがエリスに絡んでいた。


「おいおい、俺たちの相手もちゃんとしてくれないと、ギルドの評判が落ちるんじゃねぇか?」


「……」


エリスが困った顔をしているのを見て、フィオナの眉がピクリと動いた。


「おーい、何やってるんですかねぇ」


「ん? 誰だお前……」


「お前って……私はただのギルドの討伐隊員ですよ?」


「……あっ」


チンピラたちの表情が一瞬で変わる。


「レイラと一緒にいたやつだ……!!」


「やべぇ、逃げろ!!」


一瞬で察したチンピラたちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「まったく……エリスさん、大丈夫ですか?」


「ありがとうございます、フィオナさん……」


エリスは胸に手を当て、ほっと息をついた。



その後、フィオナはエリスと一緒に晩御飯を食べることになった。


「それにしても、助かりましたわ。フィオナさんが来てくれていなかったら、しつこく絡まれていました」


「まぁ、ギルドにもそういうやつはいますからね。こっちも大変ですよ……」


フィオナはスープをすすりながら、ふと思い出したように尋ねる。


「ねぇ、エリスさん。私、どうしたら受付嬢になれますかね?」


「えっ?」


エリスは目を瞬かせた。


「だって、私、本当は受付嬢になりたかったんですよ?」


「そ、そうでしたわね……」


「でも、なんかみんなに“向いてない”とか言われるんですよ!」


「……うぅん……」


エリスはしばらく考え込んでから、ふわりと微笑んだ。


「では、私が手伝いますわ!」


「えっ!?」


「フィオナさんが本当に受付嬢になりたいのでしたら、私ができる限りお手伝いしますわ」


「マジですか!? ありがとうございます!」


「まずは、お淑やかな話し方から練習しましょうか?」


「うっ……でも、頑張ります!」


エリスの笑顔を見て、フィオナの心が少し温かくなった。

そんな決意を胸に、フィオナは新たな挑戦を始めるのだった。

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