コンビ誕生
翌朝、訓練場に集合すると、レイラが腕を組んで待っていた。
「いよいよ私の討伐隊員としての正式なデビュー戦ですね!」
フィオナは拳を握って気合を入れる。
「おう、そうだな。けど、お前は私とセットで動くことになってるから、勝手な行動は禁止だぞ?」
「えぇ~……レイラ隊長とセットですか?」
「隊長って呼ぶな。私とお前は今日からコンビだ。いいか、私はレイラ、お前はフィオナ! 以上!」
「……はいはい、わかりましたよ、レイラさん」
「よろしい。じゃあ、まずは簡単な依頼から行くぞ」
レイラは手元の報告書をひらひらと振った。
「郊外の農村で、最近野良オークが出没してるらしい。こいつら、単体なら雑魚だが、調子に乗ると村の畑を荒らすし、住人に危害を加えることもある。だから、さっさと片付けるぞ」
「なるほど、つまり、村の治安を守る大事なお仕事ですね!」
「まぁ、そういうこったな。やる気は十分みたいで何よりだ」
レイラはにやりと笑い、ギルドの馬を引いてきた。
「ほれ、行くぞ」
「え、馬で行くんですか?」
「当然だろうが。歩いてたら日が暮れるわ」
「走ったほうが早くないですか?」
「それはお前だけだ!私が馬より早く走れると思ってるのか… ほれ、さっさと乗れ!」
「は、はいっ!」
こうして、フィオナの初めての正式任務が始まった。
「あっ、いた!」
馬を走らせること約一時間。村の手前の草原地帯で、早速ターゲットを発見した。
「ほう、運がいいな。オークが二体いるぞ」
レイラが馬を止め、遠目にオークたちの様子を観察する。
「畑を踏み荒らしてますね……あんなことして、村人たちは困ってるでしょうね」
「まったくだ。よし、さっさと片付けるぞ」
レイラが剣を抜いた。
「じゃあ、私、速攻で行きます!」
「待て待て、私もいるんだから、勝手に突っ込むなよ?」
「えぇ~、でも、素早く片付けた方が……」
「こら、コンビって言っただろ? 連携を取れ」
「はーい……」
渋々ながらも、フィオナはレイラと共に草むらに身を潜める。
「まずは、不意を突いて一体を仕留める。その間にもう一体が逃げないよう、迅速に対処する」
「なるほど、じゃあ、私が先に背後に回り込んで――」
「お前、また背骨折るつもりだろ?」
「えっ、ダメですか?」
「まぁいいか……とりあえずやってみろ」
「よっしゃ!」
フィオナは魔力を巡らせ、一瞬でオークの背後に移動。
「――よっ、と」
一撃でオークの背中を叩き潰した。
バキィッ!!
「ぐがぁぁっ!?!?」
「はい、一丁上がり!」
オークがのたうち回る中、もう一体が仲間の悲鳴を聞いて動いた。
「レイラさん、そっちはお願いしま――」
ズバァッ!!
フィオナが言うよりも早く、レイラが剣でオークの喉を切り裂いていた。
「お、おぉ……さすがですね……」
「お前が派手にやるから、こっちもさっさと片付けた方が早いだろ」
「はは、確かに……」
レイラは剣を振って血を払うと、うずくまっているオークを見下ろした。
「そいつまだ生きてるぞ?」
「いや、これでいいんです。回復して帰しますよ」
「……お前、慈愛にでも目覚めたのか?」
「いやいや、こうすれば二度と村に近づかないようになるんですよ! 人間の村に近づいたら死ぬほど痛い目にあうって学ばせておけば、もう寄りつかなくなるって寸法です!」
「はぁ……まぁ、好きにしろ」
フィオナはオークの背に手を当て、ゆっくりと魔力を流し込んだ。
骨が元通りになり、オークは苦しそうに息を整える。
「ほら、これで元通り!」
「ぐ、ぐるぁ……」
オークはフィオナを一瞥し、そして全速力で森へ逃げていった。
「……まぁ、たぶんもう来ねぇだろうな」
「ですよね!」
こうして、フィオナの初任務は無事終了した。
「仕事終了! さて、ローベルクに戻るか」
「やった! じゃあ帰りにご飯食べていいですか?」
「は? まだ昼前だぞ?」
「いやいや、運動したらお腹すきますよ!」
「……ったく、まぁいい。今日はお前の正式な初任務だから、私が飯を奢ってやる」
「えっ、マジですか!? やったー!!」
こうして、フィオナの討伐隊としての正式な初仕事は無事に成功し、二人はローベルクのギルドへと帰還したのだった。