表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/43

再出発


ローベルクの城門が視界に入ったとき、フィオナは思わず大きく伸びをした。


「ふわあ~……やっと帰ってきましたねぇ!」


足取りは軽い。あれだけの死闘と戦いを経たにも関わらず、体の芯にはまだ元気が残っているのだから、我ながら自分の回復力に驚く。


……いや、単に図太いだけかもしれないけれど。


「これで私が一番乗りですね~。さすがに!」


そんな独り言を呟きながら、ギルドの正門をくぐった──が。


「ただいま帰還しましたー……っと」


ローベルクのギルドに戻ってきたフィオナは、ゆるい足取りのままカウンターに歩み寄り、近くの椅子にどさっと腰を下ろした。


「おかえりなさい、フィオナさん!」


受付にいたエリスがぱっと顔を上げて微笑んだ。


「東部森林の調査、お疲れ様でしたわ。無事で何よりです」


「バッチリ無事です!私以外にも誰か戻ってきてます?」


フィオナはカウンターにもたれかかるように身を預けた。


「ええ、ジークさんが今朝一番で帰還されましたわ」


「えええ、そんなぁ……!」


フィオナはがっくりと肩を落とす。


「結構早く調査を終えたので、一番だと思ってました…」


「ふふ、それでも十分早いほうですわ」


「それで、東部森林の調査結果は?」


後方から聞こえた声に振り返ると、レイラが腕を組んで立っていた。


「はい、異常の中心と思われる“石碑”を確認、破壊しました。ついでに、未完成の融合魔物も討伐しました!」


フィオナは胸を張って報告する。


「……未完成?」


「はい。恐らく、成長の途中だったと思われます。完全な形にはならなかったみたいで」


レイラは眉をひそめながらも頷いた。


「石碑っていうのはどういうものだった?」


「これです!」


フィオナは腰のポーチから、慎重に包んでいた黒い石片を取り出す。


見た目はただの石のように見えるが、掌に乗せているだけでじわじわと不快な気が伝わってくる。


「こいつは……間違いなくただの石じゃないな。あまり直接触らない方がいいだろう」


レイラは手を伸ばさず、フィオナに目配せする。


「えぇ…私は触っているんですけど…」


「そのまま、鑑定部に持っていけ。アントに頼めば調べてくれるはず」


「アントさんですね。了解です!」


フィオナは石片を持ってギルド奥の部屋へと向かった。



──数十分後。


鑑定部の初老の男、アントに石片を預けると、フィオナは再びレイラの元へ戻っていた。


「それで、他の隊員は?」


「ロイとミアがまだ戻ってきていない」


「えっ、ロイさんとミアさん……」


フィオナの表情が少しだけ真剣になる。


「南方と西方だったかな?」


レイラは、手元の地図に目を落としながら呟いた。


「ミアからは、昨日の時点で“帰還予定が遅れる”という連絡が来てる。が、ロイからはまだ何の報告もない」


「……それって…ちょっとまずいのでは?」


「だから、お前に応援を頼みたい。お前しか空いてないからな」


「空いてるって……! まだ戻ってきたばかりなんですけど!?」


レイラは一瞬目を細めたが、すぐに無表情のまま淡々と返す。


「だから、ちょっと休憩したら出発でいいぞ」


「ちょっと!? 一泊とかじゃなくて!?」


「今はのんびりしてる時間はないんだ。すまないが頼んだ」


「……し、仕事って、厳しいですね……」


フィオナは遠い目をしながら、机に額を押し付ける。


「それで、どっちに行きますか? 南? 西?」


「西だ。ミアの方は連絡がついているし、何かあっても最小限の支援で済む。だがロイは──状況が読めん」


「了解です…」


レイラはそんなフィオナを見て、軽く笑った。


「お前、帰ってきたとき元気だっただろ。元気が取り柄のフィオナだろ」


「そうですけど!?帰ってきたばかりで疲れもあるんですから!」


レイラは言葉を返さず、地図を指差した。


「西方の湖畔地帯。おそらくはそこに向かったまま、状況の確認を行っていたと思われる」


「なんかまた異常がありそうな気配、ぷんぷんしますね……」


「ありそうな、じゃない。“確実にある”。この規模の魔物異常が広範囲に起きているんだ。ロイがただの遅延で済んでるとは思えない」


「……ですね。じゃあ、準備整えたらすぐ出ます!」


そうしてフィオナは、再び討伐隊員として“仕事”の中へと放り出されるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ