冒険者のランク
冒険者には、五つのランクが存在する。
Eランクから始まり、D、C、Bと上がり、最上位にはAランクがある。
一般的な新人はEランクからスタートし、依頼の成功実績と力量、信頼を積み重ねて少しずつランクを上げていく。CからBへの昇格もそれなりに大変だが──
BからAになるための壁は、圧倒的に高い。
Aランクになる者は、純粋な個の力が抜きん出ており、個人で一つの戦場を左右する力を持つ、選ばれた存在だ。
そして現在、フィオナと共に討伐任務にあたっている魔物駆除討伐隊の隊員は、冒険者としては全員がBランク以上。
彼らを束ねるレイラは──当然、Aランク冒険者と遜色ない実力である。
「来たぞ。私が先行する」
レイラがそう言った瞬間、剣を抜き放ち、二体の“動く死者”へと踏み込んだ。
フィオナが目で追うより早く、レイラの剣が二閃。
振り抜かれた剣が、二体の死者の胴を斜めに切り裂いた──かと思えば、その斬り口から炎が噴き出した。
「え……燃えてる!?」
燃え上がる死体たちは、火が回る間もなくまるで乾いた紙のようにあっという間に黒くなり、炭のようになって崩れ落ちた。
その全てが、ほんの数秒の出来事だった。
「うわぁ……さっすがレイラさん……」
横目にそれを見ていたフィオナは、素直に感心した。
(レイラさん、魔法使えるんだ……今まで単純に剣ばっかりだったから意外。でも、切ったところから火が出るとか、どういう仕組みなんだろう……)
それと同時に、フィオナは別のことにも気づいていた。
(そうか……首を飛ばしても動くなら、身体ごと消滅させた方がいいんだ)
フィオナはぎゅっと拳を握る。
(よーし、私もやるなら徹底的にやらなきゃね! 燃やし尽くしてやる!)
「いっきまーす!!」
フィオナは飛び出し、残る二体の“死者”へと突進。拳に魔力を集中させると、灼熱の炎が拳にまとわりついた。
炎の拳を振り抜く──
ドゴォッ!!
一撃目が直撃。拳が沈み込んだ瞬間、まばゆい閃光が炸裂した。
火花とともに光が弾け、辺りの影をすべて打ち消すほどの強烈な輝きが広がる。
「うわっ!? ちょっと派手すぎた!?」
その直後──
「うっ……くそっ」
ジークの低い呻き声が、影の外から聞こえた。
フィオナが生じさせた光のせいで周囲の影がすべて消滅し、ジークが隠れていた影も強制的に消えたのだ。
影から追い出されたジークは、不本意そうに地面に転がり出た。
その時だった。
「──みぃつけた」
耳元で、女とも男ともつかぬ、囁くような声が響いた。
ジークが目を見開いた。
「……誰だ?」
誰も見えないはずの方向から、得体の知れない何かが──ジークの背後に迫っていた。




