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イベント・冬

妊婦と胎児と産科医師

掲載日:2025/01/06




「妊娠おめでとうございます。これが注意事項です」

 医師は妊婦に一枚の紙を手渡す。

「こんなに……豆乳の飲み過ぎ?なにこれ?」

「はい。大豆にはエストロゲンが含まれてまして」

 妊婦の質問に医師は答えた。

「飲み過ぎはホルモンのバランスが崩れることが」

「過度な運動や筋トレ……ハードなのは?」

「負担が大きすぎると母子ともに危険ですから」

「陸上やってたから運動も筋トレも続けたい……」

「適度であれば推奨(すいしょう)します」

 お腹の子のためにもと前置きをして医師は続ける。

「あとは規則正しい生活と食生活ですね」

 妊婦がじっと書類を見ている中、医師は話す。

「ホルモンバランスが崩れると胎児にも、ね?」

 医師は困った笑みを浮かべ、妊婦の同意を求める。


「入院するときに気をつけることはありますか?」

「妊娠後期に胎児の状況から入院を判断しています」

 顔をあげた妊婦の質問に医師は言葉を返す。

「それまでは今まで通りで大丈夫です」

「生活や入院中はどうすれば?」

「入院中は安静に。なにかあればスタッフへ」

「トイレとかもですか?」

「ここだけの話をしますね」

 医師は声を落として妊婦に伝える。

「昔妊婦がトイレで力んだ時に出産した話が」

 妊婦は医師の一言に言葉を失う。


 ☆ ☆ ☆


「わかりました。ありがとうございます」

「ではまた来週に」

 医師が妊婦を見送る。


「お疲れ様。診察は今の方でラストよ」

 少ししてベテラン医師と師長が姿を見せた。


「今の診察、自己採点で何点ぐらいだった?」

「55点ぐらいです」

「あとで詳細聞かせてね」

 ベテラン医師が新人医師に指導する。


「知ってる?胎児の時点で性はほぼ決まるって」

 ベテラン医師は新人医師に雑談を持ちかけた。

「あれ?社会や環境で決まるって聞きましたよ?」

「それは性別」

 師長はコップにお茶を注ぐ。

「遺伝子と体と心、今はみっつの性があります」

 師長はお茶を持って話きてに参加した。


「日本では性と性別に分けられてますよ」

 師長は全員にお茶を配っていく。

「体の性は英語でSEX(セックス)

 ベテラン医師が英語を交えて話す。

「心の性は英語でGENDER(ジェンダー)

 師長がベテラン医師の言葉に続く。

「体が性で心が性別ですね」

 新人医師は話を聞きながらメモを取る。


 ☆ ☆ ★


「だからこれからは性別の平等を――」

「師長大変です!」

 腕まくりをした看護士が飛び込んできた。

「どうしたのいきなり?」

 お茶を急いで飲み終え三人は出方をうかがう。

「シャワーのお湯が水に変わりました!」

「施設課に電話――は私が!妊婦の 熱布清拭(ねっぷせいしき)急いで」

 お湯が急に水に変わると母子ともに命に関わる。

 看護師は温かいタオルの入った清拭車を探す。

 清拭車を見つけると入浴室に戻っていく。

 師長も急ぎ内線電話に向かう。


「施設課にインシデント書いてもらおうかな?」

「事後レポートです?」

「そ。医療関係者とはいえここは病院だから」

「ならトリアージやAED(自動体外式除細動器)も教えましょうよ」

「良いねそれ」

 新人医師とベテラン医師は詳細を詰める。


「よし。考えまとまった」

 ベテラン医師は(きびす)を返す。

「医事課に提案しに?」

「うん。ちょっと冒険に出かけてくるよ」

 スタスタとベテラン医師は医事課に足を向けた。


 ★ ★ ★


「さてと今のうちに」

 先ほどの冒険好きな妊婦の電子カルテを新人医師は開く。

「えーとあとは……なにがよかったかよね」

 新人医師はよかった探しを始めた。

 自己採点の結果をメモに書き出していく。

 妊娠・育児ともに女性はストレスをため込みがちです。

 男性はストレスケアに奔走してくれることを切に願います。

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― 新着の感想 ―
胎児本人にとっては勿論ですが、妊婦さんや産婦人科医たちにとっても妊娠は冒険の連続と言えそうですね。 そして出産の後も子育てという冒険が待っているのですか。 それらの冒険を乗り越えられるかどうかは、周り…
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