妊婦と胎児と産科医師
「妊娠おめでとうございます。これが注意事項です」
医師は妊婦に一枚の紙を手渡す。
「こんなに……豆乳の飲み過ぎ?なにこれ?」
「はい。大豆にはエストロゲンが含まれてまして」
妊婦の質問に医師は答えた。
「飲み過ぎはホルモンのバランスが崩れることが」
「過度な運動や筋トレ……ハードなのは?」
「負担が大きすぎると母子ともに危険ですから」
「陸上やってたから運動も筋トレも続けたい……」
「適度であれば推奨します」
お腹の子のためにもと前置きをして医師は続ける。
「あとは規則正しい生活と食生活ですね」
妊婦がじっと書類を見ている中、医師は話す。
「ホルモンバランスが崩れると胎児にも、ね?」
医師は困った笑みを浮かべ、妊婦の同意を求める。
「入院するときに気をつけることはありますか?」
「妊娠後期に胎児の状況から入院を判断しています」
顔をあげた妊婦の質問に医師は言葉を返す。
「それまでは今まで通りで大丈夫です」
「生活や入院中はどうすれば?」
「入院中は安静に。なにかあればスタッフへ」
「トイレとかもですか?」
「ここだけの話をしますね」
医師は声を落として妊婦に伝える。
「昔妊婦がトイレで力んだ時に出産した話が」
妊婦は医師の一言に言葉を失う。
☆ ☆ ☆
「わかりました。ありがとうございます」
「ではまた来週に」
医師が妊婦を見送る。
「お疲れ様。診察は今の方でラストよ」
少ししてベテラン医師と師長が姿を見せた。
「今の診察、自己採点で何点ぐらいだった?」
「55点ぐらいです」
「あとで詳細聞かせてね」
ベテラン医師が新人医師に指導する。
「知ってる?胎児の時点で性はほぼ決まるって」
ベテラン医師は新人医師に雑談を持ちかけた。
「あれ?社会や環境で決まるって聞きましたよ?」
「それは性別」
師長はコップにお茶を注ぐ。
「遺伝子と体と心、今はみっつの性があります」
師長はお茶を持って話きてに参加した。
「日本では性と性別に分けられてますよ」
師長は全員にお茶を配っていく。
「体の性は英語でSEX」
ベテラン医師が英語を交えて話す。
「心の性は英語でGENDER」
師長がベテラン医師の言葉に続く。
「体が性で心が性別ですね」
新人医師は話を聞きながらメモを取る。
☆ ☆ ★
「だからこれからは性別の平等を――」
「師長大変です!」
腕まくりをした看護士が飛び込んできた。
「どうしたのいきなり?」
お茶を急いで飲み終え三人は出方をうかがう。
「シャワーのお湯が水に変わりました!」
「施設課に電話――は私が!妊婦の 熱布清拭急いで」
お湯が急に水に変わると母子ともに命に関わる。
看護師は温かいタオルの入った清拭車を探す。
清拭車を見つけると入浴室に戻っていく。
師長も急ぎ内線電話に向かう。
「施設課にインシデント書いてもらおうかな?」
「事後レポートです?」
「そ。医療関係者とはいえここは病院だから」
「ならトリアージやAEDも教えましょうよ」
「良いねそれ」
新人医師とベテラン医師は詳細を詰める。
「よし。考えまとまった」
ベテラン医師は踵を返す。
「医事課に提案しに?」
「うん。ちょっと冒険に出かけてくるよ」
スタスタとベテラン医師は医事課に足を向けた。
★ ★ ★
「さてと今のうちに」
先ほどの冒険好きな妊婦の電子カルテを新人医師は開く。
「えーとあとは……なにがよかったかよね」
新人医師はよかった探しを始めた。
自己採点の結果をメモに書き出していく。
妊娠・育児ともに女性はストレスをため込みがちです。
男性はストレスケアに奔走してくれることを切に願います。




