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Lesson.1

「紗月、今日提出の課題ってちゃんと持ってきてる?」


 なんだかんだ遅刻することは無さそうな時間だということに気付いた紗月と美咲は通学路を二人並んで歩いていた。


 マフラーに口元まで顔をうずめるようにしながら美咲。




 対照的に寒々しい首元を晒しながら鼻の頭を赤らめる紗月の顔色がさっと青くなる。


「えっ、なんだっけそれ。数学?」


「ちーがーいーまーす。英語の課題。出てたでしょ?」


 そう言われてここ一週間ほどの記憶を急いで手繰り寄せる。


 確かに言われてみれば英語教師が今日までに提出の課題を出していたようないないような。




「……提出、二限目だよね。間に合うかな。」


「はぁ、努力するだけしてみて、駄目だったら見せてあげてもいいよ。」


 仕方ないなぁ、と言いたげな柔和な表情を見せる美咲に紗月の顔はぱっと明るくなる。


 そのまま顔の前で両手を合わせて、


「ははーっ、美咲さま様様です……。」


 なんて大袈裟にふざけてみた。


 


「もう、朝できる限りのことはするんだよ?」


 やんわりと返されるが結局は朝ついて五分もすればノートを見せてくれるのがセオリーと化していた。


 


「分かってます~~。…じゃあ美咲、朝出来るだけ進めたいしここから走って行ってもいい?」


 わざわざ少し早く着いたからと言って紗月の成績ではそこまで課題をサクサクと終わらせられる訳でもない。


 結局は美咲のノートに頼り切りになるのだがそれでも努力することは大事だよなぁ…とぼんやり考えている紗月なのであった。




「ふふ、そんなこと言うんだろうなって思ってた。いいんじゃない?走ったら少しは体も温まりそうだし。」


 考えていることくらいお見通し、とでも言いたげな表情を浮かべていると


「えっ、美咲も一緒に走ってくれるの?」


 と返される。その鳩が豆鉄砲を食ったような表情に逆に美咲の方が面食らってしまう。




「えっだって今のは一緒に走っていかないかってことじゃなかったの?」


「全然そんなつもりなく言ってたんだけど…。」


「でも今のは文脈的に一緒に走れってことかと思ったよ~?」


「いや、私そんなところまで考えてなかったのに?」




 お互いきょとんとした顔でよくわからないままに議論を重ねる。


 しかしそれも途中でふっとおかしくなり、どちらからともなく笑いが零れた。


 それが片方にも伝染し、二人して声を上げて笑う。


 澄み切った冬の空、歩道の真ん中に華の女子高校生二人。


 他の生徒のいない道で笑い声はあたりに響き渡り、近隣住民たちにはいつものことかとこっそりと苦笑されていることを二人は知らない。


 





 そうした時間が続き、力の抜けた足でゆっくりと進んでいたために結局遅刻すれすれの時間であることに美咲が気付いた。


 チャイム十分前でまだ学校の姿がやっと見えてきたような場所を歩いているのは本格的にまずい。


 喋っていて歩くペースが落ちることは言う度となくあったが、ここまで時間にギリギリになったことはそうそうなかった。


 美咲に青い顔で遅刻するかもということを告げられた紗月はそのまま走り出した。


何も言わず走り出した紗月にもすぐに順応してペースを合わせて並走する美咲。




 七分間の全力疾走でようやく昇降口に辿り着き、そこからさらにペースを上げるくらいの心持で教室に駆けこんだ。






 チャイムが鳴る寸前で教室に駆け込み、ばたばたと席に着く。


 既に九割方の生徒は教室で談笑していたり、課題をやってきていない生徒が慌てて誰かのノートを写していたり、朝練から帰ってきた生徒がいたり。


 朝の教室特有の活気があって尚且つごちゃごちゃしたおもちゃ箱のような空間に飛び込み、二人もすぐにその喧噪の中の一つとなる。




 結局登校がギリギリになったため、朝の時間に課題を移すという美咲の目標は果たされずして担任がクラスへと入ってくる。




 紗月は真剣に、美咲はややうとうとしながら先生の話を聞きながら頭の隅で考える。『今日もまた、頑張ろう』




『美咲と一緒に』。


『紗月と一緒に』。



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