想える。
今日は日曜日。色々あったから一人でゆっくり考えたい。
私は誰なの?一体何が起きたの?私はどうしたらいいの?アイツの仕業?
ベッドに仰向けに寝ていると部屋のドアが少し開く。
亜子「、、、誰?」
ゆう「おねぇちゃん。オセロやろ。」
ゆうは小さな体で大きなオセロ盤を両手で抱きしめていた。
亜子「ふふ、かわいいな。ゆう、オセロ出来るの?」
ゆう「出来るよ!僕オセロ出来るもん!」
亜子「良いよ!やろ。」
甘夏「嘘だよ!ゆうはオセロ出来ないよ!ルールも知らないし!」甘夏が飛び込んで来た。
ゆう「知ってるもん!僕知ってるもん!」
亜子「甘夏!ゆうはまだ小さいから虐めては駄目よ。」
甘夏「だってムカつくもん!」
甘夏はプイっと出て行った。
ゆうは目に涙を浮かべていた。
亜子「ゆう。オセロやろ。お姉ちゃんが教えてあげる。」
ゆう「うん!ありがとう。おねぇちゃん。」
ゆうは楽しそうにデタラメに白、黒を盤に並べている。私はゆうの頭を撫でるとウトウトしてしまう。
どのくらい時間が経っただろうか、、、
バタバタ、足音で目を覚ます。
一階へ降りて行くと母が血相を変えてウロウロしていた。
亜子「母さん、どうしたの?」
母「あ、あ、亜子!いないの!ゆうと、甘夏が!」
亜子「うそ?」
時計は6時半を回っていた。
ガラガラガラ!玄関が勢いよく開くと肩で息をする父がいた。
父「駄目だ!公園にも、商店街にもいない!今、皆で隣町まで行って声をかけてくれている。」
私は気がつくと飛び出していた。何故かはわからない。
何日か会っただけの子共達で全然弟、妹の実感なんてない。
ただ、ゆうの笑った顔や甘夏の怒った顔が浮かぶと家を飛び出していた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」私は神社の階段まで来た。何故ここへ来たかはわからない。ただ、ここに導かれた気がした。
一歩づつ階段を上がる。
?
「し、秀?」
階段を上がり切ると何故か秀が立っていた。水銀灯の明かりに照らされ、うなだれる様にうつ向く秀。
亜子「、だ、誰?」
秀(神)「、、、久しぶりだな。亜子。この世界は気にいってくれたかな?」
亜子「、、、あ、あんた。、、、何なの?これは一体?、、、そんな事より、ゆう、甘夏は何処?
あんたの仕業でしょう!返して、あの子は関係ないでしょ!」
神「自分の状況よりも弟達が心配か?成長したな、亜子ちゃん。」
亜子「あの子達に何かあったら許さない。」
神「?ゆるさない?誰が何をゆるさないんだ?君は大きな勘違いしてるね。」
神は人差し指で神社の大木を指差すとクイッと捻る。大木はスッと消え、空地が広がった。
私は神に掴みかかる。
神はフッと消え私の頭上に現れた。
神「亜子に何が出来る?二人を助ける事が出来るのかな?、、、私には出来るがね。」
私は膝から崩れ落ちた。
そのまま額を地面に擦りつけた。
亜子「、、、がい。、おねがいします。ゆうと甘夏を返して、、、下さい。」
「ゆうと甘夏を返して!」
私は泣きながら何度も叫んだ。
どのくらい時間が経っただろう。辺りは静寂に包まれる。
私は頭を上げて涙で滲む世界を見つめる。
境内の階段で仲良く肩を並べて眠るゆうと甘夏が見える
私は駆け出し二人を抱きしめて泣いた。
「良かった!良かった!二人共無事で良かった!」
ゆう「痛いよ。おねぇちゃん」
甘夏「おねぇちゃん。泣いてるの?」
甘夏は私の頭を撫でながらニコリとした。
私は初めて自分よりも大切に想えるを知った。