家族
ただいま〜
私は玄関のドアを開けると遠慮しがちに家に上がる。
「わぁ~~!」
奥の廊下から裸の男の子が走ってきた。
ゆうだ。
その後ろをオカッパ頭の女の子が追いかける。
甘夏「待ちなさい!服を着ろ!」
ゆうは私の後ろに隠れると私を見上げてニッコリ笑うと。
ゆう「おねぇちゃんお帰りなさい。」
、、、か、かわいい。何?このかわいい生き物は?
私は一人っ子だったから兄弟のいる家が羨ましかった。
奥から地響きの様な声が聞こえる。
母「亜子!帰ったなら手伝いな!ゆうに服着させて、洗濯物たたんで、終わったらご飯にするよ!
お父さん帰って来るよ!」
亜子「、、、は、はぁ。」
私は母に怒鳴られながら事を終わらせると父親の帰りを待つ。
程なくして父親が帰ってきた。
「ただいま〜。」
ゆうと甘夏が玄関へ走って行く。
ゆう「お父さん、おかえりなさい。」
甘夏「お疲れ様でした。おかえりなさい。」
父親は油に汚れた作業着が子供に付かないようにゆうの頭を撫でるとニコリと笑う。
痩せた頬、深いシワ、洗っても落ちない油で汚れた爪。
そこには、身を粉にして働き家族を守る父の姿があった。
母は出来たての料理を運び、お風呂から出てきた父が座るのを待つ。
父親が座ると皆で手を合わせ頂きますをする。
ゆうがピ−マンを食べない。甘夏が無理やり食べさせようとする。
母が怒鳴り、父親は黙々と食べている。
多分、何処にでもあるシ−ンなのだろう。
しかし私には初めてでとても新鮮で心が温かくなる。にこりと微笑む。
「いいな、家族って。」
母はそんな私を見て「あんた大丈夫かい?商店街の人達が心配してたよ。亜子ちゃんが普通だって。」
亜子「、だ大丈夫だって。今の私が普通だと思うよ。」
母「あんた、牛乳は?」
亜子「、、、やっぱり覚えてた?」