コーラルピンクの空を白い飛行機が飛んだ
黒森 冬炎氏主催の移動企画、タイムサービス参加作品です。
君は訊く。
「ねえ、何になりたいの? 将来」
君は机に腰かけて、足をぶらぶらさせている。
僕は答える。
「パイロット、かな」
それは本音が少し。見栄がたくさん。
僕は尋ねる。
「君は何をしたいの? 大人になったら」
君は答えた。
「サンゴ礁。サンゴを守りたい。海の番人になる」
きっとそれは君の本気。
だから僕は、ちょっと悔しい。
放課後の教室。
二人だけの空間。
黒板には消し忘れの、『SDGs』の文字。
手持ち無沙汰の僕は、答案用紙を折り曲げる。
君は窓を開ける。
「ねえ」
君は窓辺で笑う。
「連れてってよ。君がパイロットになったら」
僕は折り曲げた紙を持ち、君に尋ねる。
「何処へ? 別に、いいけど」
ぶっきらぼうに、僕は答える。
これも本音。
本音の奥に隠した、僕の本心。
君の声は、窓からの風に乗る。
「沖縄。沖縄の海!」
夕陽が君の唇を、珊瑚の色に染める。
「いつか、行こう。一緒に」
照れた表情を見せたくないから、僕は窓から放る。
折ったばかりの、紙飛行機を一つ。
夕焼けに染まりながら、紙飛行機は飛んで行く。
僕は君の肩を抱き、唇を重ねる。
紙飛行機の軌跡は、もう見えない。
蔵出し作品その1。詩に変えました。