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~対決編~

翌日、古岡は写真撮影のためにとある撮影スタジオにいた。

カメラマンが彼女に一言一言声を掛けながら、シャッターを押していく。


「いいね。いいよ」


笑顔でポーズを決めていく。その笑顔の奥には既に勝者の思いでいっぱいだった。

消したい人物は消した。あとは華やかな人生が待っている。


撮影が終わり、近くの椅子に座っていると、近くから


「あの、古岡美優さんですか?」


女性の声だった。柴田でもない、誰だと思い振り向くと、そこには小柄でスーツ姿の女性が立っていた。

知らない顔だった。


「あの、どちら様ですか?」


「あっわたくし」


裏胸ポケットから警察手帳を取り出し


「警視庁捜査一課の岡部と申します」


何でこんな早くに。

そう思うのも当然だ。計画だと、1週間経っても来ないはずだと思っていた。でもなぜに警察が私のところに、あり得ない。そう思いながらも


「あ、あの。私に何の用ですか?」


「実は、この方をご存知かなと思いまして」


そう言い岡部は、石川の顔写真を見せた。

本当は知らないと言いたいところだが、どうせこの刑事は全てを調べている。そう思い


「あぁ、知ってます。以前一回だけ会ったことあります」


「あっそうですか」


常に笑顔でいるこの女は何者?もしかしてただものの刑事ではない。でも何か聞かなきゃと思い


「あの、何かあったんですか?」


岡部は少し表情を曇らせ


「あっ実は、遺体で発見されました」


「え?そうなんですか?」


演技には自信がある。何を聞かれても冷静に。まさか自分が犯人だと思わせない程度にと、自分に言い聞かせていた。


「はい」


「なんで亡くなったんですか?」


「私たちは、殺人だと思っています」


「殺された?誰にですか」


「えっと、強盗の線が強いです」


全て計画通り、このままいけばこの事件はそのまま終わる。

解決されれば、私はある意味の自由の身。少し微笑みたかったが、それを抑えていた。

しかし、次の仕事があるために


「すいません、次の仕事があるので、これで失礼します」


その場を去ろうとすると岡部が


「あっすいません。もう一ついいですか?」


何も考えずに岡部の方に振り返り、笑顔で


「なんですか?」


「実は、少し気になることがありまして」


「気になること?」


どうせ刑事の考えることはくだらない、そう思いながら聞き返した。

岡部が古岡に近づきながら、5枚の写真を渡す。その写真は石川の自宅写真だった。

この自宅を見るのは2回目だったが、一体この刑事は何が言いたいんだと思いながら


「これは?」


「先ほど亡くなった方の自宅です」


戸惑うふりをしながら


「そうなんだ。でも私にこれを見せて何のご用ですか?」」


「これを見て何か気づくことはありませんか?」


よく写真を見るが、ただ窓ガラスが割れていたり、最後の写真に至っては石川の死体写真だった。もう2度と見たくない光景だったが、無理やり見つめたが、何も感じずに


「何も感じませんけど?」


「そうですか。いや実は、1つ私にとっては気になる点があるんです」


「それは何ですか?」


写真を岡部に返し、岡部が写真を1枚ずつ見せながら


「被害者が亡くなったのはリビングでした。そこから真っ正面にある窓ガラスから強盗が侵入し、被害者は殺された。これが他の刑事の推理です」


「それが正解じゃないんですか?」


「えぇ、私も最初はそう思いましたが。これを見てください」


岡部が見せたのは何やら壺の破片だった。

それを見ると、寒気がした。最初はどこかで見た事のあるは変だなと思ったが、思い出した。石川を殺害した時に凶器として使った壺だった。

岡部はその写真を見ながら


「壺が割れているんです。それ別にいいんです。でも残りの破片が見当たらない」


「捨てたんじゃないんですか?」


「しかし、壺の破片は燃やさないゴミの日になります。それも前回の燃やさないゴミの日は先週にあたります。別にそれはどうでもよくて。もう一つ気になる点がありまして」


少しイラつきながら


「何がですか」


「何故犯人は、壺で被害者を殴ったんでしょうか」


「え?」


何のことだかさっぱりだ。この刑事は私に何が言いたいのかさっぱりだった。岡部は続けて


「だって考えてみてください。窓から侵入した時に石川さんがいたんですよ。それに窓の隣はキッチン。まず見つかったら何で殺すと思いですか?」


「そ、それは包丁でしょ」


当たり前の質問だ。てか私は強盗じゃないし。そんなの聞かれたって困るわと思っていた。

岡部は発言を始めて


「そうです。包丁で刺し殺すか。もしくは首を絞めて殺すか。どっちかしかありません。しかし犯人はわざわざ石川さんがいるリビングまで近づき、挙句の果てにあまり目立たない壺で殴りつけた」


「でも、相手は女性ですよ。抵抗もあまりできないはずですよ」


岡部は笑顔になり、自分を見つめる。それに少し不気味を覚えながらも


「な、なに?」


「ではなぜ、犯人は家具を散らかしたんでしょうか」


「え?」


岡部は家具が荒らされた家の写真を見せる。確かに自分は強盗の線に見せかけるために荒らした。でもそれに何が関係しているというのだ。岡部は続けて


「だって。仮に強盗の線だったとしても、犯人は彼女を殺してわざわざ、家具を荒らした。どう見ても不自然な動きです」


確かにそう思った。今さらだがいらない行動だったと、自分ではある意味の後悔の念を抱いていた。何も言えずに黙っていると


「まぁお忙しいところですよね。すいません。邪魔をしてしまって」


岡部は礼を言って。その場を後にしようとした。自分は少しホッとしていて一言ため息をつくと


「あっもう一ついいですか?」


岡部が振り向きざまに言った。それに戸惑ったのか


「え、あっなんでしょうか?」


少し笑顔で言ったのを少し後悔した。すると岡部が


「おそらく犯人は女性です。首を絞めて殺さなかったことと包丁で刺して殺さなかったこと。それを考えて、犯人は白服の女性です。それでは」


冷静に言った岡部に、少し恐怖を浮かべながらも考えた。確かに自分は握力が無い、だから石川の首を絞めて殺すには時間が掛る。包丁で殺すのも、確かにあの日は白服で返り血を浴びて疑われてしまう。もしかしたらあの刑事、凄腕なのかもと。


次の仕事はドラマの脇役撮影で野外だった。今回のドラマは推理ドラマ、自分にはなめているのかと皮肉を思うほど。役は被害者役、犯人にナイフで刺されて殺される役だ。これも皮肉をにじませることしか出来なかった。

すると中年の監督が椅子に座っている自分に近づいてきて


「今日は頼みますよ。美優ちゃん」


そう言い去っていった。確かにこの監督とは長年映画や舞台などでたまに会うくらいだが、初対面の時からこの調子だ。恐らく好意を持っているんだろ。でもこんなおっさんとは死んでもごめんだ。そう思いながらも台本を読んでいると


「すいません」


声の方を振り向くとそこには岡部の姿があった。またかこいつと、次第にストレスが溜まってくのが自分の体でも分かっていく。

少し低い声で


「なんですか岡部さん。こんなところまできて」


岡部は冷静に


「いや、また気になることがございまして」


丁度マネージャーの柴田がお茶を買っている最中に来たため、絶対に見計らってきただろって思いながらも


「それって。聞き相手は私じゃないといけないの?」


「いえ、関係者おひとりずつ聞いてますので」


絶対に嘘だろ。そう思いながらも


「へぇ~そうですか」


完全に馬鹿にしたような感じで言った。岡部はそれでも冷静に


「実は、自宅から無くなっているものがございまして。探してる途中なんですが、それはともかく、この写真を見てください」


そう言い、岡部は一枚の写真を取り出した。その写真の中には壺のようなものがあった。

なんか見覚えのある壺。そうそれは自分が石川を殺すときに使った壺だから。でもなんとかとぼけなくちゃと思い


「それは」


とっさに出た言葉だ。すると岡部は


「あれ。ご存知かなと思いまして」


「どういう意味?」


少し怒りの言葉をにじませながら言った。岡部は笑いながら


「だってこの壺。破片ですがあなたにお見せしたはずですよね。壺の破片にはこの富士山の絵があったはずですから、印象深いと思いまして」


「そんなの。覚えてるわけないじゃない」


完全にキレながら言った。すると他の出演者がこちらを見たため、少し冷静になりながら


「で、要件は?早めにしてください。急いでるんで」


「分かりました。実は先ほどから考えてまして。どうして犯人はこの壺で石川さんを殴ったのか」


「どういう意味?」


「はい。実はこの壺、約9000万円する高価な壺なんです」


「へぇそうなんですか」


少しわざとらしく言った。なぜならこれにも深いわけがあった。それを見破れないと思っていたからだ。


「はい。ですがこの殴られた時の壺は偽物です」


「はい?」


「そもそも、なぜあなたのところを訪ねたのか。それは最近ドラマオーディションに参加されましたよね」


自分は笑顔で


「はい。そうですけど」


「えぇ。それともう一つ。あなた美術専門資格をお持ちになられてますよね」


「え?」


まさかの言葉に絶句した。そう実は自分は美術専門資格を持っていて、絵画や壺はほとんどを記憶している。本当はその専門の分野に行きたかったが、挫折した経験を持っている。

しかし、それを知ってるなんて思いもしなく


「何故それをご存じなんですか?」


「えっと。ここからが本題なんですが、実は先ほどの壺は、言った通り時価9000万円する高い壺です。ですが、犯人がそんな高い壺を殴るのか。その前になぜ殴れたのか。それはただ一つ、偽物だと最初から見破れてたから」


そのことを言われ、少し動揺が隠し切れなくなる自分。岡部が続けて


「えぇ犯人は、美術に精通している人物です。それに加え、オーディション参加者だと踏んでます」


「それはなぜ?」


そこまでなぜ踏んでいるのか。信じられない気持ちでいっぱいだったが、岡部が続けて


「はい。彼女の周りには友人どころか家族も、完全に見放しているみたいなんです。理由がわかりませんが、その影響か。恨む人物も多かったみたいです」


「じゃあ、その恨んでいる人を疑ったら?」


「えぇ、それも考えました。ですが、実は石川さんの家には常に家政婦さんがいました。しかし、オーディションの日に限って休ませてるみたいなんです。それも全員」


確かにあの日は誰もいなかった。あんな豪邸なのに家政婦の誰一人いない。そんなのおかしいと思ってたが、やはりそうだったか。今やっと納得した。

岡部は続けて


「それでやっと確信を持てました。犯人は石川さんから招待された人間だと」


「え?」


「実は、この手帳からとあることを突き止めまして」


そして一冊の手帳を取り出す。するとそれを開き読み上げる岡部。


「えっと。これは昨日ですね。「オーディション参加。その後私の家で話し合い」と書かれています」


自分は何も言えず黙っているままだった。余計に反論すると怪しまれると思っていたからだ。

すると奥から、監督が


「美優ちゃん。そろそろ」


自分は大きな声で返事をした。


「岡部さん。そろそろ私も付きまとうのやめてもらいません?いい迷惑なんです」


そのまま岡部はその場を後にした。しかしそろそろ自分が逮捕されるなんて思いもしなかった古岡であった。





~第2話終わり~

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