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先輩!後輩!

 異連鎖から来た女神の女の子。エックスはエビチリを人間サイズの大きさにしてあげて彼女に御馳走する。一人分足りなくなってしまった。もう一品おかずを作ろうか。冷蔵庫の中に何かあったかな、と考えてみる。


「もぐもぐ。もぐもぐ」


 女の子はすごい勢いでエビチリとご飯を交互に口に運ぶ。机の上でちょこんと座って一心不乱にがつがつとご飯を食べ進めていく小さな彼女の姿は可愛らしい。小動物みたいだ。と、ここで。そういえば彼女の名前も知らないのだったなとふと気付く。


「それでキミはどこのどなた?この連鎖の人間じゃないのは分かるけど」

「ええとですね。もぐもぐ。アタシは『天拳の連鎖』ってとこから来ました。もぐもぐ。名前はもぐもぐ」

「フフッ……。なるほど。もぐもぐさんだね?」

「ち、ちがっ。もぐもぐ。アタシはアルカっていって……」


 慌てて訂正する姿が可愛らしくてエックスはくすっと笑ってしまった。


「アルカちゃんか。どう?美味しいでしょ。結構自信作だからね」

「あ、はい!ピリっと辛くてとっても美味しいです!」


 嬉しい言葉だ。こういうお褒めの言葉は幾らあってもいい。自分で作った料理を人に食べてもらうことでしか得られない栄養がこの世にはある。


「アルカちゃんは一体何をしに来たの?まさかボクと戦うために来たわけ?」

「あ、はい。戦うために来ました」

「マジか」

「アタシさっき、宿敵のミゾリオンをやっつけてからすっごいパワーアップしたんですよね!で!今ならどんな相手でも倒せる気がして!アタシ強い相手と戦うのが好きなんです!それで一番強そうな相手を追いかけてここに来ました!」

「そ、そっか……」


 こういうと可哀そうだが、身の程知らずにも程がある。アルカの実力は神さまの領域に至っている。しかしその力は神さまの中では下の下の下。はっきり言ってとても弱い。多分ボウシとかキリツネよりも弱い。そんな実力でエックスと戦おうとしたって相手になるわけがない。神様になったことで文字通りの全能感に支配されたせいで自分の実力を正しく見極めることが出来なくなっていたのだ。


「最初に勝負を挑んだのがボクでよかったね。自分で言うのもなんだけど。他の連鎖の神さまはだいたいボクより弱っちいけどボクより容赦ないよ」

「ええっ。本当ですか?巨人さんよりも?」

「巨人じゃないよ。ボクは……」

「ただいまー。……お?」


 呑気な調子で帰宅した公平は見知らぬ女の子の姿に困惑する。普段の自分と同じように机の上に座り、普段の自分のようにご飯を食べている。公平はエックスを困惑した顔で見上げた。


「どなた?」

「『天拳の連鎖』ってトコの神さま。さっき神様になったばっかりで、すっごく強くなったから腕試しにボクと戦うために来たんだって」

「命知らずだなあ」


 一発目に挑むハードルにしては随分と高すぎる気がする。もうちょっと段階を踏んでもいいのではなかろうか。


「ご馳走様!美味しかったあ!……ん?どなたですこの弱そうな人」

「よわっ……」

「あ、でも。秘めてる力はなんだか強い。アンバランスで気味が悪いですね」

「なんだコイツ……」


 すごい失礼だ。不服というか、釈然としない表情をする公平に対して、エックスはなにやら不敵な含み笑いをしはじめる。


「彼は公平。ボクの弟子で、旦那様さ」

「で、弟子!?」

「……そっちで驚く人初めて見た」


 大体の場合でこの身長差で夫婦として成立していることの方に驚愕することが多いのだが。アルカは師弟関係であることで驚き、そして落胆していた。


「だって!アタシの方が弟子になりたかったのに!こんなに強い人ってアタシ初めて会ったもの!亡くなったお師匠さんも言ってたわ!『師匠は何人いてもいい。自分にないものを持っている者はみな師匠と思え』って!やっと意味が分かった気がします!」

「……なんか意味がズレてる気がする」


 アルカは公平の呟きは無視して、きらきらとした眼差しをエックスに向け続けた。エックス的にはこういうアプローチをされるのは正直言って初めてである。困ったように頬を掻き、申し訳なさそうな顔で言う。


「悪いんだけどさ。ボク今公平以外に魔法とか戦い方を教える気はないから……」

「なるほど!つまりはコイツをやっつけてアタシの方が強いってことを証明すればいいんですね!」


 どういう思考回路でそういう結論に至ったのか分からないが、とにかくアルカはその答えを導き出して、公平に対して構えた。その瞬間、彼女の全身から迸る、自分とは比べ物にならないほどに巨大な力に圧倒されてしまい、公平は一歩も動けなくなる。呼吸さえ苦しい。


「はぁあああああ……!」

「こらっ」


 そっと。エックスは公平とアルカとの間に手のひらを置く。彼女の手が壁になってアルカの威圧が遮られたおかげか、公平は動けるようになったのだが、動くよりも先にエックスは手を握って彼を守るように捕らえてしまう。


「ダメだよっ!っていうかそういうことじゃないし!ボクは他の誰かじゃなくて公平を強くしてあげたいんだよ!」

「そんなあ……。それじゃあアタシのこの想いはどこにぶつければいいんです?」

「知らないよそんな事」


 けんもほろろである。アルカはしゅんと落ち込んだ。


「……っていうかさ。引き留めたのはボクだけど。いつまでもこんなとこに居ていいの?」

「え?どういうことですか、師匠?」

「師匠じゃない!いや、それは置いておいて……。だからね……」


 エックスは話した。自分の経験談を。それまではそんなことなかったのに、ランク100になって全能の魔女になった途端に他の連鎖の神さまが挑んでくるようになったということを。


「ボクは神さまじゃないけど。その時には一般的に神さまとして定義される最低ラインは優に超えていた。そうしたら色んな相手に襲われるようになったんだ」


 連鎖の神さまたちは基本的に自由気ままに侵略を行うが、一つだけ全員が守っているルールがあった。それは『神のいない連鎖は侵略対象とはしない』ということ。そういう連鎖は自分たちのものよりもずっとずっと劣っている。負ける可能性が皆無の相手だ。だがだからこそ、そんな相手を痛めつけるのはダサい。神さまとしての格を自ら落とす行為だ。だからやらない。あくまでも襲うのは神さまのいる連鎖だけだ。


「それがアタシとどう関係が?」

「だから。他の連鎖がさ。『天拳』を襲うんじゃないの、って話よ」

「え、えええええ!?大変だ!アタシ帰ります!あ、また来ます。お昼ご飯ご馳走様でしたー!」


 そう言って。突然現れた女神の少女アルカは自身の連鎖へと急いで帰っていった。まるで嵐のような女の子である。


「なんだったんだ今の……」

「さあ……」


 公平はふとエックスの顔を見上げた。どこか心配そうな表情。公平は小さく微笑んで尋ねる。


「気になる?様子見に行く?」

「……お昼ご飯もう少し遅くなってもいい?」

「いいよ。全然オッケー」


--------------〇--------------


「ヒャハハハハッ!思った通りだぜー!この連鎖雑魚しかいないぜー!」

「男は嬲り殺すぜー!女は犯してから殺すぜー!めっちゃ楽しいぜー!」

「いくぜー!みんなー!螺偉怒様にこのクソザコ連鎖を献上するぜー!」


 『天拳の連鎖』に突如現れた怪物。黒が混じった緑色の体色。身の丈3mを超える大きな身体。頭に生えた小さな角。鋭い牙。赤く吊り上がった瞳。さながら鬼のような姿をした彼らは『鬼牙の連鎖』の住人でる鬼人。大地を埋め尽くす、万を超える軍団の真ん中で腕組している一回り巨大な鬼人は『鬼牙』の神。鬼神・螺偉怒である。

 『鬼牙の連鎖』は『聖技』と同盟を結んでいる連鎖の一つだ。かつてのアルル=キリルとの決戦の際、螺偉怒は圧倒的な力でアルル=キリルを葬り去るア・ルファーの姿を見た。その後はすぐに『聖技』との同盟を呑んだ。ルファーの力の前に屈したのである。

 だがしかし、『聖技』と同盟を結んでからも、螺偉怒の中から侵略欲求・破壊欲求・殺戮欲求が消えることは無かった。この収まらぬ想いをどこかにぶつけたかった。

 『魔法の連鎖』にエックスが現れた時は真っ先に侵略をしようとした。だが『神秘の連鎖』のトルトル神に先を越される。トルトル神は螺偉怒より強い。だから手が出せなかったのだ。そのトルトル神さえもエックスには一撃で敗れた。ざまあみろと思いつつも襲わなくてよかったと胸を撫でおろしたりしたのである。

 そして今回。久方ぶりの侵略だった。『魔法の連鎖』とは違って弱い者しかいない。雑兵の鬼人どもでもこの連鎖の住人を、力を使うことなくあっさり倒している。この連鎖は弱い。この分なら、すぐに侵略を終えることが出来る。


「やめろおおおおおッ!」

「むっ?」


 空間の壁を殴って破って現れた少女。アルカであった。螺偉怒は彼女こそが『天拳の連鎖』の神であると一目で分かった。


(だがまだなりたてだ。この程度なら俺の敵じゃあない)


 蹴りかかるアルカの足首を掴みとると、そのまま地面に叩きつける。彼女の口から空気が漏れた。


「残念。俺はお前よりもずっと強い」

「く、っそォ……!」


 アルカの目には仲間が次々倒れていく姿が見えた。またしても、自分の弱さを自覚する。鬼人にみんなが嬲られていく。女の子は服を剝ぎ取られた。男の子は散々に殴られていた。そしてゾルトラも……。一対一であれば彼が負ける相手ではない。だが鬼人は徒党を組んで、ゾルトラを痛めつけていた。


「や、めて……!」

「ダメだな」


 螺偉怒はアルカの頭部を踏みつけ、ぐりぐりと踏み躙る。


「見たか天拳士ども!お前らの希望は潰えた!この連鎖はこれから俺たちの……」

「うぎゃああああ!?」

「どわあああああ!?」

「なんだぜこれー!?」

「あン?」


 背後から鬼人たちの悲鳴が聞こえる。同時に感じ取った果てしなく大きな力。かつて見たルファーのような、相対するだけで挑む気が失せる巨大な力だ。


「な、んだと……!?」


 バッと振り返る。二人いた。一人は人間の男。この辺りにいる天拳士よりも強い力を秘めている。鬼人たちの一団を一撃にして吹っ飛ばしたようだった。だが所詮は人間。取るに足らない相手である。それよりも問題なのは。その男のすぐ後ろで腕組しながらこちらを見下ろしている巨人の方だった。


「あ、か、が……。な、んで。こいつが、エ、ックスがここに……?」

「……好き勝手やってるみたいじゃないか。せっかくだしボクも混ぜてよ」


 一目見ただけで分かる明らかに不機嫌そうな表情。螺偉怒の背筋が凍る。何故ここにエックスが現れたのかは分からない。だが今はもうそんなことを考えるべき段階を超えている。


(どうする?どうやってやり過ごす?)


 螺偉怒はその頭脳をフル回転させてエックスへの対処を考えた。その隙に乗じてアルカは『天拳』を放ち、螺偉怒を吹っ飛ばす。


「はあああああ!」

「ちょ、まっ……!今はお前の相手をしてられ……」


 少なくとも今すぐ撤退した方がいいのは分かる。『聖技』と絶賛抗争中の『魔法の連鎖』に喧嘩を売ってもいいことなんて一つもない。


「あの人間強いぜー!むかつくぜー!」

「でも所詮人間だぜー!みんなでかかれば勝てるぜー!」

「いくぜー!いくぜいくぜー!みんないくぜー!」


 だというのに鬼人は勝手に『魔法の連鎖』と戦おうとしている。実際に戦いになってしまったら最悪である。螺偉怒は流石に慌てた。


「お、おいてめえら!」


 その隙を。アルカは見逃さなかった。


「よそ見するなァ!」


 鬼人たちに意識を向けた無防備な頭に『時壊拳』を叩きこむ。


「ちっ!?」


 ほとんどダメージはなかった。だが、鬼人たちへの指示が遅れた。螺偉怒にとってはそれが一番の問題だった。


「いくぜー!」

「行くなー!」


 公平は迫りくる鬼人たちに対して構える。もう一度『ギラマ・ジ・メダヒード』で吹き飛ばすか……と考えていたところで、エックスが腰を落とし彼を拾いあげた。


「え、エックス!?」

「ここはボクがやるから」


 言うとエックスは手を天に突き上げた。そこから雲に向かって光が伸びていき、雨のように降り注ぐ。その一つ一つがエックスのキャンバスの一部。それらが鬼人たちの中に入っていく。以前『心錬』でベール・タニアにやったのと同じことだ。


「つ・ま・りっ!」


 迫りくる鬼人たちを纏めて蹴り飛ばす。気絶させたところから順番にキャンバスを回収していく。鬼人たちは疑似的に魔法使いになった。それ故に神である螺偉怒の防御が発生せず、直撃を受けてしまったのである。

 螺偉怒はぽかんとその光景を見た。エックスが何をやったかは分かる。その理屈も分かる。だがそれを実現できるほどの力があるのが信じられない。万を超える鬼人を対象に力を分け与えても平気そうにしているのだ。自分が同じことをやろうとしたら絶対に力が足りない。


「螺偉怒さまあぎゃあ!?」

「うわああっ!?たす……べっ!」

「逃げるぜー!みんな逃げ……あぎゃ!」

「やばいぜー!やばいぜー!やば……ぐえっ!」

「いやだぜー!まだ死にたくないぜー!死にたく……ぶっ!」


 鬼人たちは順番に踏み潰されたり蹴り飛ばされたりしている。エックスが行動を起こす度に地面が揺れて大地がひび割れる音がして、代わりに鬼人の声が聞こえなくなる。アルカを適当にあしらいながらエックスに蹂躙される鬼人たちの姿に冷や汗が流れ落ちる。

 蹴り飛ばされた一人の鬼人が螺偉怒のすぐ傍に飛来してきた。意識はないが死んではいない。息はしているし傷も殆どない。


「一体どういう……」


 また一つ。エックスが地面を踏みしめた。その足の下には数十を超える鬼人がいて、助けを求める声がする。


「重いぜー!暗いぜー!恐いぜー!螺偉怒さまー!」

「むっ。女の子に『重い』とは失礼な鬼だな。こうしてやるっ!」


 ぐりぐりとエックスは足に体重を乗せて鬼人を踏み躙った。すぐに彼らの声が聞こえなくなる。


「さあ、次々!」


 ずんずんとエックスは螺偉怒とアルカの元へと歩み寄ってくる。と思うとそのまま通り過ぎていきまた別の鬼人を追いかけ回し始めた。だが螺偉怒は見てしまった。エックスが通り抜けざまににやにやとした表情でこちらを見つていたことを。すぐに彼は理解する。彼女は自分がこの鬼人の頭領であることを分かっている。そのうえで彼女は螺偉怒を無視している。

 エックスが通った場所では鬼人だけが気絶していた。天拳士も平等に彼女の足の下敷きになっているのに、そちらはまるで平気そうな顔できょとんとしている。そういうこともあり得ないことまで出来るということだ。その気になれば気絶すら許さずに延々痛めつけることだって出来るかもしれない。


(や、やばい……!)


 このままでは最終的にメインディッシュとして自分がエックスに痛めつけられる。そうなることに気付いた螺偉怒はなにか打開策はないか考えた。まず勝つ手段はない。それを前提としたうえでこの状況から抜け出す手段を模索する。視界に映るのは必死になって打ちこんでくるアルカの姿。


(あ、そうだ……!)

「はああああッ!くらええええええ!」


 起死回生の一手を思いついた螺偉怒の腹部にアルカの渾身の一撃が突き刺さる。しかして痛くも痒くもない。だが。


「ぐああああああッ!?な、んだとおおおお!?こ、の土壇場でパワーアップするとはぁ!?……ぐふっ!」


 芝居っぽかっただろうか。まあいいや。とにかく螺偉怒はこの一撃をもって倒れることにした。


「……か、った?」


 アルカは茫然としている。螺偉怒はその場に仰向けになって気絶したふりをした。流石にもう負けた相手に追い打ちをかけることは無いだろうと踏んで。それが甘い考えであることを彼はもうすぐに思い知ることになる。


「やった!勝った!アタシ勝ったよ、みんな!」

(そうだ。お前の勝ちだ。それでいいからこれで終わりに……)

「まだだよアルカちゃん?」

(!?)


 ずんずんと巨大な足音が迫ってくる。気絶したことになっているからもう目を開けることもできない。だから却って恐い。エックスが今どんな顔をしているのか。これからなにをするのか。まるで分からないまま沙汰を待つ。死刑囚にでもなった気分だ。


「あ。えーっと。あ、そうだ!先輩!」

「先輩?ボクのこと?」

「はい!アタシよりも先に神さまになったから先輩です!」

「ボクは神さまではないんだけど……。まあいいや。先輩で。それならキミは後輩だね。あのね後輩ちゃん?コイツ多分死んだふりしてるだけだからさ。きっちりしっかりトドメ刺さないとダメだよ?そうだろ公平?……ちょっと。なんでちょっと引いてるのさ」

「え!?死んだふり!?で、でもアタシもう戦えないですよ……」

「ふふっ。全くもう。仕方のない後輩だなあ。それじゃあ先輩であるボクが代わりにトドメを刺しておこう。きっちりしっかりとね!」

「わっ!ありがとうございます!」


 闇の中。物騒な会話が繰り広げられる。まな板の上の鯉とはこのこと。死んだふりは悪手だったか、と後悔する。


「よーっしいっくよー!」


 よく分からないけど。なにかが来るらしい。きっとすごく痛いことだ。


(~~!仕方ねえ!)


 螺偉怒は意を決して目を開いた。『聖技』に屈した時、すでにプライドは失っている。始めから無いものなのだからこれから先どれだけ情けなくたって構わない。


「悪かった!もうしない!だからやめてくれ!こうさ……」


 起き上がった彼の目に飛び込んできたのは。ごおおおおと勢いよく風を切る音と共に、巨大なスニーカーが迫ってくる光景だった。


「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!?」


 螺偉怒の巨体を数十キロ先にまで吹っ飛ばした。この一撃で螺偉怒は完全に気絶した。


「ま、ざっとこんなもんよ!きっちりしっかりトドメを刺すならこれくらいやらなきゃ!」

「すっごぉい……!先輩すごーいっ!」

「ふっふーん!もっと褒めてよいぞ?後輩?」


 胸を張るエックスとその足元でバンザイバンザイと大はしゃぎしているアルカ。彼女らの周りでは気絶した鬼人たちが死屍累々といった感じで転がっている。結果だけ見れば悪いことはない。誰も死んでいないし。ただ悪い奴を懲らしめただけだ。ちょっとあまりにもビジュアルが酷いだけで……。


「……まあ。エックスに友達ができたみたいだし。いいか……」


 ということにする公平であった。

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