表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第2話 学校に天使あらわる

次の日谷口さんは学校を体調不良のため休むと先生から連絡がきた。しかし、彼女はそこにいる。天使の羽を広げて。


何をやってるんだ。


「君も一度は考えたことがないかい?透明人間になりたいと。私は今その夢を叶えてるんだ」


何でそんな壮大に僕の授業を邪魔しながらいってるんだ。口には出したいが僕の声は皆に聞かれてしまう。一瞬で変人の完成だ。

無視を続けると谷口さんは飽きたようだ。何やら宙を見上げて難しい顔をしている。

突然彼女の大きな羽は小さくなった。


「うおっ!本当にできた」


女子らしかねる声をあげるとご機嫌で教室を歩いている。


一時間目は数学。僕は勝手に数学を高校生を苦しめる呪いだと思ってる。呪いはスポーツ推薦をで大学を決めており今もなおサッカー部として活躍しているクラスのムードメーカーを襲う。


「えー、じゃあこの公式を答えろ。そこの寝てる青山」

「はっはい!」


慌てて起きた青山くんは教科書を見て小声で呟く。


「奇跡だ!教科書が公式のページだ」

「カンニングとはいい度胸だな」


そしてバッチリと先生に聞こえてる。


「「「ははっ」」」


教室から笑いが起きる。

ちなみに僕は笑えない。谷口さんがご丁寧に教科書を開いたことを僕は知っているからだ。


その後も谷口さんの人助けは続いた。落としかけた消しゴムを元に戻したり、くしゃみをしているひとにそっとティッシュをポケットに差し込んだり、随分と小さなことだった。それでも谷口さんは皆がちょっと不思議そうな顔をしているのを満足そうに見ていた。


そして、不思議なことが起こった。



真面目な山下君はいつもひたすらに真っ直ぐ黒板を見ている。そんな彼を岡野さんは授業中たまに盗み見る。


その視線上にいる僕としては迷惑を被ったことがある。だって、もしかして僕が見られてるのではないかと考えてしまうのは仕方がないことだろう。


岡野さんが山下くんを見るのは一瞬だけ。その一瞬で僕と目が合ったことはあるが山下くんとはないはずだ。

その二人の目が僕をすり抜けてぶつかった。

岡野さんは顔を真っ赤にしてすぐに前を向く。山下くんにその熱は伝染する。いつも顔色一つ変えない山下くんのこんな表情は見たことがない。ゆっくりときっと大きな何かが変化していく。


ハートの弓によって。

谷口さんの体から先がハートの形になった弓が山下くんに向かったのだ。刺さった瞬間山下くんは岡野さんの方を見た。 一つの恋が始まった。


弓は音もたてずに崩れて消えた。谷口さんは心底驚いた顔をしている。確かに弓は山下くんに刺さったようだが怪我をしている様子は無さそうだ。だから谷口さんはそんな泣きそうな顔で僕を見なくても大丈夫だよ。

  

一時間が終わった。


二時間目は英語だった。

ALTの先生がいつも通りに決まった英語の挨拶をする。僕たちは元気でもないくせに元気だと英語で答える。頭なんて一ミリも使ってない。一体これに何の意味があるのだろう?


そしてALTの先生は日本語は話せるくせに全て英語で授業の説明をする。



僕が小学生の時に先生は日本語が全く分からないだと思って話しかけられるたびに精一杯英語で話そうとしていた。伝わっているのかどうかも分からない先生との会話は僕にとって特別なものだったのだと思う。しかし、先生がおもっいきり日本語で話しているのを耳にして騙されたように感じたのを今でも覚えている。


何でこんなことを考えているのかといわれれば先ほどまで言動がうるさかった谷口さんが静かだからだろう。謎の余裕がうまれてる。


「なんだこれ!?英語が理解出来る!」


リスニングの途中で大声で言わないでくれ。

谷口さんは自宅で教材でも取り寄せて勉強でもしたのか。そしてその教材の宣伝の漫画の主人公でも狙ってるのか。



三時間目もちょっとしたことが起こった。

僕の学校の旧校舎は今、改装中だ。校庭はその近くにある。そして体操をしていたとき鉄パイプが落ちてきた。


影が僕たちを覆って何人かが空を見上げた。悲鳴なんて誰もあげられなかった。ただ理解出来ない頭で視角だけが現実をとらえ、はっきりと鉄パイプが落ちてくるのを認識した。


しかし、僕たちが死ぬことはなかった。鉄パイプは見事に僕たちをよけて落ちた。


その後のゴタゴタは僕の頭に残っていない。だってあまりにも綺麗だったから。僕たちの中心で手を合わせて神に願ってる彼女は。




昼休みになった。僕は旧校舎に入っていく谷口さんを見つけた。谷口さんとようやくゆっくり話せると思い僕は谷口さんを追いかけた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ