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THE GAME  作者: 井上達也
物事のはじまりはいつだって突然
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4

 「痛ッ」


 私は、道路と歩道の段差につまづいて足首をひねった。


 幸い、捻挫になるほどの痛みは残らなかったが、心には傷を負った。大勢の人たちに見られながら私は叫んでしまっていたからである。

 スーツを着た男の人やスーパー袋を持ったおばちゃんが私の方を見ていた。

 (スーツの男の人は、私のスカートがめくれることを期待して見ていたのかもしれないが、私はスカートの中に短パンを履いている。)

 最小限のダメージで済んだが、ただ恥ずかしいという気持ちが私の心をえぐった。


 高校の授業が終わって、部活をやっていない私はいつもそのまま家に帰る。たまに、家にそのまま帰るのもつまらないから、駅前の本屋に寄ってファッション雑誌や小説、漫画を眺めに行っている。


 本屋は楽しい。人の目が行きやすい場所に新刊の本が置いてあるが、1年の間でだいぶ流行り廃りがわかるのである。これは、私のように毎週のように本屋に行く人じゃないと気づかないことだろう。


 外人の自伝が流行っていた時期もあったが、今はお金を貯める関連の本が流行っているようだった。


 今日は本屋に行こうと思っていたが、段差でつまづいてしまった。つまづいた影響は時間が経つにつれて無くなっていくかと思ったら、そうでもなく、私の心はどんどん沈んでいった。


 駅前の大きな街頭テレビでニュースが流れていた。


 「ただいま、入ってきたニュースです。今日午前未明にアメリカのサンフランシスコで大規模な山火事が発生しました。サンフランシスコ山火事は今年に入って3回目で、現地の人たちから悲しみの声が聞こえてきています」


 ふと見上げた街頭テレビで、世界で起きた悲しいニュース。私は足をつまづいただけでなんとなく落ち込んでいる。この差はなんだろうか。


 私は、カバンにつけているリスのキーホルダーを見た。去年のなんでもない日に、お母さんが私にくれたものである。お母さんは、よくなんでもない日にブレゼントをくれる。いったいどこで見つけてきたのかよくわからないものをくれるのである。(特に断る理由もないから、私はよく受け取るのだけれど)


 お母さんが笑いながら私にプレゼントをくれる姿を思い出して、少し元気が出てきた気がする。


 私は学生カバンを右手から左手に持ち替えて、本屋を目指して歩き始めた。


 

 いつも行っている駅前の本屋はとっくに過ぎてしまっていたから、別の本屋に行くことにした。町の中心地から少し離れた場所にあるデパートの9階に入っているチェーン店である。


 本屋がデパートの中にある場合、高層階にあるイメージがある。本一冊の重さは大したことはないが、それが何万冊と店頭と店舗倉庫にあるはずなので床が抜けないのが不思議だなと思ったことはあった。


 そんな不吉なことを思い浮かべながらデパートのエスカレーターに乗っていると、目にゴミが入った。私は、目に入ったゴミを取ろうと目をこする。本当は、目の中に手を突っ込んでゴミを取り出せれば良いのだろうけど、流石にそれはできない。本能的に、まぶたが閉じてしまうし。


 目をこすっていると、目的の本屋がある階についた。よく見える場所に最新の映画のポスターが果てあった。


 大男と、男女二人が写っている。ホラー映画だろうか。日本の映画ではなく、海外の映画であるようだった。


 ポスターの貼ってある壁の横を通り過ぎて、私はファッション雑誌のあるコーナーにいった。


 最近驚いたことがある。友達が読んでいたファッション誌が一回りくらい小さくなっていたのだ。これも時代の煽りなのかもしれない。女の子用のファッション雑誌が、そのうち小説サイズになる日もあるのだろうか。


 私はペラペラとファッション雑誌をめくりながら立ち読みをしていた。


 女の子の写真が載っていて、この時期のおすすめコーデのような特集記事はいつもさらっと流し読みしコラム記事の載っているページで私の目は長時間止まるように設計されている。


 恋愛の話とかよくトピックに上がるけど、ダイエットや老後の生活、投資運用に関する話までとにかくジャンルに限りがないのが特徴のコラムである(流石に、投資運用が書いてあった時は驚いた。高校生向けの本を、社会人のおじさんが読んでいるのかと頭の中で考えてしまった)。


「どれどれ...怪奇、街中で突然鳴る公衆電話」


 今回の記事は、怪談のようだ。夏も過ぎて怪談の時期はちょっと過ぎ去っている感もあるが、このコラム記事を書いている人物からすると季節など気にしないのだろう。本当に自由に書かせているのだなと実感させられた。

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