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THE GAME  作者: 井上達也
物事のはじまりはいつだって突然
2/21

2

 カーテンの隙間から光が僕の顔に差し込んできて、目が覚めた。


 目開けて、ベット脇に置いたスマートフォンで時間を確認しようとした。


 スマートフォンの液晶画面にメッセージが表示されていた。


【マウスネットワークにアクセスしてください】


 どうやら、例のアプリから発信されているメッセージらしい。メッセージの横に例のアプリのアイコンが表示されている。


 12時をすぎた辺りから、このメッセージを1時間に1回受信していたらしい。親切なアプリである。目覚まし機能のついたアプリでもこんなに根気よくメッセージはくれない。


 現在時刻は、7時半。メッセージは計7回受信されていた。


 このアプリが親切かどうか以前に、マウスネットワークという単語が僕は気になった。いや、誰でも気になるに違いない。


 単純に訳すと、ネズミ講な気がする。結局これは怪しい勧誘のアプリだったということだろうか。だったら、いろんな意味で安心である。


 なぜなら、いろいろと面倒な手続を踏まないといけないのかもしれないが、お役所に届け出れば捕まえてくれるに違いないからである。なんとなく楽しくなりつつあった状況ではあるが、安全に解決できるのだ。 

 

 しかし、本当にそうだろうか。こんなわかりやすい名前だったら誰でも怪しむ。そもそも参加しないと思われる。現に一人脱落者が昨日出ていたはずだ。よほど何かに困った人だったのだろうか?


 少しだけ怪しんだものの、僕は液晶画面に表示されたメッセージをタップした。


 すぐにアプリが起動したが、見慣れたローマ字と緑色のバーが表示されるわけではなく、マウスネットワークへのアクセス方法が表示されていた。アプリから表示されるということは昨日の時点でアクセスが可能であったということを示すわけだが、僕はこのアクセス方法が表示される画面までの手順は理解できなかった。


【マウスネットワークへは、近所にある緑色の公衆電話からアクセスできます。緑色の公衆電話の前に立てば、スマートフォンが自動で反応してポップアップメッセージが表示されます。ポップアップメッセージをタップすれば自動でマウスネットワークへのアクセスが完了します】


 またしても白い背景に黒い文字が書かれているだけだった。スマートフォンのゲームとかであれば、可愛らしいキャラクターがニコニコしながら説明しそうなものである。


 昨日このアプリがインストールされたのは電話ボックスだった。緑色の公衆電話が音を鳴らしていたから気になって向かったのだけれど、気がついたらインストールされていた上に削除ができない。


 とりあえず、マウスネットワークとやらにアクセスしないといけないらしい。


 僕は今日の予定を確認しようと思ったが、悲しいかなフリーターである。予定など無いに等しい。


 とりあえず、顔を洗って歯を磨いて昨日の電話ボックスに行こうと決めた。




 平日に午前中に若い男が歩いていると、それはそれは不思議なものである。あの人は働いていないのだと言っているようなものである。(実際働いてはいないが……)

 平日が休日の人は大変だなと思った。日本人は、みんな一緒がいい主義の民族、村社会を好む生き物である。


 昨日の道を思い出しながら歩いた。道を思い出しながら歩きつつも、電話ボックスは随分減ったということも思った。僕はギリギリ世代だったから電話ボックスを使ったことがある。しかし、今の若い人たちは使ったことがない人も多いのではないか。小学校の授業とかで習うのだろうか。歴史的な設備として。実際電話ボックス自体は消滅はしていないはずだけれど……


 真面目なことを考えていると、僕は昨日の電話ボックスの前にたどり着いた。昨日は暗くて気がつかなったが、屋根がだいぶ禿げている。元々は赤色のようだが、すっかり茶色になっている。


 僕は電話ボックスの扉を開けて中に入った。するとスマートフォンが、ぶるっと震えた。


【マウスネットワークへのアクセスを開始します。メッセージをタップしてください】


 僕は言われるがままに液晶画面をタップした。


 すると、またしてもアプリが起動した。今度は白い背景ではなく、黒い背景の上に緑色で棒グラフのようなものが、左から小さく右に行くほど大きくなるものが、合計で3本表示された。なんだか、携帯の電波のような表示である。3本目が表示されると画面はローマ字と緑色のバーが表示されているトップ画面に戻った。


 前回とアプリを立ち上げた時と違う点があることに、僕はすぐに気がついた。僕の名前が左側に書いてある0/50が、1/50になっているのである。

 なるほど。この数字の意味は、マウスネットワークにアクセスした回数であるということらしい。

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