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今回裏設定を後書きにしています。

活動報告の「一応新作2019年8月26日」を読んでいる前提で書かれている為、必要ないという方は後書きを読まない事をお勧めします。



 日が昇ってからシェイクの北門を抜け、ゼロに乗ってのんびり走る事30分。ゼロが走っても崩れないような大きな道を通り、大回りして宿屋のオヤジおすすめの酒を土産に湖へと向かう。

 ……土産用のお酒を聞いたら「味も知らないのに土産に使うな!」との至極真っ当な意見に流され、勧められるまま飲んでゼロまで行くのが面倒だった。ルイも客達から可愛がられたうえ、おつまみを貰いご機嫌だったから問題ない! ただ昨日遅くまで起きていたせいか、俺のベットで二度寝を満喫している。


 農業地帯の湖と聞いていたので平地にある物だと思っていたが、山と平地の境目にできたようで、それなりに広く対岸は魚が隠れていそうな地形だった。

 この湖から流れる川の付近に管理人が住んでいると聞いている。この情報を得るために昨日泊まった事はやはり無駄ではなかったのだ……と、いい聞かせる。


『クリス。この湖に何か謂れはありますか?』

「ん? いや、聞いてない。でも、ゼロが聞いてくるって事は何かあるって事?」

『はい。強い魔力を感じます。何かしらあります』

「管理人さんに聞いてみるか? いきなり自体が急変するってことは無いだろう」


 これでもかというフラグを建てたのは、ボッチだった時の癖がまだ残ってるのと、口に出せばそんなに酷い事にならないというジンクスがあるような気がしているからである。


 湖から流れる川を見つけ、近くにあるという管理人の屋敷を探す。

 屋敷は少し高くなる位置に建っており、慣習通りに兵を寝泊まりできるようなっていた。

 屋敷近くまで行くと、釣り具を担いだイヌ科の耳を持った老人がゼロを見ても恐れないで近づいて来た。


「おやおやいらしゃい。随分と大きな物に乗って来たんじゃのー」

「おはようございます。三日ほど時間が空いたんで、ここで野営をと思ってるんです」

「構わんぞい。まぁ、水を汚したら流石に追い出すんじゃが、何ならワシの屋敷でも構わんのだぞ」

「それじゃ、貴方が管理人の?」

「おう。水守のウォルターじゃ。悪事と迷惑さえ行わなければ何をやっても構わんぞ」


 よろしくお願いしますと頭を下げると、ウォルター爺さんは笑いながらとっとと湖の方へ向かって行った。


「あ……。土産渡すの忘れてた」

『特に急ぐ用件もないですし、ご老体と釣りでもしたらどうです? 私はこの湖の伝説などを仕入れてくれる事を期待してますが』

「リールは出来てるんだろうな?」

『三つほど出来ています。それと私の事を話してください。貴方は忘れっぽいのですから……』


 釣りと言えばルアー釣りだったのだが、残念ながらリールが無かった。

 ゼロに当時の事を聞いてみたら、魚は釣るものでなく、育てるものだった為にリールの情報を持っていなかった。

 リールがどんな動きをしているのか知ってはいたが、構造までは知らないクリスはなんちゃってリールの制作を頼んだ。とは言っても構造は単純。本来軸の方向を変えるのに使われる傘歯車の歯の高さを低くし、もはや摩擦で動力を伝えているような状態にしただけだった。

 傘歯車を利用したのは、接地面を大きくして負荷を減らせる為だ。そしてこの傘歯車の加工が俺個人では容易でなく、作るくらいなら網で小魚を沢山獲った方が手間がかからなかった。

 後は、記憶の中のリールの形にするだけで、クリス特製なんちゃってリールが出来上がったのだ。


 外見と役目などをゼロに言っておけば、もっと適正な機構が組まれたのだろうが、どうやれば出来るのかを考えるのが好きだったし、運搬車のように他人に奪われても問題ないだろうとの事でそのままゼロが製作する事になった。

 ロッドは既製品を切り詰めてラインを通す輪っかだけ付けてあるので、かなりバランスが悪いのが不安要素。

 糸の先にキラキラ光る金属片とハリが付いたのと、毛バリのみ。残念ながら中途半端に思い出した程度なので、合っているのかもわからない。本当の事言うと、名称はうる覚え。ルアーは疑似餌の事だと記憶しているけど、リール使わないと別の名前に呼んでいたような気がするけど何だっけ……くらいの知識だ。


 先を行くウォルター爺さんを追いかけるように車内から釣り具を取り出し、桟橋に走った。


「何じゃ、客人も釣りか? ん? 糸巻きがついているようだが、大物もいるから糸は切られるかもしれんぞ」

「強く引っ張られたら、送り出される仕組みになってるんです。もっとも、使うのは初めてなので、切られるかもしれないんですがね」


 リールのハンドルは、蓋と一体型になっていて、投げる時は蓋を緩め本体とハンドルの摩擦を減らし、巻く時は絞めて使う。一応蓋には締めた時に、緩い・普通・きついと三段階の目印がつけているが、あくまで俺の感覚なので、使えるかどうかわからない。

 まずは切られてもいい様に、ラインの先に毛バリを付けた糸を結び、投げたのだが重さが足りず、すぐ近くに落ちた。


 ラインより毛バリの方が空気抵抗が低かったせいか、ラインの先にある毛バリの方が最後に着水したのが物悲しい……。


「ぷがっ……。イヤイヤすまんのー。錘付けんと飛ばんぞ。それに、毛バリなら、渓流の方がおすすめじゃ。この湖で釣るのなら、餌を付けたウキ釣りじゃ」


 本気で恥かしかったので、拗ねた演技をしながら金属片にハリの方を結んで軽く揺らし、重心を確かめて思いっきり投げる。今度はかなり遠くに飛んだ。


「ほー。よく飛ぶのう」


 ウォルター爺さんも感心するくらい勢いでリールからのラインを送り出す事に成功したのは僥倖だった。ただ、さっきの失敗があったので、少しばかり釣りを舐めてた。見よう見まねでやれば上手くいくだろうと思っていた。

 金属片は小魚の疑似餌。湖底に着く前に引き続けなければならない。今更になって、金属片も曲げたりねじったりした方が魚へのアピール力が高かったのかも?と、手元に来たらこっそり修正するつもりだ。


「来た!」


 2・3回投げて、会話を始めようとしたんだが、魚が擦れてないようで、予想より早く、一回目でかかった。


「ぬお! よい引きだ。この引きは……沼田魚か?」

「マジかよ! 罠で獲るもんだろ……が! くっそ、わらちゃうくらいスゲー引きだ。うわー!糸がどんどん出される」

「眉唾物だと思ったが、面白い糸巻きじゃ」


 なんちゃってリールの緩く合わせた歯車が滑り、ガチガチと音が鳴るたび糸が出て行く。

 動作確認で引っ張って音を鳴らしたが、糸の先に魚がいると思うと、この音は癖になる!


「ほれ!糸をたるませるな。切られるぞ」

「これの仕組みわかってんのかよ」

「知らん! 魚が跳ねて緩んだ後によく切られるんじゃ」


 経験則かよと思うが、なんとなくあっているような気がして、理屈を推考するのは後回しにした。


 釣り糸に体をぶつけるような手応えがしてヒヤリとした場面があったり、桟橋近くまで来たら急に暴れたりしたが、何とか釣り上げた。糸が引きちぎられる心配は無かったが、噛み千切られる可能性があったからホッと一息した。

 泥田魚はウツボに似た蛇のような淡水魚。この太い魚体は大人の両手で掴めるくらい太くて、全長1.5mくらいある。分泌液と捌き方さえ間違えなければ泥臭くなく脂も乗ってて旨い。

 雑食で凶暴なので、大人しくなるまで手を出さないか、魔法とかで冷やした方がいいだろう。


「このサイズの泥田魚を釣るとはのー。あの竿のしなり、面白そうじゃ。その糸巻きはどこで売ってたんじゃ?」

「丁度いいや。これを作ったのはあのゼロだ」

『こんにちは、ご老体。一般に遺物と呼ばれている』

「ほ……ほっほほ。これはちと驚いた。さて困った。ワシも糸巻きが欲しいんじゃが何を支払えばよいのか?」

『交渉はクリスにお願いします。それとクリス。粘液のサンプルをお願いします』

「了解っと」


 生きている泥田魚は凶暴で、氷で動きを鈍らせて頭を落すのが定番なのだが、ちょうどよい入れ物を忘れた。色々準備が足りないのだが、ウォルター爺さんが貸してくれた。

 革のバケツに水を汲んで、暴れる泥田魚の頭を山刀の背で殴り気絶させ、ハリを無理矢理外しながらバケツに入れる。刀は作ってもらったが普段使いは山刀の方が重さがあって使いやすい。ちなみに、店でよく売られている諸刃の剣を持たないのは、武器として使う事より刃を食い込ませた後、背を叩いて使う事が多いからだ。

 何はともあれ、暴れる泥田魚を大人しくさせる為にバケツを持って魔法で水を冷やす。


「ほう。触媒無しの無詠唱か」

「ええ、結構器用なんで時間かければ触媒無しで出来るんです。それに筋肉つけにくい体質なので魔法に頼り切りなんですけど、言霊はあまりバラしたくないんです」


 ほとんどの人が焚火に火をつける事なら、少量の触媒ありの魔法で1分前後で出来るが、一般に「魔法が使える」と言えるのは、5秒以内に攻撃に使える魔法を出せる事になる。

 肉眼で見えない魔力をどう扱うかは、魔力をあると仮定して動かしたり変化させたりするのでイメージ重視だが、魔法陣や魔道具などに使われる文字に意味があるように、言霊を使うとイメージだけより制御や威力にプラスされる。

 ついでに言うと俺の言霊は、ゼロに教えてもらった古代の言霊で、今回みたいな冷やしたり凍らせたり単純なヤツだと手の内を見せる事になるので使わないようにしている。


 バケツの中の大半が氷になった頃に車内に入ると、ゼロはサンプル採取のトレーを用意してあった。その他、包丁やタワシにまな板なども持って外に出るが、せめて30分は泥田魚を冷やしておきたいから浅瀬の方で釣りを続けるつもりだ。


沼田魚 8話に話だけ出てきた魚

    ウナギやドジョウのように表皮を粘膜で覆う魚。その分泌液を集め、一部の植物のしぼり汁と煮込み、外壁に塗ると撥水性が高くなる。




裏設定その1

水守が獣人なのは、普通の人より変化に敏感だからです(仕方がないね

自分で書いていて、初めての獣人が可愛い女の子じゃないんだよ!(怒

水守って役目上ベテランにしたかった上に、昔話がしたかったから老人になったんだよ!(血涙





裏設定その2(活動報告を読んだ人向け)

調査を命題にしているゼロが、リールのこと知らないのは変かなーとは思うでしょうが、ゼロが作られた場所は宇宙船。

養殖はしても楽しむための釣りまでのスペースは取れないんじゃないか?と思い廃れた事になっています。

その養殖も水が大量に必要なので、食料というより種の保存。農業は……まだ本文に出ていないので、その時に(泥田魚に田の文字が入っているので米はあります)


クリスはゼロがなまじ高性能だったので、きっとすごい技術力で、養殖やっていたんだろうと思っています。


また、同様に鉱山の需要はあっても、化石燃料の加工は広まってません。

資料はあったのですが、水害により消失しましたし、宇宙船にいた為に技術者はいなく、資料から技術を復活するつもりだったので、化石燃料の優良性より手に入りやすい食料などの魔物素材の利用が急務だったのです。



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