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結局ソルトに着いた日は、オババの家に連行されての食事となった。そこで一年前の件についての話し合いがあり、セール氏に口調などバラされた。
バラされたと言っても、反抗期だとかカッコつけてるだとか、生暖かい目でこき下ろされて、突っ張りきれなかったくらいだ。
その日は別れる歳に、一年前に失った山椒の鉢と実を渡された。
残念ながらゼロが停められる宿は無く、冒険者ギルドの敷地内に停めさせてもらってセール氏と別れて車内に泊まる事にした。
ギルドからは馬車などを使って同じ事をする輩が出るのではないか?と苦情が来たが、ギルドを信用しきっていない事と、馬車の密閉性の問題で泊まる人なんていないだろうと、特別扱いしてもらった。
翌日にトンネルに連れていかれるものだと思っていたが、俺がいない方が偏見も起きないので、行かない方が都合がいいそうだ。特に予定が無かったが、やらなければいけない事は多い。
悩むフリをして、動く運搬車は商人ギルドに売る事にした。売った理由は、効果的に使う方法を商人ギルドが模索しようとしていたからだ。対して冒険者ギルドの遺物研究科は動かす動力の研究で、壊れた方でも十分ヒントになっているのに、回路と認識していないからだ。
食料品や消耗品以外は使うような物がない為、二台売っただけで数年働かなくても平気な金額になる。ただ、ゼロは生物系の素材を調査したいらしく、これからお金の消費が激しくなるかもしれない。鉄板のお金儲け手段が欲しいところだ。
「セール氏は何の取引をメインにやっているんだ?」
「中央都市のフロートで食料を買いつけて、各地の工芸品を買う感じですね。面白いですよ。その土地で収穫された物が荷物の半分。職人が加工した商品を半分持ち帰って、別の土地で紹介する。商品が受け入れられたら、その土地の職人がその土地に合った商品を作る。
たまに職人が理解できない仕掛けがあって、それを聞くのに私の伝手を使うので、誰も邪険にしないんです。ふふふ、世の中持ちつ持たれつです」
「きっかけは高唱なのに、続けられる理由がゲスだな」
「私は縁を繋ぐのが得意なんですよ。今回の縁でトレジャーハンターという珍しい貴方に会えましたしね」
「あっ! 話のついでで悪いんだけど、紹介してほしいの人がいるんだ……」
という訳でやって来ました裏ギルド。とは言っても、裏ギルドがやっているオークション会場。
商人のセール氏に伝手があるのはソルトではオークションくらいだった。
裏ギルドの設立は、社会復帰した犯罪者が集まってできたと言われている。オークション以外だと、防犯に使われるものや、商人・冒険者相手の旅の心得なんかも教えているそうだ。
その中でオークションは盗品……とまでは行かないが、仕入れると悪いうわさが広まりそうな物などを取り扱っている。
「こんにちは。ちょいと聞きたい事があるんだが、ここくらいしか当てが無くてね。答えられなくても知っている人を紹介してほしい」
「相手の迷惑にならなければ……」
オークション会場になる建物の外、建物を守る厳ついおっさんの目の前で子供相手に交渉を……。
一応考えてはいる。中にいるであろう偉い人は無駄な仕事を嫌うかもしれない。おっさんは仕事中だから交渉は無理。誰に聞かれても平気だという事と、これから聞くのが拙い質問だったらおっさんが止める事を祈って子供に聞く事にした。
「実は冒険者ギルドに置いてあるでっかいのの持ち主なんだけど、盗まれないようにする方法とかお守りとか知らないかな?」
「……。こっち」
リオンより小さな子供は、おっさんの顔に視線を向けたが問題なかったようで、隣の建物へと案内してくれた。
入り口で用件を伝えたのか扉が開き、中へと案内される。子供は入らないようだったので、入り口の人に相場を聞き小銭を渡して中に入る事になった。
無駄に長そうな置物のある廊下を進み、奥の方の部屋まで案内されて中に入る。
案内人が部屋に座るひょろりとした目は窪んでいるが鋭い眼光の男に用件を話してくれたようで、長椅子を勧められた。
「話は聞いていたが、アンタがあれの持ち主か」
「ええ。実は一年ほど前にも似たような乗り物乗って来たんですけど、翌日に襲われてしまいましてね。襲われないコツを聞こうかなと」
多少は情報流れているだろうから、言ってもいいのはどんどん流す。何故なら裏ギルドの利益になるようなものが本当にわからないからだ。
商人ギルドは、情報と利用価値を見つけようと頭を使う。冒険者ギルドは、任せても大丈夫という信頼を得ようと動いている。もちろん、それ以外の事にも動いているが、基本はこれを補佐する形になっている望んでいる様子だ。
「ソルトに住むのか?」
「いいや」
「なら無理だな」
「……」
「話は終わったぞ」
それだけかよ! そりゃ、いきなり来て要求ばかりだけどさぁ。
「理由は?」
「土地が変れば人も変わる。それだけだ。普通の金持ちってのは狙われるだろ? 狙われない金持ちがいるとすれば、賢い金持ちだ。だからお前には無理だ」
「俺がその金持ちになる方法は?」
「知ってたら俺がなってる」
話は終わりだ。そんな感じで男は元の作業に戻っていった。案内役も部屋から出るように促すところを見ると、本当に招かれざる客だったようだ。
無言の圧力と共に外へ連れ出された。一応丁寧な対応だったが、叩きだされた気分になった。
あきらかに失敗した。問題はどこで失敗したのかわからない点だ。
ちょっと違うか? 最初は選択肢があって選んだのに……。その後にも無理だと断定された。
言葉だけでないニュアンスで俺に出来ない事だと判断された。
結局、セール氏の仕入れが終わりソルトの街を出発する二日後になっても、間違った箇所すらわからなかった。
わけがわからないよ
でも、裏ギルドは裏ギルドなりに考えています。




