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注意:作中に出てくるナンやクレープは、私が一番イメージしやすい名称でその物ではありません。



 小麦粉などで作った薄いパンを一般にナンと呼んでいるが、前世の知識がこれはチャパティだと否定している。

 名前というのは面白いモノで、認識を勘違いすると似て非なるモノになってしまう。

 今ではナンは、食べ物を包む粉で作った薄い生地全般になっている。

 ちなみに、同じく包むものでも、生地を手で持てないのは全てクレープ扱いで、ナンの一種とされている。


 なんでこんな事思い出したかというと、リオンが運転で疲れるのがわからないという言動から、勉強の話しにオババ繋いで、リオンは計算が苦手という事が判明したからだ。

 リオンは計算の中でソロバンが苦手で五の玉の意味がわからないらしい。計算機はいくつか発掘されているが、再現できていない。


「リオンはどんなお金使ってる?」


 話に聞いていたより道がいいので、ついつい口出ししてしまう。それでも運転中の為、言葉が足りなかったようだ。


「一般に使ってるのは、銅貨・銀貨・金貨だろ? その上もあるけどあんまり見ないし……。それを抜きにして何セル硬貨って考えてくれ」


 この国でのお金の単位はセルになる。単位は国それぞれだが、金・銀・銅それぞれの硬貨に含まれる含有量は同じようになっているので、商人なんかは一般人相手に「この量を銀貨1枚でお求め安くなってます」とかが通じる。

 銅貨は、1セル・5セルが四角く薄い板で、10セル・50セル円の硬貨。

 銀貨は、100セル・500セル

 金貨は 1000セル・5000セル

 金貨1枚と言ったら、最小の1000セルになり、実は5000セルの事だった。という詐欺みたいな事はよくある話だが、あくまで呼び込みに使ってるだけで、購入する前に5000セルと確認して販売を行っている。

 ちなみに子供に一番人気は、一番大きくて厚い50セル銅貨で、磨くと綺麗だ。


「基本、硬貨は1と5後は位が上がるだけ。店も硬貨に合わせて量を決めてる。だから、相手も受け取りやすい量にして、計算自体そんなすることない」


 時たま聞こえる渓流の音に川魚を食べたくなりつつ運転する。

 少しずつ道幅が狭くなり、車体に木の枝がぶつかってくる。ルイは最初怖がっていたが、今は俺の体に登って、枝が近づくと避けるという遊びを始めた。


「それだけわかっていても、ソロバンの練習になるんだけど、硬貨を見ながらお小遣い帳書いてみな。ソロバンの価値がわかるから」


 数字をソロバンの玉に見ようとするから苦手意識が出てしまう。数字を身近なお金に考えて、それをソロバンの玉に変えると受け入れやすい。

 ソロバンの玉がお金に見えてくる頃には、数字からソロバンに変換するのが問題なく出来ているはずだ。単純にソロバンに慣れただけかもしれないが……。

 とりあえず、よく使う物に置き換えて落とし込む事で、認識する手助けになると思う。


「へー。面白い考えじゃないかい。ワシも口で色々教えたんだがね。結局一回の調薬の方がやり方は覚えるもんさね。ただね、作ってばっかりだと今度は広める事が出来なくなる。加減が難しい物じゃ」

「ただの計算ってのは基礎だよ。どう使うかってのは応用だ。例えるなら、薬師なら手を自由に動かすのが基礎で、調薬が応用。生まれつき手が動かないなら薬師になれないだろ?」

「計算間違えないのが絶対条件かい? 随分とレベルが高いねー」


 オババの合いの手によりリオンは半信半疑になったようだが、こっちは運転に集中している時に俺が乗り越えた事をグチグチ言っているだけだ。やろうがやらなかろうが気にしない。どうせ話すなら、俺がもっと運転が楽しくなる話題にしてくれ。運転に慣れてないんだ。終わってからこの方法が良かったって気が付くのはよくある話だ。


「そろそろ道案内をしてくれ。曲道が多くなってきたから先が読めない。本当は隣に乗ってほしいんだが……」

「なんだい? このオババを後ろに追い払おうってのかい? 嫌だよ。後ろに乗ったら衝撃で落っこちまう。年寄りの体力の無さを甘く見るんじゃない」

「威張る事じゃないだろ。という訳だ、リオンよろしく」

「うん」


 木々が深くなって周囲が見難くなってきたが、本格的に道が狭くなり、谷の部分に入ったようだ。頭の中に地図が無いのに運転するプレッシャーがここまでキツイとは思わなかった。普段はゼロに任せているけど、出来る事から手伝おうと思う。


「この先はー……えーと」

「覚えてないのか?」

「うん。分かれ道なんて無いし、道なりだったから、おっきい木があったり、滑って転んだり……」

「おう、むしろそっち。特に滑りやすいって情報があった方がいい。馬とかだったら勝手に遅くなったりするけど、これはないんだ。後は崩れやすいとか教えて」

「うん!」


 話しに聞いていた最大の難所だと思われてた石のトンネルだが、むしろ最大の絶景なのかもしれない。

 せりだした巨大な岩の底を川が長い時間を掛けて抉り取り、その後上からの落石でトンネルになったようで自然の力強さを物語っている。落ちて来た岩の上にも大木が育ち、根が搦め取るように茂ってる様も自然の強さを感じる。

 ただ、この岩のトンネルの高さが高いところで2mほどで、馬なら好んでこんなとこ歩かない。落ちてきた岩の横はトンネルを削った川が流れているので足場はよくない。まさに天然の難所。ただこちらは車高1.5mの屋根なしに幅1.5m。ゆっくりと侵食したトンネルの幅は3mほどあるので余裕だった。


 ハンドル操作が多くなり疲労が自覚できた頃、ようやく村に着いた。

 ソルトの北西第二の村は山に囲まれた小さな盆地に小さな畑が段々とあり、家は申し訳程度にしかない。村の端の低い場所に川が流れており、その川はしっかり補強され、ワサビが茂っていた。


「小僧。こっからわしの仕事じゃ。バカ者はこのまま荷物持ちじゃ」

「疲れてるんだが?」

「このまま家の前に乗っけるだけじゃ。この坂道を薬持って移動したくないんじゃ」


 それくらいなら……という事でリオンの祖父の村長宅へと向かう。村の入り口から行ってしまった方が効率良さそうだが、話を通さないと面倒だし、感染していない人が何人か集まっているそうだ。


 リオンの案内でオババは村長宅へ入っていったが、俺は遠慮した。ここまで来るのに疲れてるのに、年寄りと話して気疲れしたくないからだ。

 玄関前で運搬車の荷台に乗ってルイをいじっていると、家の脇に小さな葉を持った木がいくつもある。近くに寄ってみると、大きな棘もあり葉を一枚毟って匂いを嗅ぐと独特のにおいがする。


「山椒だ。ピリッとしたの食べたくなった」


 今日の昼に食べた味付け肉に山椒の実を振りかけたらどんなに美味しかった事か……。しっかり火を通した肉にパラパラッとかけるもよし、しっとりとした肉料理に下味のアクセントに使ってもよし、魚のあんかけに葉を添えてもいい。

 香りだけで我慢しようとしてたらルイが興味を持ち、持っていた葉の匂いを嗅ごうとして必死になっている。ちょっと悪戯心が出て、葉を潰し食べないように指に挟んで口元に持って行ったら、刺激が強すぎたようで顔を背けて腕を駆けあがってきた。

 その勢い良く動く様子が面白くて笑ったら、潰した指を持って行ったのが悪かったのか俺の態度が悪かったのか、首の後ろの見えない位置に逃げ込んだ。


「ごめんごめんって、ちょっと、背中に入ろうとするな!」

「何やってんのかね? このバカ者共は?」

「きゅ!」

「アンタも同じだよ! 病人が家にいるんだ。静かにしな」


 ルイが珍しく抗議したが、オババには受け入れられないようだった。結局ルイは怖くて首の後ろの毛をつかんで離さなくなり、クリスはオババに怒られながらルイに髪を引っ張られるという二重苦を味わうはめになった。


「すいません。それでどうでした?」

「ああ、虫でアタリだったよ。住人の3分の2が、ここと同じ症状みたいだね。まぁ、5日間は虫下し飲み続けて様子見だね」

「それじゃ、感染源は?」

「水のあるとこならどこにでも住んでいるよ。水源が限られてるから一気に広がったんじゃないのかい」


 異常も陰謀説も無し。……とまでは行かないか。ここの来るまでに何匹か魔物と出会ったが、仮拠点にもいた山を生活圏とする魔物や動物ばかりで特に異常も無かった。ただ、穀物を栽培しないで村が維持できるのだから、それなりに儲けている。引き抜き、壊滅どちらもありそうで疑ったらキリがない。


「ほれバカ者。あんたが運ばないとその分遅くなるんじゃよ」

「リオンは?」

「子供の世話じゃ。虫が住んでいるのは大人だけじゃない。子供もいるんじゃよ。手が足りんから、かかってない子供をまとめて閉じ込めといたんじゃ。日が沈むまでには一通り見て回りたい」


 うへぇ。ゼロに乗ってない野営だったら、寝る場所整える時間だよ。

 口に出したらオババに殴られそうな事を思うのは仕方がないと思います。




今回本文に書いてない裏設定


お金は要所要所で出てくるかもしれませんが、ほとんど出てきません。

設定上、肉が安くて野菜が高いので、日本円にしても意味がないので日本円換算しないです。

ちなみに日本で100g100円の肉が、100g30円相当で売られるくらい肉が安いです。

また、銅より武器に使われる鉄の方が値段は高いが、フライパンや鍋などでそれなりに使われています。





薬味の村より山側にも良い鉱脈は眠っていますが、輸送の問題でソルト付近の鉱山を使った方がいいので鉱山毒などは出てきません。

(馬車が使えないや、クリスが運転に神経を使うくらい道が厳しいので、鉱山としての開発は百年~二百年後の事だろうと、領主は考えている)

現在の薬味村を開拓する前に、その下流にの滝でもしかしたら鉱山毒があるかも?と試験したようです。

水害の多い地上では、ほとんど流れてしまって、放置していれば毒素が流れるような事がない。と設定してます。(リアルでは不安材料がありますが、そういう事にしといてください)

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