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こんなに早く書けたの久々です。
ソルトの街。
遺跡とは呼べないが、鉱山に入る前の場所を整地したが、放棄された場所。という事になってる。
ゼロが体験したのは水害だったようだが、おそらく同じ水害が原因だと思う。となると、放棄するほど長い間水害が起きていたのだろうか? ゼロが本部と言っていたけど、そちらで問題が発生したのだろうか?
この街は製鉄作業が盛んで、木の柱に土壁や石壁ろいった木材を極力使わない家が多く、火災が起きても被害を最小限にしているのを隣に座る門兵のおっちゃんが教えてくれた。
入り口で面倒な事なるだろと思ったが、意外とすんなり進み、住人が怖がらないようにと隣に乗ってギルドまで一緒に進む事になった。
おっちゃんのくせに気配り上手のようだ。ただ、ルイは人の多さに怯えていたのに、隣にいるせいで服の中にまで入って出てくる様子がないのが困った事だ。
「俺もなー、夢見て出てきた口だけど、嫁さん貰っちゃって生活の為に門兵にならないといけなかったからなー。その年でこの発見は運がいいぞー」
「随分と軽いね」
「一応部下が居たからな。お前みたいなのほほんとした奴が危険人物だったら、俺が警戒しても目的達するだろ? だったら少しでも近くにいた方がいい。それにギルドに渡せば俺達のせいだけじゃなくなるんだ」
「門兵があくどいって、どうよ」
言葉だけを切り取れば険悪なんだろうが、おっちゃんも俺も意味もなくワザと小声にしたりと遊んでいる。
こういう遊び心がある門兵がいると嬉しくなる。ただ、普段の仕事ぶりを知らないから大丈夫かな?とも思う。他にも計画が上手くいったなら、この人を騙すような事になるんじゃないかと少しばかりの罪悪感も刺激される。
冒険者ギルドに着き、ギルドの一角にあるトレジャーハンター関係の窓口に門兵のおっちゃんと足を運んだ。おっちゃんと一緒に近づくまで誰もいないし寂れている。
おそらく、元々遺跡に人が集まったが、発掘し終わって鉱山に人をとられたんだろう。
「こんにちは。遺物関係はここで合ってますよね?」
「はい。何か発見したんですか?」
普通の冒険者が多くて手が空いているのが男の人だけだったのだろう。門兵と来たので訝しげながら、聞いてくる。
「馬車みたいな乗り物で、今でも動くのが1台に、動くけど進まないのが1台を北の方から持ってきしました」
「俺も乗ってきた。かなりの重さがあるのを乗せて引っ張ってきたぞ」
「……確認させてください」
今でも動く乗り物の発見で職員は門兵に視線を向けた。おそらく信じられなかったのだろう。少しばかり強張った顔で確認してきた。俺も前世を知らなかったら車両関係がたくさんある事なんて想像できなかった。
三人でギルドの外へ出ると、運搬車の周りには人が集まっているし、少し前の俺達のように乗っている者もいる。
俺達が近づくと、人が離れたのは動かし方がわからないからなんだろう。
運転席のハンドルの中心に手を置き車内に乗り込むと「起動」と周囲に聞こえない程度に呟く。すると、前照灯や操作パネルの一部から光が漏れ、周囲の人から声が上がり、運転準備ができた事がわかる。
ゼロの話しでは、当時の現場の機材は有資格者ばかりで素人が立ち入ることができなく、俺の想像しているような鍵は無くなっているのが主流だそうだ。危険じゃないのか?と聞いたら、人が逃げる為の道具になるだそうだ。
どうやら、ゼロのいた時代では、人が危険にもつながる機材を使用するより、作業現場に人を入れないようにする事を重視し、場合によっては逃げるための手段として放置するのが現場の鉄則らしい。
今回見つけたトンネル内部とまだ未確認の鉱山は、道が悪く車両よりも別の方法で避難した方が早かったのだろう。
時代や情勢が変われば常識も変わるのを体感した。
「ん? 何かやったのか?」
「もちろん。じゃないとこんなとこに置きっぱなしにしないですよ」
「そうですね。こういった遺物には動かす鍵がある程度共通知っていますが何処かにあるそうです。実物を見たのは初めてですが、おそらくそれでしょう。このまま建物の後ろに回ってください。発見した状況など話がしたいです」
このソルトでは鉱物を運ぶ為の馬車や竜車も多く、車輪と人の位置から進行方向がなんとなく予想できたらしく、その方向だけ空いているのに変な笑いが出た。
「それじゃ俺は仕事に戻る。まぁお前さんは大丈夫だとしても、騒ぎを起こすな。起こしそうになったら兵舎に行け。話は通しておく」
門兵のおっちゃんは建物の裏からギルド施設に入る前に別れを言い出した。
確かに丁度良いタイミングなのだろう。街の人の不安を取り除き、俺の安全をも同時に守る。
だからだろうか、自然に頭が下がった。
「ありがとうございました。後で一杯おごります」
「ばーか。そんな事したら始末書だけじゃすまないんだよ」
素直に感謝するのには悪態もついていたので、ついつい悪戯心がうずいて余計な事も言ってしまったが、おっちゃんも笑ってくれた。
ごめんね。計画が上手くいったら、たぶん騙す事になる。