ローズレッド
見渡す限り、全てのモノが赤く燃えあがっていました。どうやら私は選択を失敗してしまったようです。長く伸びた白髪が弟の表情を隠し、人智を超えたものであることを、一層強調しているようでした。
私は弟に手を伸ばしましたが、弟は私に一瞥もくれずに去っていきました。
弟が去っていってから、そう長くない頃。お姉様が私に、弟が各界を荒らしているという話しをしました。のちにわかったことですが、それは突然弟を自由にしてしまった私の責でもあったのです。
巨大な星の丸い形をしていた頃の弟は、宇宙でそれはそれは静かな眠りをしていたとお姉様は語ります。人型を得た彼が最も苦労したこと、それは眠り。
どれだけ眠ろうとしても、微かな生命の音にすら邪魔されてしまっていたそうなのです。そんな音に慣れてきた頃、私が弟に魅了の力を使ってしまい。眠りの際に聞こえてくる音が、私の鼓動の音だけになってしまったのです。そう弟には予期していなかった、微かな音の眠りを知ってしまったのです。
ですから、弟が私の魅力の力から解放された時。真っ先に行ったのは生命達の駆除であったのです。私と時を過ごしていき、人型らしい感情をもった弟ならいざ知れず。魅了の力と共にその感情さえも失ってしまったかのようでした。