アビスティータイム
内在世界の獄界にて。働く黒い犬獣人、アビスラピスです。急を要する仕事があらかた片付き、今現在は休憩タイムにはいっています。仕事中のシャッキっとした私も良いですが。師匠と同じように、お茶の時間でのんびりする私も素敵ですね。
「アビス。紅茶のカップをのぞき込んでどうしたんだぁ?もしかして、紅茶の色にみほれてる?」
「ええ、とても良い赤色ですね。まあ、クトゥクルー師匠が持ってきてくれたものですから。当然だとおもいますよ?」
「なるほどなぁ。おクさんのチョイスか、通りで味も美味しいわけだが……なんか混じってない?」
蛍が首をかしげつつ、私の顔をじっとみてきます。ずっと蛍の目をみていると、補色残像で赤色が浮かんできそうです。
「ええ、そうですね。確かにそんな気がしますが?師匠の考えることなので、何かしらの意図があるはずなのです。ですので、飲んで間違いはないでしょう」
おやおや。ほんの数滴入っているだけなのですが、蛍は鼻が効くようですね?とはいえ。すぐに違うことを考え始めるあたり、彼特有の身軽さが現れているようで面白いです。
「ん〜?それにしても、おれがツッコミ側とは。人生何があるかわからんものだなぁ。あっ、アビス飲み終わったか?」
「はい飲み終わりましたよ」
「なぁ?俺これ美味しいけど苦手だからさぁ。おれの分の残り飲んどいてくれないか。明日には獄界の代表として発表されるし。ってうわー、二十四時まわってるよぉ。もう今日じゃん。俺早めに寝るわ。悪りぃけど、皿洗いも頼んで大丈夫?」
「任せてください!補佐としての仕事は大歓迎ですからね。おやすみなさい蛍」
「おー、ありがとな!おやすみぃ」
手のひらをひらひらとふりながら、蛍が寝室へと帰って行きました。もともと、蛍は水分補給のために起きてきただけですからね。ずっと起きていられる私と彼とでは、若干の生活リズムの違いがあるのです。さて、私も寝るとしましょうか?