アビス
私はアビスラピス。内在世界の獄界にて、蛍と共に働く犬の獣人です。私は内在世界の代表者達から、蛍を補佐するために獄界に呼ばれました。最初の数日、彼は理想的な上司のような方でした。しかし、一週間もするとわかって来る事があります。
「蛍、部屋が散らかっていますよ?」
「あー、すまん。ちょっとしたら片づけるから、まっててくれないか?」
「具体的には?」
「二、三日後だな」
蛍は時間にルーズなようです。しかしながら、本当にその期間の間には部屋を片付けます。私としてはパッと一日で掃除を終える真面目な方か。もっと時間をかけて、私が面倒を見れるような方が良かったのですが。
「それにしてもだなぁ。アビス」
「はい?」
「お前さん、もっと真面目な子だと思ってたんだが。意外に思考が柔軟なやつだよなぁ」
蛍が資料の束を机におき、感心した様子で話しかけてきているようです。ええ、まあそうでしょうね。私が補佐に選ばれた理由でしょうから。
「もっと褒めてくれていいですよ?」
「えらいなぁ。おニイさん心配になっちゃうよ……なでなでして褒めてもいいカナ?」
「それはまだ早いです。ハグならいいですよ?我々獣人の挨拶ですからね」