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夜ツ矢奇譚・夜ツ矢青年視点2
切るキルきる残らず全てを斬り尽くす。
そうして残るのはいつも俺だけ。
一つ二つ三つと切り裂いていく。
目の前にいる異形たちを一つも取り残すことなく、夜がくるまで終わらない。
まるで朝焼けと夕焼けを混ぜたような空だが、この地ではそれが昼間である。もうすぐその昼間は終わり、この世界にも夜がやってくる。この地での出来事はもうすぐ終わる、今夜限りで終わらせる。
飛び散る血飛沫は赤く、己が切り続けているものが人であった証拠を散らす。
「ア゛〜。これでおしまいか?」
最後の一体を切り終えたところで、元村人の大半は消せたはずだ。
俺は大鎌についた血を払うと空中で分散させる。異世界に行ってから身についた能力で、何かと便利なので使い続けている。以前はずっと手元に置いていて、たいそう目立ってめんどくさかった。
少年だった頃の己が数年かけて終わらせたことを、たった一夜で終わらせようとしているのだ。己の成長を感じると共に、一人でいることへの耐性が減ったのだとも思う。