102/163
夜ツ矢奇譚・亜久次少年視点
ボクは思わずカメラのシャッターをきった。
目の前でおきたことを今すぐに誰かに伝えなければ。
だって、見知った人が赤い血を流して倒れているのだから。
「ああ、言われた通りに早く来れれば……」
きた道を引き返しながら倒れていた人、蛍さんの言葉を思い出していた。夜がくる前に来てほしいなるべく早く、最後に伝えておきたいことがある、今夜ここにくる人についてだってさ。
いつも通りに道ゆく村人の手伝いをしていたら、思っていたより長引いてしまったんだよね。普通に考えて、こんな非日常的な出来事が起こるとは考えはしないだろうしさ。
「ああもう!」
ボクは事件現場からある程度離れてから、勢いよく走り出した。