夜ツ矢奇譚・夜ツ矢青年視点
夢の中、だと思いたいのだ。
だけど、目の前の光景は鮮明な映像としてそこにある。
目の前で地にふしている人間だったモノは。別に恨む理由も訳もない、肉親で唯一の家族だったのだから。
縁側の障子の和紙が真っ赤に濡れている。
ああ良かった。この人の血は赤だったんだなァ。
呑気に俺はそんなことを思った。
俺は家を後にしようとしうと、庭へ視線をむける。
一瞬目の前が明るくなり、パシャリとこの場ににつかわしくない音が聞こえた。この場に生きている人間が俺が以外にもいたらしい、そう気づくまでに数秒の時がたった頃には遅く。
「まいったなァ」
俺は庭に出てため息をついた。
どうやら俺は、成長した今の姿のまま過去に戻ってしまったらしい。それもとびきり、最悪のタイミングだ。この誤解?でもないかもしれながこの場面を撮られてしまったのは、後々の行動に響いてくるだろう。
庭の池に映る俺の姿は、小さな頃には着ていなかった。
巫女装束にも似た衣装を返り血で汚していた。
「まあいっかァ。どうせ誰かくるまで時間がかかるんだ。ちっとばかし綺麗にしてからいこうォ……」
俺は親父だったものをがある部屋にひき返す。
そこに死体はなく、無数の蛍が飛んでいた。