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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スライムがあらわれた!

作者: yatacrow

ブラバじゃない人、なんかアクションしてもらえると助かります

 晴れた空、涼しい風、揺らめく草、ぷるっぷるの俺!


 どうやら俺は“スライム”に生まれ変わったみたいだ。


 生まれ変わった……つまり、俺には前世の記憶がある。


 ――俺は日本人だった。


 俺がどうやって死んだのか、どんな風に生きていた奴だった。

 まったくの全然で思い出せない。


 ただまぁ、“スライム転生して、チートで強くなってハーレム築いて、おまけに国まで興しちゃうっていう贅沢てんこ盛りのラノベ”を愛読していたおかげで無事に? 憧れのスライムに転生できたみたいだ。


 えーと、最強ドラゴンの封印されている洞窟はどこかな? 教えて、大賢者ちゃん!!


 …………。


 あれ? 反応なし?


 最強ドラゴンとミートして丸ごとイートしないと最強のスライム伝説が始まらないのだけど?


 あ、まだフラグが立ってないのか。とりあえず洞窟までは自力で行かないとかな。


 うーむ、とにかくテンプレ美少女ちゃんと出会って、きゃっきゃっうふふのラッキースケベなスローライフを過ごしながら性的に丸ごとイートしたいな。


 んで、見渡す限り草むらのこの場所から、洞窟まで移動したいのだが、ナビ系の声さん、いつでも出てきていいからね?


 ――ぐうぅ


 って鳴ってないけど鳴ってる気がするー!

 腹減った、草でも喰うか。


 じわりと溶けてく俺の下にある雑草――まっずぅ!

 土くさっ! 青くさっ! あと至近距離で虫は嫌ァ!


 虫食はまだ未経験なのぉ!! 俺って身体はスライムなのに味覚が前世の俺基準なのかクッソ不味い! 普通はこういうの美味しく感じるんじゃないのかよ!


 ――ガサガサ! ガササッ!


 草が揺れ、


「あ~! ぷるぷるがいる~♪」


 3才くらいのガキが俺に近づいてきた。


 見下ろされてる感じムカつくぜ!


「あいぷるぷるッ! ゆうしゃアレクがやっつけゆ~!」


 はっ! 勇者アレク、ね。

 いやいやその辺に落ちてる枝を自慢気に見せつけられても恐くねぇからね?

 おら、どろっどろに溶かしてやっからかかってこいやぁ!


 ――ツン。


 あふんッ! くそ、変なところ突きやがって! だが全然ダメージないぜ?


 ――ツンツン。


 はっは! 効かねぇ! スライムボディに物理はねぇ!!


「スライムつよい! アレクもほんき出すよ~!!」


 ――ツンツンツンツンツンツン……ズボオッ!!


 んほお! このガキ! 枝突っ込んできやがったよ!


 よろしい戦争じゃ……って中身ぐるぐるかき回すのらめぇ!!

 そんなに激しくされたら、なんか出ちゃう、なんか出ちゃうからぁ!!


 ――コロロンッ!


「やったぁ、まるいの、とったどぉ!」


 ちょっ! それ、俺の大事なモノっぽぉいいいい…………ッ!!


 あ、意識が…………。


◇◇◇


『おお、スライム! 死んでしまうとは情けない……。そなたにもう一度機会を与えよう。再び、このようなことがないようにな。では ゆけ! スライムよ!』


 はへ?


 ここは……草原だな。


 今さっき、悪魔風の仮面を被った男がいたような?


 ゲームでよく見る神官のコスプレしてた。


 なにあれ? こわーって俺、また生き返ったのか?


 どうなってんの? まるでドラゴンなクエストに出てくる勇者に対する言葉だった。スライムだけども。


 ――つーかさっきの死ぬほど痛かったな。身体の中をぐんるぐるにかき回される感じ、端的に言って思い出しゲロりそう。


 って! そうだよ、思い出した! さっきのガキにリベンジしてやる!!


 よし、移動しよう。


 ――ヌタァッ ズルッズルッ ヌタァ……。


 いや、ナメクジよりも遅いんだけど!?


 このスピードをなんとかしないと、リベンジどころじゃない。


 また簡単に大事なモノ――コアを取られそうだ。


 回転は……ダメか。


 もう少し体を丸くしたら? お……出来た。


 前に重心をかけてっと……おっ? うっ、視界が回転すると酔いそう。


 練習あるのみ!


◇◇◇


 どれぐらい練習したか覚えてないが、コロコロと回転移動が出来るようになった。


 ちなみに、俺がいるところは洞窟付近というよりは、村外れの草むらのようだ。


 そして俺を葬った憎き自称勇者は村外れにぽつんとある一軒家にお住まいってとこまで把握した。


 あのガキが出てきたら、問答無用で回転アタックを顔面にお見舞いして、人生の厳しさを教えてやる!!


 さて、玄関についたけど、屋根に登って上から臼ドンしちゃう? さーて、どうしてくれようか――


「じゃ、母さん! 行ってきまーっす!!」


 ――ダダダダダダッ!


「こらァ! アレク!! 家の中は走らないって何度も言ってるでしょ!!」


 奥から母親らしき人の声が聞こえてくる――ん? あのガキ、あんなしっかりしたしゃべり方だったか?


「あはは! ごめんなさーい」


 ――ダダダッタッタッタッ!


 ほら、反省してない。


 振り向いて返事したけど、少し速度を緩めただけじゃねぇか!!


 だいたい、歩くときは前を見ブシッ!


――ブチャ、パキン!


 ひぎゃ、体を潰された! ないはずの骨が折れていく感覚……痛いよぉ――


「母さーん、なんか踏んだぁ! べちょってぇ! うぇ、汚い」


「はいはい、タオル持ってくるからこっちに来ちゃダメよー!」


 薄れゆく意識、人でなしな言葉が辛い。


◇◇◇


『おお、スライム! 死んでしまうとは情けない……。そなたにもう一度機会を与えよう。再び、このようなことがないようにな。では ゆけ! スライムよ!』


 は? また?


 いやいや、めっちゃ痛かったんですけど!


 それにあのガキ、7才くらいに成長してたよ? 視界に入った足のサイズ感からの予想だけどねッ!


 うーん、この世界の人間って成長早いの?


『――おまえのコアの再生に時間がかかってるだけだ』


 ……えっ? さっきの声って悪魔おっさんの声か?


◇◇◇


 ってまた草原。


 くそっ、まあ……まあぁ、いいだろう。


 今度こそ俺の最弱から最強ストーリーが始まるのだ。


 えっ?


 嘘でしょ?


「スライム発見っ!! よいしょっと♪」


 あのガキの面影あるなぁ!! もう再会かよ? 高校生ぐらいかよ?


 ってガキの成長を感じた瞬間に、ガキから振り下ろされた鉄の剣が俺のコアにぶっ刺さって……。


 体中を刃物で引き裂かれる感覚、刃物の鋭い痛み――


◇◇◇


『おお、スライム! 死んでしまうとは情けない……。そなたにもう一度機会を与えよう。再び、このようなことがないようにな。では ゆけ! スライムよ!』


 は?


 え?


 やだよ……。


『くくっ、早く行けよ』


◇◇◇


 ――悪魔おっさんが笑ったらやたら凶悪な笑顔だった件。


 あれ、仮面じゃなくて素顔なの? 怖いわー。


 いやいや、草原だねぇ。


 違う!


 これ違う!!


 こんな最弱のままじゃないだろ? 


 ご都合主義は?


 楽して最強スローライフはどこ行ったぁー!!


 ステータスとか……、おっ! 表示が出来そう! 


 ――ステータスオープン!!


【スライム】(3回目)

 なまえ:????

 レベル:1

  HP:6

  MP:0

 ちから:8

すばやさ:3

 まもり:5

かしこさ:1

  うん:3

 とくぎ:【消化】【回転】


 すげぇ! ほんとにあった、良かった……って良くねぇよ!


 ステータス見れた、でも弱かった。


 これってどうやればレベル上がるんだ?


『――ふぁ~あ……、お前さんが生き物を倒せば一応上がるぜ?』


 この声は――悪魔おっさん!


『悪魔お兄さんだっ! まだ若いっての!!』


 お兄さんだったか……って、俺の思考が読まれてる?


 ふむう、スライムだし、念話みたいなもんか? ね?


『………………』


 あれ? 悪魔お兄さんの反応がなくなった。


 んで敵ってさ、あのガキはもう勝てる気がしない。


「チュチュッ!?」


 大ネズミがあらわれた!


『ハァただの小さい野ネズミだろ。ま、一応、そいつ倒しても経験値は貰えるぞ』


 いやそこはほら、雰囲気じゃん。

 あ、でも、情報ありっす悪魔お兄さん!


 ――スンスン、ヒクヒク。


 よし、近づいて……――今だァ!!


「ヂュッ!? ……ヂュ、ヂュウ…………」


 不味ゥ!! が、ネズミには悪いが俺の最強ライフの礎になってもらおう。


 ……よっしゃ溶かしたぜ、ん? なにこの全能感っ!?


 ――ステータスオープン!


【スライム】(3回目)

 なまえ:????

 レベル: 2

  HP:14

  MP: 0

 ちから:11

すばやさ: 7

 まもり: 8

かしこさ: 1

  うん: 3

 とくぎ:【消化】【回転】


 全能感のわりに強くなってない。

 一応、レベルは上がってるからよしとするか。


 ネズミの特技……ないか。


 ぐぬぬ、地道にやるしかないか……。


◇◇◇


 あれから数ヶ月……ネズミ、なめくじ、小鳥、虫と好き嫌いせずに倒した俺のステータスはこちら。


【スライム】(3回目)

 なまえ:????

 レベル:10

  HP:68

  MP:10

 ちから:32

すばやさ:48

 まもり:25

かしこさ:16

  うん: 5

 とくぎ:【消化】【回転】【硬化】


 …………。

 ちなみに消化ってさ、食った生き物の消化時間が早まるだけなんだわ。


 硬化はきゅっと縮んで硬くなる感じ。


 ネズミの歯ぐらいじゃ傷つけられないぜ! 鉄剣に勝てる自信は全然ないけどな!


 そしてスキル発動中は動けない。

 でも3つ目の技って勇者の呪文アスト○ンっぽくね?


 …………なんてね、レベル10まで頑張って上げたけど心折れそうですわ。


 だって弱いもん。


 きっつ!


 違うんだよなぁ。


 コレじゃ憧れのスライムじゃないんだよなぁ。


『――じゃあ、また死ぬのか?』


 いや死にたくないわ、コアの破壊される瞬間って死ぬほど怖いし、痛いんだって!


 俺の知ってるスライムのイメージでいうと、弱く、寝ない、何でも食べられる――ただし不味いけど!


 この辺りだけは合ってたわ。


 あとはないのよ。


 賢者的なアドバイスくれる人って、悪魔お兄さんくらいだけど全然教えてくれないし、特技も全然覚えないんだよなあ。


『――そりゃ、俺だって忙しいんだ。お前みたいな奴らを復活させて転送するのも疲れるしな。だいたい特技ってのは、素人が訓練に訓練を重ねて得ることができるんだろ? バカじゃね?』


 正論のうえに辛らつぅ!!


 ……そんなん知ってるっての。


 でもさ、ラノベの主人公だったら、チートあるやん? 俺も欲しいよ!!


 【暴食】とかさ、【強欲】とか、大罪系のすっごいの!!


『どこのラノベだ、バカ』


 うわぁ……転生してる時点でしっかりラノベなんすけど……。


 ――ガサッ、ガサガサ!


 むっ! 誰か近づいてる。


 結構、大きな獲物か?


 ヤバっ! 【硬化】!


 ――ガインッ!


「かってぇっ!」


「ははは、()()()にスライムはまだ早かったかな?」


 いってぇ! HP半分は持ってかれたぞ……!!


 あっ! お前はいつぞやのガキんちょ!! ……の息子か!?


 こっちの親父が“アレク”で、このガキは“アレフ”?


 家庭まで持って、ガキ作ってって……ずいぶんおっさんになったじゃねぇか。


 ってしみじみしてる場合かよ!


 どうしよ、これは逃げないと!

 でも【硬化】中で動けないぞ!


 ん? アレクが俺に手のひらを向けて――


「アレフ、いいか? こういう硬いスライムには魔法を使うんだ。見てろ【ファイアーボール】――』


 あっづぅ! 熱いあづいあっづぃい!!


 溶ける……体が溶ける、皮膚がぁ!!


 嫌だ、誰か助けてっ!?


 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ――


◇◇◇


『おお、スライム! 死んでしまうとは情けない……。そなたにもう一度機会を与えよう。再び、このようなことがないようにな。では ゆけ! スライムよ!』


 …………。


 また草原スタートか。


 そうか! 死に戻り系だと、死を積み重ねて行けば経験が増えて徐々に強くなるって奴だよな。


 仕方ないか、少しダルいけど最強への道が見えたわけだしやったるか!!


 ――ステータスオープン!!


【スライム】(4回目)

 なまえ:????

 レベル:1

  HP:6

  MP:0

 ちから:8

すばやさ:3

 まもり:5

かしこさ:1

  うん:3

 とくぎ:【消化】【回転】


 あっるれえぇ~?


 待って! 特技の【硬化】がないよッ!


 おーい、悪魔お兄さーん! 俺の【硬化】忘れてませんかぁ?


『――は? 忘れてねぇよ。基本的にオールリセットだからな、まあ【回転】だけはモノにしてんじゃねぇか、良かったな』


 …………こいつマジか?

 硬化のコツは覚えているけど、あれ覚えるのって結構大変だったんだぞ?


 それにさ、俺がレベル10になるのにどんだけの時間をかけたと思ってるの?


 ふざけんなぁ! やってらんねぇよ!!


『――いちいちうっせぇな、死ぬたびに強くなるとかどこの戦闘民族だよ』


 ええっ! だけど、それじゃ、俺は強くなれないまま、人間のガキに怯えながらひっそりと生きないといけないんだけどっ!?


 チートくれよ! やだよ、こんなん。


 もう……こんなんなら……。


『――()()死ぬのか?』


 っ!


 でもさ、どうせ死ぬほど辛い思いして死んでも、またレベル1からスライムなんだろ?


『そうだな、ああ、あと16回死ねば、20回目からはオレンジ色のスライムを選べるぞ』


 …………それって強いのか?


『――強さはスライムに毛が生えた程度だ』


 それではあんまり変わらない、むしろ草原にオレンジ色は悪目立ちな分だけマイナスな気がする。


 あ、そうだ、人間には生まれ変われないのかっ!?


『――人間になりたい……だと? ハッ! お前が? その言葉よく言えたもんだな。そうだなぁ、9万9996回は最低でも死ね。ただし、毎日しっかり生きあがいて、それでも死んだ場合にしかカウントはされない。つまり、自殺はノーカウントだ』


 自殺がノーカウントって、例えばアレフたちに殺されに行くのもダメなのか?


『――お前がこの事実を知ってしまった以上、それは、()()()だから自殺になるな』


 ええぇぇー! それ聞きたくなかったわー!!


 えーとじゃあ、事故か寿命まで自分の意思では死ねない? でも、頑張ったって俺は弱いからあっさり殺されてしまう。


 スライムとして生きるのなら、森に隠れたり、その辺の岩の下に虫みたいに潜り込むしかないってのか。


 なぁ、スライムの寿命ってどれぐらいあるんだよ!


『――聞きたいか? 平均寿命は300年ってところだな。良かったな、長生きだぞぉ』


 なっがぁい!! 最弱のスライムで300年も? 魔女じゃなくて!? 知りたくなかったぁ。


 何かの事故で死ねたとしても、まだ10万に近い回数の生死を繰り返さないといけないのかよ!?


 こんなもん苦行もいいところだ。


 なあ、それなら俺の人間だった頃の記憶を消してくれよ!!


『――くくっ、残念だがそれは出来ねぇな』


 悪魔お兄さんの意地悪な笑顔が見えた気がした――


 そんな……! 俺が何をしたって言うんだっ!!


『――えっ? いい加減()()も思い出せよ、お前さぁ、自殺したんだよ。「ボクはスライムなりたーい」って、電車が通るタイミングで踏切から飛び込んだろ?』


 ぐぁっ!


 ぐうぅ、頭いてぇ! ずきずきする!!


 ――カンカンカンカンカン……。


 駅のホーム、頭に響く踏切の音。

 徐行しながら駅に入ってくる電車――


 この光景……俺の人間のときの。

 何かになれる期待が高まる、白線を越えて――


「おい! 下がれ!」


「うっうるさい! ぼ、ボクはスライムになって、最強になるんだぁー!」


 迫りくる電車、俺を止める声に何事かとこちらに視線を送る有象無象たちを尻目に俺は踏切にダイブ……。


「いやあああああぁぁ!!」


 ――パーン! ブシャアッ!!


「うえぇ! ひぃ、ひいいいい!!」


「きゃああああッ!」


「おえええ!」


 全身がばらばらになっても残り続ける血と肉の痛み、だんだん遠くなっていく悲鳴……。


 ――そうか、俺って電車に飛び込んで死んだんだ。

 話し方がヲタクっぽいの、今さらながらメンタル来るな。


『――やっと思い出したか? お前はさぁ、誰かに虐められた事もないし、両親にも愛されて、裕福ではないが貧乏でもない生活を送ってたよな? それなりに恵まれた人生だったろ?』


 そうだ、いわゆる一般家庭。

 学校でも平穏に卒業して、一般企業に就職できて。


『――なぁ、お前を轢いた運転手の気持ちがわかるか? お前が目の前でミンチになっていくのを目に焼き付けさせられた周囲の人たちの気持ち、それに自殺者を出した遺族の気持ち、さらにのしかかる多額の損害賠償――――』


 わかるかっ! そんなの知るかよっ!!


 俺は生きるのが面倒くさくなったんだよ。


 このままだらだら生きるくらいなら、電車に轢かれて転生できれば儲けもんだってさあああぁぁぁ!!


『――おめでとう、儲かったな』


 へ? マジか……これが?


『――お前にとってはそれこそ知ったこっちゃねぇんだけどさ。お前らみたいに自殺が起きるとな? “魂の循環システム”がエラーを起こすんだわ』


 魂の循環……? エラー?


『ほら、日本って自殺者が多いだろ? 最近、特にシステムエラーが頻発しすぎてなぁ? 頭のおめでたい天部の奴らでさえ自殺したいと思えるほど、ブラックな環境になってて大変なんだってよ』


 俺がブラック環境を作り出した原因だと?


『――そうだな。ああ、もちろんお前だけじゃねぇよ? お前がこの世界で経験値にしてきた奴らも、お前と似たような動機で自殺した奴らだな。お前らはシステムエラーの元凶なんだ、だから魂にデスペナルティが付与されているってわけだ』


 詳しい内容は理解できなかったが、天寿を全うする事で、魂循環システムとやらのエラーは修復されていくらしい。


 自殺者(ウイルス)は、転生者(ワクチン)としてシステムの修復のために、世界に貢献させられる。


 ――もしかして、こういうの地獄って言わないか?


 この世界は、科学の代わりに魔法が発展している世界で、文化レベルはかなり低く娯楽もないらしい。


 死ぬときの感覚だけは、ご丁寧に人間の頃の感覚なんだっさ――


 どれぐらい放心してたんだろ……。


 気がついたらがっしりとした体格の爺さんと、アレクにそっくりなガキが目の前に立っていた。


「じいたん、ぷるぷるがいるー♪」


「あーこの辺はな。スライムがよく出るんだよ、俺もお前くらいの頃はこうやって落ちてる枝を突っ込んでコアを取り出してたなぁ」


 優しい表情で、ガキの頭を撫でながら拾った枝で俺の体にずぼり――


 ああ、そうか、また俺の命は奪われるのか。


 体をかき混ぜられる不快な感覚、説明できない死の恐怖、絶望が襲い、そして死ぬほど痛い……。


◇◇◇


『おお、スライム! 死んでしまうとは情けない……。そなたにもう一度機会を与えよう。再び、このようなことがないようにな。では ゆけ! スライムよ!』


 ――ははっ、ですよね。


 ――完――

ここまでお読みいただきありがとうございました。


現在『デンパがとぶ』を連載中です。


こちらはギャグ多めでお送りしておりますので、良かったら読んでみてください。



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