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4話・世間の反応

 

 スキルの実験を終えた俺は、再び自室に戻る。

 ダンジョンが発生して既に一日経った。

 世間や政府の反応を知りたいと思い、ネットを開く。

 数十分間、SNSなどを流し見する。


 ふむ。

 どうやら世間はそこまで深刻に考えていないようだ。

 昨日の夜くらいまでは、一般の人々もダンジョンに興味を抱いていたようだが、一日も経つと皆、いつも通りに学校や会社に行き生活していると分かる。


 日本人の悪い癖だろうか。

 自分の身に起きないと、他人事のように考える。

 確かにダンジョン発生は異常事態だ。

 しかし、日夜嵐のように新たな情報が飛び交う現代社会に慣れ切った人々にとっては、いつもの生活を投げ出す程の事件では無いと捉えたらしい。


 あとは単純に、政府が情報統制を行なっている。

 ダンジョンに関する報道が明らかに減っていた。

 ネットも政府が監視しているのか、掲示板サイトでは所々不自然に情報が切り取られている。


 国家権力が本気を出したようだ。

 きっと公式発表されてない事もあるのだろう。

 これからはネットでも不用意にダンジョン関連の話題を出すのはやめよう、特定されかねない。


 そうなると、政府はどこまで情報を掴んでいるのか。

 公式発表されている情報を見ていく。

 日本で確認されたダンジョンの数は六つ。

 北海道、秋田、千葉、埼玉、大阪、熊本。

 以上の都道府県に一つずつ発生した。


 絶妙に主要都市から離れている。

 もし東京にダンジョンが発生していたら、最悪日本の国家機能が低下或いは停止していたかもしれない。

 逆に東京さえあれば、日本は平時のように動く。

 歪な形だが、これもある種の戦略か。


 とは言えその所為で国民の意識が削がれている。

 ダンジョンが発生した地域に住む人々は、避難指示が出されていたりと非日常を体験しているが、そうでない人達はネットやテレビでその様子を見てるだけ。

 同じ国に住んでるのに、こうも反応が違う。


 閑話休題。


 六つのダンジョンは全て封鎖されている。

 周辺地域も検問が敷かれているようだ。

 関係者でなければ近付く事も出来ない。

 だけどまあ、きっと抜け道があるんだろう。

 もしくはその関係者が、裏で手引きしているか。


 どちらにせよ、ダンジョンに潜っている一般人は居る。

 そしてモンスターに殺された人達も。

 どうやら侵入する事に成功はしたが、モンスターに襲われ逃げて来た者達が居たとか。

 五人で入ったのに、帰って来た時は一人だけ。

 ホラーゲームのようで恐ろしい。


 その件もあり封鎖も強化されている。

 潜り込むのは難しそうだ。

 一部の世論ではダンジョンを一般開放するべきと言われているが、流石にまだ早すぎるだろう。


 だが、いつかはされる。

 俺はそう確信していた。

 それだけダンジョンから得られる恩賜は大きい。

 例えば昨日俺が手に入れた紫色の宝石と小石。


 あれには凄いエネルギーが眠っているとか。

 解明出来ればエネルギー事情がひっくり返るらしい。

 沢山の学者達が研究に使いたいと国に言っている。


 俺としては、ダンジョンが一般開放される前にある程度の強さを手に入れておきたい。

 狩場の争いとか起きそうだし。

 まあ、俺は地下室のダンジョン––––プライベートダンジョンの攻略が目先の課題だけど。

 チャンスがあれば、他のダンジョンにも潜りたい。


 ––––そういえば。

 スキルやステータスについてだが、予想通り、個人差があると既に判明している。


 レベルが上がるタイミングでどの項目の数値が上がるのかは完全ランダム……では無く、何らかの条件、例えば沢山走ったりしてると体力と敏捷が、重い物を持ったりしてると筋力が––––つまり、鍛えた箇所がレベルアップの時に数値として現れるという事だ。


 昨日、俺は魔力を殆ど使っていなかった。

 だから魔力の数値が10で止まったのだろう。


 スキルに関しては才能のようなものだ。

 特定の行動をとると発生するスキルもあるが、基本的に使えるスキルは最初から開放されているようだ。

 つまり、俺が魔法を覚える可能性はかなり低い。


 はは……投擲スキルにしてよかった……

 魔法、使いたかったなあ。

 だって浪漫があるじゃないか。

 ダンジョン攻略に身を乗り出した理由の一つも、格好良く魔法を使いたいという願望だ。


 まあ、可能性はゼロじゃない。

 限りなくゼロに近いってだけだ!


 ……さて、そろそろ攻略に行くか。

 必要な物を集める。

 腰に剣を吊るし、俺はダンジョンへと向かって行く。

 気分は既に冒険者だった。



 ◆



 片手剣を持ちながら通路を歩く。

 途中、隙を見て壁に傷を付ける。

 迷った時の目印だ。

 段々分かれ道が増えてきている。


 モンスターとも何度か遭遇した。

 骸骨とウッドデビル、そしてスライムだ。

 スライムは想像の通りゲル状のモンスター。

 地味に倒すのに苦労した。

 液体だからどんなに斬っても意味が無い。


 しかし、スライム側も攻撃手段が乏しいようで、弱々しい体当たりを数回してくるだけ。

 最終的にスライムの体には透明な核があると分かり、その核を壊したらあっさりと倒せた。

 弱点さえ分かれば雑魚中の雑魚モンスターである。


 因みスライムからはアイテムドロップは無かった。

 骨折り損のくたびれ儲けだ。


「……ん?」


 物音に反応して立ち止まる。

 この音は……歩く骸骨だ。

 それも複数匹居るな。

 複数匹同時に現れるのは初めてだ。

 骸骨そのものは楽に倒せる。

 だが俺には多対一の経験は無い。


 僅かな不安が脳裏を支配する。

 隠れようにも、直線通路だから隠れる場所が無い。

 逃げるなら引き返す他にない。


 どうする、引き返すか––––?


 いや、ここは前進だ。

 一々逃げていたらいつまでも先に進めない。

 今なら勝算もある。

 俺は集めておいた尖った小石を鞄から取り出す。

 勿論ダンジョン内で手に入れた。


 この小石を投げて先制攻撃を仕掛ける。

 骸骨達が近付いて来るまでに投げまくって、出来る限り総数を減らし、トドメは剣で––––というプラン。

 悪くは無い作戦だと思う。


 俺は小石を手のひらで握る。

 骸骨達が目視出来る範囲に来るまで、待つ。

 こういう時にスキル・鷹の目があれば便利だな。


 ––––きた!


「っ!」


 骸骨達の数は四匹だった。

 まずは一発投げる。

 中央の骸骨の頭部に激突した。

 立て続けに小石を投げる。


 骸骨達も俺に気づき駆け寄って来るが、その時には既に一匹の骸骨の頭部を完全に破壊し終えていた。

 このまま全員倒す……と思っていたが、骸骨達の足が昨夜よりも早く、もう50メートルも無い。

 レベルの高い個体か。


 直ぐさまプランを変更する。

 頭部を狙うのをやめ、足に。

 素早く小石を足目掛けて投げ込む。

 結果、二匹の骸骨は転んだ。


 今が好機だ!

 俺は腰に吊るした片手剣を抜く。

 空いた左手で適当に小石を投げ牽制する。

 骸骨に向かって突進し、すれ違う直前––––骸骨の攻撃を紙一重で避け、カウンターの要領で首を斬った。


 骸骨の弱点は首と頭だ。

 そこさえ破壊すれば、あとは勝手に自壊する。

 スライムの核に相当する部位なのだろう。


 二匹目を倒し、残る骸骨達の元へ。

 とは言え既に足を潰した骸骨だ。

 危なげなく頭を破壊し、倒す。

 瞬間、ドクンと心臓が一際高鳴る。

 レベルアップの影響だ。

 俺はまた、強くなれた。


「ふー……投擲スキルを取っておいてよかったな」


 骸骨達のドロップアイテムを拾いながら言う。

 今回手に入れたのは紫色の宝石一個と小石三つ––––面倒なので、これから魔石と名称を統一する。

 あとは髑髏マークが彫られた金属製の板だ。

 遊○王カードと同程度の大きさである。


 これ、何に使うんだろ?

 魔石に関しては使い道が現れそうだが。

 とりあえず鞄にしまっておく。


 今日はこのくらいにしておくか。

 最後にステータスを確認しよう。



 [ササキソウジ]

 Lv7

 HP 108/108

 MP 60/60

 体力 12

 筋力 14

 耐久 12

 敏捷 14

 魔力 10

 技能 【片手剣術】【投擲】【】

 SP 5

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